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AI回答の有用率46%→85%、オペレーターの生産性は約2倍に|三井住友カードの事例

公開 2026-10-08 / 約10分

コンタクトセンターのメール回答業務におけるオペレーターの生産性(生成AI利用開始前との比較・月間回答数から算出/2025年6月にELYZAが公表)

約2倍

出典:ベンダー事例(2025-06-19時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
クレジットカード・決済
AI化した領域
カスタマーサポート/コンタクトセンター/社内ナレッジ検索/審査業務
出典の種別
自社発表/報道/ベンダー事例

クレジットカードのコンタクトセンターでは、生成AIの活用がここまで進んでいます。月間約50万件を超える問い合わせを受ける三井住友カードは、2024年6月末、メールで届いた問い合わせへの回答の草案を生成AIが自動で作る仕組みを本番導入しました。使い始めた直後の2024年7月、オペレーターが「使える」と判定したAIの回答は46%。そこから現場の評価を集めて直し続け、2025年3月には85%まで引き上げ、オペレーターの生産性は生成AI利用開始前の約2倍になったと公表されています。2025年12月には電話を受けるAIオペレーターも稼働し、2028年度末には問い合わせの過半をAIが担うことを目標に掲げています。目標値と実績を分けて、出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • 2024年6月末、コンタクトセンターのメール回答業務で、社内データを検索して回答の草案を自動生成する生成AI(ELYZA提供・RAG技術)の本番利用を開始
  • 「そのまま使える」「多少の推敲で使える」とオペレーターが判定した回答の割合は、2024年7月の46%→2025年3月の85%へ上昇(ELYZAの公表)
  • 回答作成の所要時間が縮み、オペレーターの生産性は利用開始前の約2倍に(月間回答数から算出・ELYZAの公表)。これを受けて2024年12月からチャット回答業務にも拡大
  • 2025年12月3日、電話の問い合わせに音声で応対するAIオペレーターの提供を開始。2028年度末に問い合わせの過半をAIオペレーターが対応することを目指す(目標)
  • 顧客接点の外でも、2026年3月下旬から入会審査の自動判定AIを運用し、担当者が行っていた審査の20%を自動化(自社発表)

どんな会社か

三井住友カードは、SMBCグループのクレジットカード会社です。2024年7月の発表によると、2023年度の新規申込は500万件超(うちプロパーカード300万件)。コンタクトセンターには利用内容などに関する問い合わせが月間約50万件超寄せられています。

扱うのはお金と個人情報で、回答の誤りが許されにくい領域です。セキュリティ基準の高いコンタクトセンターで、どうやって生成AIを本番の業務に乗せたかという点が、自社と比べるときの前提になります。

何が課題だったのか

キャッシュレス決済の拡大に伴って問い合わせが増え続けるなか、2024年7月の発表は「対応品質と対応可能件数の向上が急務」と書いています。2025年12月の発表でも、月間約50万件超の問い合わせに対して「安定した応対体制の継続的な構築が課題」とされています。

人を増やして件数に追いつく方法には限界があり、しかも回答の品質は落とせない。量と質を同時に求められる状態が、AI導入の出発点でした。

何をAI化したのか

時期対象中身
2024年6月末〜メール回答業務問い合わせに対し、RAGで社内データを検索(探索AI)し、回答の草案を自動生成(回答生成AI)。オペレーターが確認して送る
2024年12月〜チャット回答業務メールでの成果を受けて、同じ生成AIをチャットにも展開
2025年12月3日〜電話(音声)の問い合わせGen-AXの音声応対ソリューション「X-Ghost」を使ったAIオペレーター。第1弾は「当社を装った不審な通知」に関する問い合わせ。2025年度内に「カードが使えない」問い合わせを追加予定、2026年度以降も用件を順次拡大
2026年3月下旬〜入会審査機械学習の自動判定AIで、従来は担当者が目視で行っていた審査の一部を自動化(担当者による審査の20%)

メールの草案づくりから始め、チャット、電話、さらに審査へと、AIが担う範囲を段階的に広げているのがわかります。AIオペレーターは、2025年5月に三井住友カードとソフトバンクが結んだデジタル分野の包括的業務提携の一環で、生成AIを活用したビジネス創出の第1弾と位置づけられています。

なぜここまでできたのか|「使える回答の割合」を毎月の改善指標にした

三井住友カードの公表値。メール回答業務でAIの回答のうち有用と判定された割合は2024年7月の46%から2025年3月の85%へ。オペレーターの生産性は生成AI利用開始前の約2倍(ELYZA公表)。2028年度末に問い合わせの過半をAIオペレーターが対応することを目指す(目標)
三井住友カードの公表値。メール回答業務でAIの回答のうち有用と判定された割合は2024年7月の46%から2025年3月の85%へ。オペレーターの生産性は生成AI利用開始前の約2倍(ELYZA公表)。2028年度末に問い合わせの過半をAIオペレーターが対応することを目指す(目標)

この事例でいちばん参考になるのは、導入直後の数字が低かったことを隠さず、そこから上げていった過程が公表されている点です。

使い始めた2024年7月、「使える」と判定された回答は46%で、半分に届いていませんでした。ここで打ち切らずに、オペレーターが「有用性が低い」と判定した回答の問題点を集め、RAG(AIが参照する社内データの検索部分)に反映して直すことを繰り返し、約8か月で85%に引き上げています。

評価のしかたも具体的です。オペレーターがAIの回答を5段階で評価し、「そのまま活用できる」か「多少の推敲で活用できる」と答えたものを「有用」と数えています。生産性も感覚ではなく、オペレーターの月間回答数から算出しています。現場の人が毎日つける評価がそのまま改善の材料になり、効果の測り方も決まっていたことが、メールからチャットへ、さらに電話へと範囲を広げる根拠になったと読めます。

もう1つは、AIに任せる範囲を「草案」から始めたことです。メールとチャットでは、AIが作るのはあくまで回答の草案で、送るのはオペレーターです。電話のAIオペレーターも、第1弾は「当社を装った不審な通知」という用件に絞って始めています。

日本の中小企業が真似できる3点

① 「AIの回答を人が採点する」仕組みを最初から組み込む。 三井住友カードは、オペレーターが回答を5段階で評価する仕組みを持っていたから、46%という低い出発点から改善できました。問い合わせ対応やメール返信にAIを使うなら、「そのまま使えた/直して使えた/使えなかった」の3択だけでも毎回記録すると、どこを直せばよいかが見えるようになります。

② 導入直後の数字で判断しない。 使い始めの46%だけを見ていたら、「AIは使えない」で終わっていたはずです。使えなかった回答を集めて、AIに渡す社内資料(FAQ・マニュアル)の側を直す。数か月この改善を回してから判断する前提で始めるのが、この事例の教訓です。

③ 草案づくりから始めて、成果が出てから範囲を広げる。 メールの草案→チャット→電話の一部の用件、という順番で、AIの守備範囲を一段ずつ広げています。少人数の会社でも、まずは返信の下書きだけをAIに任せ、確認と送信は人が行う形なら、品質を落とさずに始められます。

なお、AIに渡す社内資料の整備や、回答の評価を回し続ける仕組みづくりは、日々の業務に追われる少人数の会社ほど後回しになりがちな部分です。営業・マーケや顧客対応の実務を理解している外部に実装まで任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。

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注意して読むべき点

  • 有用率(46%→85%)と生産性約2倍は、提供元のELYZAが公表した数字です。三井住友カード自身の発表文では確認できず、報道(IT Leaders)もELYZAの発表を元にしています。第三者による検証はありません
  • 「約2倍」はメール回答業務のオペレーターの月間回答数から算出した値です。コンタクトセンター全体(電話を含む)の生産性ではありません。比較の対象期間や対象人数の詳細は公表されていません
  • 2024年7月の発表にある「対応時間を最大で60%程度短縮」は、導入時点の見込みです。その後の実績として公表されたのは「生産性約2倍」で、60%短縮が達成されたかどうかは示されていません
  • 「2028年度末に問い合わせの過半をAIオペレーターが対応」は目標です。2025年12月の提供開始後、AIオペレーターがどれだけの件数を処理しているかの実績は、本記事の出典には含まれていません
  • 入会審査の自動判定AIは生成AIではなく機械学習の技術で、顧客対応とは別の業務です。「20%」は担当者が目視で行っていた審査のうち自動化できた割合で、入会審査全体に占める割合ではありません

よくある質問

Q. 三井住友カードのAIは、問い合わせに自動で回答しているのですか?

メールとチャットでは、AIが作るのは回答の草案で、オペレーターが確認して回答する使い方です。電話については、2025年12月3日からAIオペレーターが音声で直接応対しており、第1弾は「当社を装った不審な通知」に関する問い合わせが対象です。2028年度末に問い合わせの過半をAIオペレーターが対応することを目指しています(目標)。

Q. 導入してすぐに効果が出たのですか?

いいえ。使い始めた直後の2024年7月、オペレーターが「有用」と判定した回答は46%にとどまっていました。有用性が低い回答の問題点を集めて改善を続けた結果、2025年3月に85%まで上がったと、提供元のELYZAが公表しています。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

AIが作った回答を、人が毎回簡単に採点して記録することです。三井住友カードはオペレーターの5段階評価をもとに改善を回し、46%から85%まで有用率を上げました。「使えた/直して使えた/使えなかった」の記録だけでも、AIに渡す資料のどこを直せばよいかがわかります。

Q. 「生産性約2倍」はどう測られた数字ですか?

ELYZAの発表によると、コンタクトセンターのオペレーターの月間回答数から算出した値で、生成AI利用開始前との比較です。対象はメール回答業務で、電話を含むコンタクトセンター全体の数字ではありません。

出典

出典と、その読み方

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