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営業3.5万人に伴走AI、100人の試用から段階拡大で全国稼働|第一生命の事例

公開 2026-10-14 / 約11分

伴走支援型AI「デジタルバディ」が2026年4月末に本稼働した営業担当者(生涯設計デザイナー)の規模・約3万5,000人(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日。パイロットは100名規模から段階的に拡大)

約3.5万人

出典:ベンダー事例(2026-08-28時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
金融(生命保険)
AI化した領域
営業活動の支援(次回提案のヒント)/面談記録・議事録の自動作成/手紙・メールの文案作成/社内規程・マニュアルの照会
出典の種別
自社発表/報道/ベンダー事例

生命保険の対面営業は、人の信頼関係がすべての仕事です。第一生命はその現場に、約3万5,000人規模でAIの「相棒」を配りました。2026年4月末に本稼働した伴走支援型AI「デジタルバディ」は、お客さまの同意のもとで面談を録音・文字起こしして議事録をつくり、社内規程を自然な言葉で調べ、過去のやりとりから次の提案のヒントを出し、手紙やメールの文案まで書きます。しかもこの規模にたどり着くまで、パイロットは100名規模から150〜300名、1,400名へと段階的に広げ、評判の悪かった機能は思い切って切り捨てたと同社は説明しています。出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • 2026年4月末、約3万5,000人の営業担当者(生涯設計デザイナー)向けに伴走支援型AI「デジタルバディ」が本稼働(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日)。同社は「2026年4月より本格導入」「9月以降も継続的な機能強化を予定」と発表(自社発表・同日)
  • 機能は4つ。照会・情報確認/提案活動の支援(次回面談のヒント)/面談内容の録音・文字起こし・要約/手紙・メールの文案作成(自社発表・2026年8月28日)
  • パイロットは最初100名規模→2025年に150〜300名規模→2026年3月の本稼働直前のモデル稼働で1,400名規模と段階的に拡大し、評判が悪かった機能は切り捨てた(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日)
  • 事例ページは、面談後の上司への報告準備について「15分〜1時間」、手紙・メールの作成に費やされていた時間について「約30分」という時間を挙げ、いずれも「大幅短縮」としている(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日。測定方法は非開示)
  • AIが作った文面を、人を介さずにお客さまへ直接送ることはしない方針を徹底(同上。自社発表も「生涯設計デザイナーが内容を確認したうえで使用」と明記)

どんな会社か

第一生命保険は1902年創業の大手生命保険会社です。この事例で効いてくる規模は、全国に約3万5,000人の営業担当者(同社の呼称は「生涯設計デザイナー」)を抱える対面営業の会社だという点です(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日)。

生涯設計デザイナーは提案時だけでなく、お悔やみやお見舞いなど、お客さまの人生のさまざまな場面で手紙やメールを送ります。事例ページによれば、LINEも含めて年間1,000通以上のメッセージを送ることは珍しくないといいます。デジタルバディは、同社が中期経営計画の柱の1つとして進める「ビジネスモデル変革」の中核の取組みに位置づけられています(自社発表・2026年8月28日)。

何が課題だったのか

同社DX推進部の部長は、お客さまとの長期にわたる寄り添いの裏に膨大な事務処理があり、その負担を軽減したかったと振り返っています。加えて、事務処理の得意不得意は人による差が大きいため、AIやデジタルで均質化し、組織全体を底上げすることも目指したと語っています(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日)。

現場の声も具体的です。事例ページに登場する営業担当者は、立ち話の面談ではメモが取りにくいこと、帰社後に上司へ報告する準備に手間がかかること、お客さまへの手紙やメールを何度も書き直し、1通に30分以上かけることもあったことを挙げています。分からないことがあっても、詳しい人が外出していれば帰社まで待つ必要がありました(同上)。

何をAI化したのか

自社発表に書かれた4つの機能と、事例ページで語られた現場での使われ方を並べるとこうなります。

機能AIがすること現場での変化(事例ページの説明)
照会・情報確認社内の規程やマニュアルをもとに、回答と参考資料を提示上司や先輩に聞いていたことをAIに聞ける。詳しい人の帰社を待たずにすぐ調べられる
提案活動の支援面談内容などを踏まえ、次回の面談や提案に向けた情報やヒントを提示過去のやりとりをもとに次の面談や提案に役立つアドバイスを出す
面談内容の記録・要約お客さまの同意を得たうえで、面談を録音・文字起こし・要約メモに追われず対話に集中できる。議事録が自動でできて上司に共有しやすくなり、事実にもとづく指導を受けやすくなった
文案の作成手紙やメールなどの文案を作成(使う前に生涯設計デザイナーが内容を確認)何度も書き直していた手紙・メールの時間が必要なくなった

出典:第一生命 自社発表(2026年8月28日)、日本マイクロソフト導入事例(同日)

裏側では、お客さまとの接点や契約内容を一元管理する顧客情報基盤「統合CRM」とあわせて使い、ライフステージや意向に応じた案内や、相談後の継続的なフォローを支える設計です(自社発表)。開発は日本マイクロソフトのAI・クラウド技術を使い、グループのIT会社である第一ライフテクノクロスと、エクサが共同で手がけました。エクサは、CRM・生成AI・営業担当者が使う画面という性質の異なる要素を1つのアプリとして動かす設計を担ったと発表しています(2026年9月17日)。

なぜここまでできたのか

第一生命「デジタルバディ」の段階拡大。パイロットは最初100名規模、2025年に150〜300名規模、2026年3月の本稼働直前のモデル稼働で1,400名規模、2026年4月末に約3万5,000人規模で本稼働
第一生命「デジタルバディ」の段階拡大。パイロットは最初100名規模、2025年に150〜300名規模、2026年3月の本稼働直前のモデル稼働で1,400名規模、2026年4月末に約3万5,000人規模で本稼働

この事例でいちばん参考になるのは、「一度でも使えないと思われたら終わり」という前提で、現場と一緒に機能を削りながら広げたことです。同社の常務執行役員は、「一度でも『使えない』と判断されると、その後、永久に使ってもらえなくなる」ため、評判が悪かった機能は思い切って切り捨て、現場と試行錯誤を繰り返したと語っています。構想を確かめるPoC(概念実証)のあとに、営業担当者自身が参加するPoB(ビジネス実証)を段階的に重ね、100名規模→150〜300名→1,400名→約3万5,000人と対象を広げました(日本マイクロソフト導入事例・2026年8月28日)。最初から完成形を作り込まず、使ってもらって直す順番です。

2つめは、AIと人の役割分担を最初に決めたことです。スピードと正確さが要る自動化はデジタルバディに任せ、お客さまとの対話を通じた信頼づくりは生涯設計デザイナーが担う。AIが作った文面を人を介さず直接お客さまへ送るアプローチもあり得るが、第一生命はそれをしない方針を「徹底して守っている」と同社のDX推進部長は説明しています(同上)。AIの出力の妥当性を別のAIでチェックし、もっともらしい誤情報(ハルシネーション)を防ぐ仕組みも入れています。「AIは相棒であって主役ではない」と線を引いたことが、対面営業の現場に受け入れられた理由の1つと読めます(因果は推測です)。

3つめは、土台が先にあったことです。同社は2019年からクラウドとオンプレミスをつなぐ社内基盤「ホームクラウド」を運用しており、その上に載せることで安全性と、数万人規模でも止まらない拡張性を確保したと説明しています。生成AIの変化に備えて、部品を差し替えられる構成にしている点も事例ページで触れられています(同上)。

中小企業が真似できる3点

① 全員に配る前に、少人数で「使ってもらって削る」期間をつくる。 第一生命は100名規模から始め、評判の悪い機能を切り捨ててから広げました。中小企業なら、営業2〜3人に2週間使ってもらい、使われなかった機能を外してから全員に渡すだけでも同じ考え方になります。

② 面談の「後」の仕事から任せる。 同社が現場の効果として語ったのは、議事録づくり、上司への報告準備、お客さまへの手紙・メールでした。商談そのものではなく、面談のあとに必ず発生する「書く」仕事は、どの営業組織にもあり、AIに任せやすい部分です。

③ 「AIの文面はそのまま送らない」を最初のルールにする。 第一生命は、AIの下書きを必ず担当者が確認してから使う運用を徹底しています。ルールを先に決めておけば、お客さまに失礼な文面が出るリスクを抑えながら、現場も安心して使い始められます。

面談後の記録や報告、お客さまへの文面のうち、どこからAIに任せるかは会社ごとに答えが違います。私たちAIリモートワーカーも、営業・マーケの現場でこの設計を一緒に進めています。

ai-remote-worker.com AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援 営業・マーケティングのAI化を、月額定額または成果確認後払いで。実装まで踏み込む伴走型の支援です。

注意して読むべき点

  • 「約3万5,000人」は日本マイクロソフトの導入事例とエクサの発表(いずれも開発に関わった会社の発表)にもとづく人数です。第一生命の自社発表(2026年8月28日)は「全国の生涯設計デザイナーに導入」と書いており、人数は記載していません。また、全員が日常的に使っているか(利用率)は公表されていません
  • 「15分〜1時間」「約30分」は、日本マイクロソフトの事例ページが挙げた時間で、いずれも「大幅短縮」と表現されています。短縮前の所要時間なのか短縮できた時間なのか、何人を対象にどう測ったのかは示されていません。手紙1通に30分以上かかっていたという話は、1人の営業担当者の体験談です
  • 本稼働は2026年4月末で、同社の役員も「まだ本稼働を始めたばかり」と述べています。営業成績(契約件数・保険料収入など)への影響や、全社での削減時間の合計は、本記事執筆時点(2026年10月)で公表を確認できていません
  • 機能の説明と効果の多くは、開発に関わった日本マイクロソフト・エクサの発表と、それを整理した報道(@IT・2026年10月5日)にもとづきます。第三者による効果検証は確認できていません

よくある質問

Q. 第一生命はAIで営業担当者の仕事を置き換えたのですか?

置き換えではありません。同社は、スピードと正確さが要る記録や文案づくりはAIに任せ、お客さまとの対話を通じた信頼づくりは生涯設計デザイナーが担うと役割を分けています。AIが作った文面を人を介さずお客さまに送ることもしない方針です。自社発表も、目的を「お客さまとの対話により多くの時間を充てる」ことだと説明しています。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

少人数で試して、使われない機能を削ってから広げることです。第一生命は100名規模のパイロットから始め、評判の悪い機能は切り捨てながら1,400名、約3万5,000人へと広げました。中小企業なら、営業数名に面談後の議事録やお礼メールの下書きを任せてみて、使われた使い方だけを全員に広げるのが現実的な始め方です。

Q. 「15分〜1時間」「約30分」という数字はどこまで信用できますか?

日本マイクロソフトの導入事例ページが挙げた時間で、開発に関わった会社の発表です。短縮前の時間か短縮できた時間かの定義や、測定の方法・対象は示されていません。「面談後の報告や手紙づくりにこのくらいの時間がかかっていた業務で、大幅な短縮が語られている」という水準で読むのが妥当です。自社の見込みを立てるなら、自社で導入前後の時間を測るほうが確実です。

Q. 現場で使われるAIにするために、何を工夫したのですか?

出典から読み取れるのは3つです。営業担当者が参加する実証(PoB)を段階的に重ねて現場の声で直したこと、評判の悪い機能は思い切って切り捨てたこと、AIの出力を別のAIでチェックして誤情報を防いだことです。同社の役員は「一度でも『使えない』と判断されると、その後、永久に使ってもらえなくなる」と語っています。

Q. 同じ生命保険の対面営業でAIを入れた例はほかにありますか?

明治安田生命が、約3.6万人を超える営業職員のスマートフォンに「デジタル秘書 MYパレット」を導入しています。訪問準備や報告、お礼文の作成を支える点が共通しています。詳しくは明治安田生命の事例にまとめています。

出典

出典と、その読み方

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