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客対応の担当者2.8万人をAIで「売る人」に、販売は約40%増|ベライゾン(Verizon)の事例

公開 2026-10-09 / 約13分

顧客サービス担当2万8,000人のチームを通じた販売の伸び(AI導入以降。同社コンシューマー部門CEOの発言をロイターが報道・2025年4月9日。比較の起点と期間の定義は示されていない)

約40%

出典:報道(2025-04-09時点)

地域
🇺🇸 アメリカ(海外)
業種
通信(携帯・ブロードバンド)
AI化した領域
顧客対応/コンタクトセンター/営業支援/社内ナレッジ検索/マーケティング
出典の種別
報道/自社発表

顧客対応の現場は、AIが「答えを探す」を引き受け、人が「提案して売る」に時間を使う段階まで進んでいます。米通信大手のベライゾン(Verizon)は、Googleの生成AI「Gemini」で作った社内アシスタント「Personal Research Assistant」を、顧客サービス担当と店舗の2万8,000人に展開しました。社内文書約1万5,000件を読み込ませたこのAIは、顧客の問い合わせの95%に答えられるとされています(Google Cloudの発表・2025年4月9日)。同社コンシューマー部門のCEOは、このチームを通じた販売が導入以降約40%伸びたと説明し、「顧客サービス担当から販売担当へのリスキリングを、リアルタイムで進めている」と話しました(ロイターの報道・2025年4月9日)。2026年には、消費者からの電話とチャットの大半をAIのプラットフォームが受ける段階に入っています(Google Cloudの発表・2026年8月24日)。出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • Gemini を使った社内アシスタント「Personal Research Assistant」を、顧客サービス担当と店舗の2万8,000人に展開。問い合わせに対する回答可能率は95%(Google Cloudの発表・2025年4月9日)
  • 2024年7月に展開を始め、2025年1月に全面展開。社内文書約1万5,000件をGeminiに読み込ませて作った(ロイターの報道・2025年4月9日)
  • 同社コンシューマー部門CEOは、2万8,000人の顧客サービスチームを通じた販売が導入以降約40%伸びたと説明。通話時間が短くなり、担当者が商品の提案に時間を回せるようになったため(ロイターの報道・2025年4月9日。同社幹部の発言で、比較の起点は示されていない)
  • 2025年6月には、複雑な問題を1人の担当者が最後まで受け持つ「Customer Champion」(GoogleのAIとGeminiを活用)と、AIを組み込んだアプリ内の「Verizon Assistant」を発表(同社の発表・2025年6月24日)
  • 2026年8月、Googleとの戦略提携を発表。AIの顧客対応プラットフォームが消費者からの電話とチャットの大半を毎月処理し、担当者は複雑で手厚い対応に集中する体制になった。マーケティングでもコンテンツ作成とキャンペーン運用の自動化を進める(Google Cloudの発表・2026年8月24日)

どんな会社か

ベライゾンは、ニューヨークに本社を置く米国最大級の通信会社です。携帯電話と家庭向けのインターネット回線を個人と法人に提供しており、社員はおよそ10万人規模です(CNBCの報道・2025年11月20日。2024年末時点で米国の社員約10万人)。

携帯電話の会社にとって、顧客サービスの窓口は「料金の質問に答える場所」であると同時に、機種変更や回線の追加を提案できる「売り場」でもあります。問い合わせへの回答と提案の両方を同じ担当者が担う構造は、日本の中小企業の営業事務やカスタマーサクセスの担当者と同じです。

何が課題だったのか

公表資料から読み取れる課題は、担当者が答えを探すのに時間を取られ、提案まで手が回らないことです。Google Cloudの発表は、このアシスタントの狙いを「膨大なナレッジベースを手作業で探す必要をなくすこと」と説明しています。通信の料金プランや端末、キャンペーンは種類が多く、新人の担当者ほど複雑な問題の解決に時間がかかるという課題もありました。

ロイターの報道によれば、ベライゾンは顧客サービスの人員をAIで置き換えるのではなく、担当者を販売に回す道を選んだと説明しています。同じ記事は、AIで顧客サービスの人員を置き換えた例としてKlarnaを挙げ、対照的な選択だと伝えています(Klarnaの事例はこちらの記事で整理しています)。

何をAI化したのか

AIに任せたのは、担当者が「答えを探す」「問題を切り分ける」部分と、顧客が自分で済ませられる問い合わせです。

領域内容公表時期
担当者の調べもの(Personal Research Assistant)顧客の質問に、文脈に合わせた答えをその場で表示する。顧客が次に聞きそうな質問も先回りして示す。会話の自動要約とフォローの通知も追加中2024年7月に展開開始、2025年1月に全面展開(ロイター)。2025年4月9日に結果を発表(Google Cloud)
故障・トラブルの切り分け(Problem Solver)社内のナレッジベースとつなぎ、トラブルの解決手順を示す。特に新人の担当者の解決時間の短縮に効いたと説明2025年4月9日に発表(Google Cloud)
顧客向けの対話AI電話やアプリ「My Verizon」のチャットで、顧客が自然な言葉で問題を解決できる仮想アシスタント2025年4月9日(Google Cloud)・2025年6月24日(同社)
顧客対応の受け口全体AIの顧客対応プラットフォームが、消費者からの電話とチャットの大半を毎月処理2026年8月24日に発表(Google Cloud)
マーケティングコンテンツ作成とキャンペーン運用の自動化で、顧客との接点、販売、継続利用を伸ばす2026年8月24日に発表(取り組みの方向性。成果の数字は未公表)

なぜここまでできたのか|AIで浮いた時間を「提案」に回すと決めていた

ベライゾンの公表値。AIアシスタントを展開した顧客サービス担当と店舗 2万8,000人(Google Cloud発表・2025年4月9日)/問い合わせの回答可能率 95%(同)/顧客サービスチームを通じた販売の伸び 約40%(同社幹部の発言・ロイター報道・2025年4月9日)
ベライゾンの公表値。AIアシスタントを展開した顧客サービス担当と店舗 2万8,000人(Google Cloud発表・2025年4月9日)/問い合わせの回答可能率 95%(同)/顧客サービスチームを通じた販売の伸び 約40%(同社幹部の発言・ロイター報道・2025年4月9日)

この事例で目立つのは、AIで浮いた時間の使い道を、導入の前から「販売」に決めていたことです。コンシューマー部門CEOは「顧客サービス担当から販売担当へのリスキリングを、リアルタイムで進めている」と話し、コスト削減の別の手段もあったが人を育て直す道を選んだと説明しています(ロイターの報道・2025年4月9日)。AIの評価を「何分短くなったか」だけでなく「どれだけ売れたか」で語れたのは、浮いた時間の行き先を最初に決めていたからだと読めます(ここは推測)。

もう1つは、答えの元になる社内文書を先に整えたことです。約1万5,000件の社内文書をAIに読み込ませ、担当者が手で探していたナレッジベースを、AIが文脈に合わせて引ける形にしました。アシスタントは担当者が質問を打ち込むのを待たず、顧客が次に聞きそうなことを先回りして表示します。担当者の頭の負担を減らすことを「人を中心にした道具」として設計した、と同社とGoogleは説明しています。

その先の2026年には、顧客からの問い合わせの大半をAIのプラットフォームが受け、人の担当者は複雑で手厚い対応に集中する形まで進みました。担当者を支える段階から、AIが窓口に立つ段階へ移ったことになります。

日本の中小企業が真似できる3点

① 浮いた時間の行き先を先に決める。 ベライゾンは、AIで短くなった対応時間を「提案と販売」に回すと決めてから展開しました。自社でも、問い合わせ対応をAIで速くするなら、浮いた時間で何をするか(既存顧客への提案、休眠顧客への連絡など)を先に決め、その数字で効果を測ると、AIが売上の話になります。

② AIに読ませる社内文書を先に揃える。 同社は約1万5,000件の社内文書を土台にしました。中小企業なら、料金表、よくある質問、過去の回答メール、商品の比較表を1か所に集めることが出発点です。答えの元がばらばらのままでは、AIも担当者と同じように迷います。

③ 担当者の「隣」から始めて、窓口は後にする。 同社はまず担当者の調べものを支え、その後で顧客が直接話すAIを広げました。いきなり顧客の前にAIを出すより、担当者がAIの答えを確かめながら使う期間を置くほうが、誤った案内を防ぎやすくなります。

問い合わせ対応のどこをAIに任せ、浮いた時間をどの営業活動に回すかの設計に迷ったときは、外部の知見を借りる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つです。

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注意して読むべき点

  • 「約40%」は同社幹部の発言で、定義が示されていません。ロイターが報じたのはコンシューマー部門CEOの説明で、何を基準に、どの期間で比べたか(売上高か件数か、前年比か導入前比か)は記事に書かれていません。決算資料などで同じ数字を確認することはできませんでした。また、販売の伸びにはAI以外の要因(料金プランや販促の変更など)も含まれうるため、すべてをAIの効果と読むことはできません
  • 「95%」は回答可能率で、正答率ではありません。Google Cloudの発表は「問い合わせの95%に答えられる」と説明していますが、答えの正確さを第三者が検証した数字ではありません。この発表はAIの提供元であるGoogle Cloudによるものです
  • 出典の多くは同社かGoogle Cloudの発表です。販売の伸びや問い合わせ処理の割合を、第三者が検証した資料は確認できませんでした。2026年8月の「電話とチャットの大半を処理」も、具体的な割合や件数は示されていません
  • 2025年秋以降、人員の方針は大きく変わっています。2025年10月に就任した新CEOは、同年11月に1万3,000人を超える人員削減を発表しました(同社の発表・2025年11月20日)。同社はこの削減を「AI活用の結果ではない」と説明しています(CNBCの報道・同日)。一方で2026年7月の報道によれば、新CEOは顧客サービスの仕事の大きな割合をAIが置き換えると見ており、同月には直営店の約3,000人の削減と274店のフランチャイズ化が報じられました(The Next Webの報道・2026年7月16日)。2025年4月時点の「置き換えではなく販売へ」という説明は、当時の経営陣の方針として読む必要があります

よくある質問

Q. ベライゾンはAIで顧客サービスの何を変えたのですか?

担当者が社内文書を探して答える作業を、Googleの生成AI「Gemini」で作ったアシスタントに任せました。2万8,000人の顧客サービス担当と店舗に展開され、問い合わせの95%に答えられるとされています(Google Cloudの発表・2025年4月9日)。2026年には、消費者からの電話とチャットの大半をAIのプラットフォームが処理する段階に入りました(Google Cloudの発表・2026年8月24日)。

Q. 販売が約40%伸びたというのは本当ですか?

同社コンシューマー部門CEOの発言としてロイターが報じた数字です(2025年4月9日)。比較の起点や期間、何の数値の伸びかは示されておらず、AI以外の要因も含まれうるため、方向感を示す数字として読むのが安全です。

Q. ベライゾンはAIで顧客サービスの人員を減らしたのですか?

2025年4月時点では、人を減らすのではなく担当者を販売に回すと説明していました。2025年11月に1万3,000人超の人員削減を発表しましたが、同社は「AI活用の結果ではない」としています。ただし2026年7月の報道では、新CEOが顧客サービスの仕事の大きな割合をAIが置き換えると見ていると伝えられており、方針は変わりつつあります。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

AIで浮いた時間をどの営業活動に回すかを、導入前に決めることです。そのうえで、料金表やよくある質問、過去の回答メールなど、AIに読ませる社内文書を1か所に集め、まずは担当者の調べものを支える使い方から始めると、誤った案内を防ぎながら効果を確かめられます。

出典

出典と、その読み方

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