社内文書約130万件を横断検索、社内AIの利用は1日6,000件から7〜8万回へ|三井住友銀行(SMBCグループ)の事例
公開 2026-09-14 / 約13分
社内AIアシスタント「SMBC-GAI」がRAGで横断検索できるようにした社内規程・通達・業務マニュアル等のファイル数(2025年10月6日 自社発表)
約130万件
出典:自社発表(2025-10-06時点)
- 地域
- 🇯🇵 日本
- 業種
- 金融(銀行)
- AI化した領域
- 社内対話型AIアシスタント/社内文書検索(RAG)/生成AI推進の専門組織/顧客対応AIの音声化
- 出典の種別
- 自社発表/報道
日本の金融最先端では、社内AIの定着がここまで進んでいます。SMBCグループが自社開発した社内AIアシスタント「SMBC-GAI」は、リリース当初の1日6,000件ほどから、2026年3月の報道では1日7〜8万回まで利用が伸びました。2025年10月には社内文書約130万件を横断検索できるRAG機能を追加し、「国内企業のRAG活用事例として学習ファイルの量や使用人数において最大級の規模」と自社で発表しています。1つの社内ツールを3年弱でここまで育てた過程を、出典と発表日つきで整理します。
この事例の要点
- 社内AIアシスタント「SMBC-GAI」を2023年7月にリリース。1日あたりの利用件数はリリース当初の6,000件ほどから、2024年3月時点の自社記事で12,000件ほど(約2倍)、2026年3月の報道では1日7〜8万回まで拡大
- 開発期間はわずか4ヶ月。うち開発自体は数日で済ませ、残りの3ヶ月半をルールづくりに費やしたと担当者が明かしている
- SMBC-GAIはMicrosoft Teamsの中で使えるように組み込んだ。Webページに組み込むと毎回そのページを開く必要が出るため、コミュニケーションツール側に常駐させる設計にした
- 2025年10月6日、社内規程・通達・業務マニュアルなど約130万件のファイルを対象にしたRAG(検索拡張生成)機能を追加。「国内企業におけるRAG技術の活用事例としては、学習ファイルの量や使用人数において最大級の規模」と自社発表
- RAG機能はまず三井住友銀行の従業員向けに導入し、SMBCグループ各社への展開も検討(2025年10月時点)
- 生成AI活用を推進する組織横断のバーチャル組織「LLM-CoE」を2024年4月に日本総合研究所の技術統括部内へ創設。兼務メンバー中心の14名から31名体制に拡大し、SMBCグループ向けのLLM勉強会は延べ800名超が参加(2026年1月時点)
- 2026年2月25日から、個人向け総合金融サービス「Olive」の問い合わせに対応する「SMBC AIオペレーター」を提供開始。受付時間は毎日24時間(土日・祝日含む)
- グループ全体では500億円の生成AI投資枠を設け、100近いプロジェクトを同時並行で走らせていると報じられている(2026年3月時点)
どんな会社か
三井住友銀行は、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)傘下の中核銀行で、SMBCグループとして国内外に事業を展開するメガバンクの1つです。この事例が参考になるのは、1つの社内ツールを「作って終わり」にせず、3年弱かけて機能追加と利用率の底上げを積み重ねてきた点です。生成AIの導入初期にありがちな「作ったが定着しない」という課題に対して、どんな手を打ち続けたかが具体的に追える珍しい事例です。
何が課題だったのか
2023年3月にMicrosoftがAzure上でChatGPTを使える「Azure OpenAI Service」をリリースしたことを機に、SMBCグループは独自の社内AIアシスタントの開発に着手しました。リリースまでにかかった期間はわずか4ヶ月ですが、その内訳が特徴的です。担当者は「開発自体は数日で済ませ、残りの3ヶ月半をルールづくりに費やしました」と語っています。金融機関という業種上、システムを作ることよりも、どう使わせるかを決めることのほうが重かったわけです。
そのルールづくりで最も重視したのは、「利用者自身でしっかりと生成AIの回答した内容の正確性、妥当性を判断する必要がある」という点でした。これをルールに明記したうえで、社内の通達・研修動画・マニュアルで徹底しています。あわせて、回答がどのWebサイトを参照したのかURLを表示する仕様にし、利用者が自分で確かめられるようにしました。
リリース後の課題は「どう定着させるか」です。SMBCグループ専用環境で動くチャットツールとして情報が社外に流出しない前提を作ったうえで、利用を底上げする工夫を続けてきました。
何をAI化したのか
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| SMBC-GAI(社内汎用AIアシスタント) | 2023年7月リリース。専門用語の検索、メールの下地作り、文章の要約や翻訳、プログラミング言語のソースコード生成、音声データの文字起こしなどに利用。日本国内に加えアジア地域のグループ会社にも展開済み(2026年3月時点の報道) |
| Teamsへの組み込み | Webページ型にせず、Microsoft Teamsの中で使えるチャットボット形式で社内全体に展開。常駐するAIアシスタントとして業務の導線に置いた |
| 利用ルールの整備 | 開発4ヶ月のうち3ヶ月半をルールづくりに充当。「回答の正確性・妥当性は利用者自身が判断する」をルールに明記し、通達・研修動画・マニュアルで徹底。参照元URLを表示する仕様で裏取りを可能にした |
| RAG機能(社内情報検索) | 2025年10月、社内規程・通達・業務マニュアルなど約130万件を横断検索できる機能を追加。回答生成時に参照元を提示し、根拠の追跡を可能にした |
| LLM-CoE(生成AI活用の推進組織) | 2024年4月に日本総合研究所 技術統括部内へ創設した組織横断のバーチャル組織。①情報の集約と発信②技術者育成と検証環境の整備③相談窓口の設置④PoCの推進の4つを担う。14名→31名体制、LLM勉強会は延べ800名超が参加 |
| SMBC AIオペレーター | 「Olive」の問い合わせに対応するAIオペレーターを2026年2月25日提供開始。受付時間は毎日24時間(土日・祝日含む)。本人確認が不要な一般的な照会に対応し、コールセンターの営業時間内であれば有人オペレーターへ引き継ぐハイブリッド体制 |
なぜここまでできたのか

「配って終わりにしない」運用が、この事例の核です。SMBC-GAIは2023年7月のリリース後も「社内の声も取り入れながら、順次機能レベルアップを実施」してきたと自社発表にあり、2025年10月のRAG機能はその象徴です。2024年3月時点では「今後は社内規程を検索できるようにするなど、実装に向けて検証を進めています」と語られていた構想が、1年半後に約130万件規模で実装されました。やると言ったことを実際に積み上げているのが、6,000件から7〜8万回への利用拡大の背景にあります。
もう1つの特徴は、使う場所を変えなかったことです。担当者は「工夫したのはMicrosoft Teamsの中で利用できるようにしたことです」と述べ、その理由を「Webページに組み込んでしまうと毎回そのページを開く必要が出てきますが、Teamsのようなコミュニケーションツールに組み込むことで」と説明しています。新しいツールを1つ増やすのではなく、すでに毎日開いている画面の中にAIを置いたという判断です。
そして、開発4ヶ月のうち3ヶ月半をルールづくりに費やした点も見逃せません。ルールを「禁止事項の列挙」ではなく「利用者自身が回答の正確性を判断する」という運用の設計に落とし込み、それを支えるために参照元URLを表示する仕様をシステム側に入れています。ルールとシステムをセットで動かすという考え方が、後の機能追加を素早く回せる土台になっています。
中小企業が真似できる3点
① 「配って終わり」にせず、使われているかを追い続ける
SMBC-GAIは3年弱かけて機能追加を重ねています。導入した時点をゴールにせず、次の一手を打ち続ける姿勢は、規模を問わず応用できます。
② すでに毎日開いている画面の中にAIを置く
SMBCグループはAIを専用のWebページではなくTeamsの中に入れました。新しいツールを増やすほど使われなくなるという前提に立ち、既存の業務導線に組み込む設計は、社員数が少ない会社ほど効きます。
③ ルールとシステムをセットで考える
「回答の正確性は利用者が判断する」というルールを決めるだけでなく、参照元URLを表示する仕様をシステムに入れて裏取りできるようにしています。運用ルールを紙だけで配らず、守れる仕組みを一緒に用意するという順序は、そのまま真似できます。
こうした「配って終わりにしない運用」と「業務導線への組み込み」は、専任のAI推進担当を置きにくい会社ほど、外部の力を借りたほうが早く回ります。私たちAIリモートワーカーのようなサービスも、その選択肢の1つとして検討する余地があります。
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- 「1日7〜8万回」という利用件数は、BUSINESS+IT(sbbit.jp)が2026年3月30日に報じた記事の地の文(記者の説明)であり、SMBCグループ自身がこの数字を発表した資料は本記事の時点で確認できていません。同記事は同社デジタル戦略部長・松永圭司氏への取材を軸に構成されており、単位は「件」ではなく「回」と書かれています
- 「6,000件ほど→12,000件ほど」は自社記事(DX-link・2024年3月8日更新)の数字です。原文は増加後の時点を「現在」としか書いておらず、また7〜8万回(2026年3月報道)との間の期間にどう推移したかは、本記事の時点では公表資料を確認できていません
- 同じ報道には「全グループ員が日常的に使える社内汎用チャットツール」という記述がありますが、これは利用できる状態にあるという意味であり、全員が実際に使っているという利用率の発表ではありません
- RAG機能の「約130万件」「学習ファイルの量や使用人数において最大級」は、あくまで三井住友銀行の従業員向け導入時点(2025年10月)の発表です。SMBCグループ各社への展開は「検討」の段階であり、展開が完了したという発表は確認できていません
- 「500億円の投資枠」「100近いプロジェクト」は、報道(2026年3月30日)が伝えた説明であり、決算資料など監査済みの数値としては確認できていません。また500億円は使った実績額ではなく、「ROIを厳密に出せないプロジェクトにも取り組めるよう、通常の投資審査とは切り離して設けた枠」と説明されています
- SMBC AIオペレーターの「銀行業界初」は、プレスリリース内の「三井住友銀行調べ」という自己申告の表現で、かつ「AIオペレーターの自由発話による照会対応としては銀行業界初となる24時間365日のサービス提供」という限定つきの主張です。第三者機関による検証は確認できていません
- SMBC AIオペレーターが対応するのは、Oliveのサービス内容・年会費、各種キャンペーン・特典の概要、申込・切替に関するお手続概要など、本人確認が不要な一般的な照会に限られます。本人確認が必要な手続きは従来通り有人のコールセンターが対応します。また有人への引き継ぎは無条件ではなく「コールセンターの営業時間内であれば」という条件つきです
- LLM-CoEの「31名体制」は、原文では時点が「現在」としか書かれていません(記事の更新日は2026年1月8日)。同組織は日本総合研究所の技術統括部内に置かれた組織横断のバーチャル組織であり、三井住友銀行の行内組織ではありません
よくある質問
Q. SMBC-GAIは三井住友銀行の全行員が使えるツールですか?
2023年7月のリリース以降、グループ内で利用が広がっています。2026年3月の報道には「全グループ員が日常的に使える社内汎用チャットツール」という記述がありますが、これは使える状態にあるという意味です。全員が実際に使っているという利用率をSMBCグループが発表した資料は、本記事の時点では確認できていません。
Q. 約130万件のRAG機能は、もうグループ全体で使えるのですか?
2025年10月6日の発表時点では、まず三井住友銀行の従業員向けに導入され、SMBCグループ各社への展開は検討段階です。その後の展開状況を示す追加発表は、本記事の時点では確認できていません。
Q. 中小企業が最初に真似すべきことは何ですか?
すでに毎日開いている画面の中にAIを置くことです。SMBCグループは専用のWebページを作らず、Microsoft Teamsの中で使えるようにしました。理由は「Webページに組み込んでしまうと毎回そのページを開く必要が出てくる」から。新しいツールを増やさずに済む場所を選ぶだけで、定着のしやすさは変わります。
Q. 銀行だからできたことで、中小企業には関係ないのでは?
開発4ヶ月のうち3ヶ月半をルールづくりに使った、という時間配分は規模に関係なく参考になります。また「散らばった社内文書を後から検索可能にする」のも、最初から完璧な情報基盤を用意せずに後から改善を積み重ねた順序であり、そのまま小さく始められます。
Q. この数字はいつ時点のものですか?
SMBC-GAIのリリースは2023年7月、6,000件ほど→12,000件ほどは2024年3月8日更新の自社記事時点、RAG機能の約130万件は2025年10月6日時点、LLM-CoEの31名体制とLLM勉強会の延べ800名超は2026年1月8日更新の自社記事時点、SMBC AIオペレーターは2026年2月25日の提供開始(発表は2月18日)、1日7〜8万回の利用とグループ全体の投資枠・プロジェクト数は2026年3月30日の報道時点です。
出典
- 社内向け汎用型AIアシスタントツール「SMBC-GAI」へのRAG技術を活用した社内情報検索機能の導入について(株式会社三井住友フィナンシャルグループ・2025年10月6日)
- SMBCグループが独自に生み出したAIアシスタント「SMBC-GAI」開発秘話(DX-link・2024年3月8日更新)
- SMBCグループの生成AI活用の可能性を最大化。「LLM-CoE」の使命とインパクト(DX-link・2026年1月8日更新)
- SMBCグループが挑む生成AI全社展開、「500億円投資枠」と100近いプロジェクトの全貌(BUSINESS+IT・2026年3月30日)
- 生成AIを活用した新たな顧客対応サービス「SMBC AIオペレーター」の提供開始について(三井住友銀行・日本総合研究所・日本アイ・ビー・エム 連名・2026年2月18日)
出典と、その読み方
- 自社発表2025-10-06社内向け汎用型AIアシスタントツール「SMBC-GAI」へのRAG技術を活用した社内情報検索機能の導入について(株式会社三井住友フィナンシャルグループ)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2024-03-08SMBCグループが独自に生み出したAIアシスタント「SMBC-GAI」開発秘話(DX-link)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2026-01-08SMBCグループの生成AI活用の可能性を最大化。「LLM-CoE」の使命とインパクト(DX-link)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 報道2026-03-30SMBCグループが挑む生成AI全社展開、「500億円投資枠」と100近いプロジェクトの全貌(BUSINESS+IT・三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部長 松永圭司氏への取材)
第三者による取材
- 自社発表2026-02-18生成AIを活用した新たな顧客対応サービス「SMBC AIオペレーター」の提供開始について(三井住友銀行・日本総合研究所・日本アイ・ビー・エム 連名)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
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