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顧客との会話は年約1,300万件をAIアシスタントが担当、通話の要約も自動化|ナットウエスト(NatWest)の事例

公開 2026-10-15 / 約11分

2025年にデジタルアシスタント「Cora」が顧客と交わした会話の件数(NatWestの2025年度決算資料・2026年2月13日)

約1,300万件

出典:決算・年次報告(2026-02-13時点)

地域
🌐 英国(海外)
業種
銀行(金融)
AI化した領域
顧客対応/コンタクトセンター/営業支援/社内AI基盤/業務効率化
出典の種別
決算・年次報告/自社発表

英国の大手銀行ナットウエスト・グループでは、顧客との会話の入口をAIのデジタルアシスタント「Cora(コーラ)」が担っています。2025年にCoraが顧客と交わした会話は約1,300万件(同社の2025年度決算資料・2026年2月13日)。生成AIを組み込んだ後は、Coraだけで解決できた問い合わせが約20ポイント増え、2026年上半期には人の手を介さずに完結した会話が380万件と前年同期より23%増えました(中間決算発表・2026年7月31日)。オペレーターの側でも、通話の要約と苦情への回答文づくりをAIが受け持ち、決算発表ではリテール部門で年約9万時間の節約と説明しています。出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • デジタルアシスタント「Cora」が2025年に顧客と交わした会話は約1,300万件(2025年度決算資料・2026年2月13日)
  • 生成AIの機能を組み込んだ後、Coraが解決できた問い合わせが約20ポイント増加(同資料)。2026年上半期は会話710万件のうち380万件が完全にデジタルで完結し、前年同期比23%増(中間決算発表・2026年7月31日)
  • オペレーター側は、通話の自動要約で年7万時間超を節約(70万件超の通話が対象・2025年度決算資料)。決算発表の本文では、要約と苦情への回答文のAI生成で、リテール部門で年約9万時間の節約と記載
  • 法人部門では苦情の通話の100%をAIで文字起こし・要約(2025年度決算資料)。2026年上半期には、法人向けネットバンキングの問い合わせの28%がデジタルで最後まで完結(中間決算説明資料)
  • 2025年3月にOpenAIとの提携を発表。この時点で検討中のAIプロジェクトは275件超、本番運用は約25件(自社発表・2025年3月20日)

どんな会社か

ナットウエスト・グループは、英国の顧客2,000万人超に、個人向け、法人向け、富裕層向けの銀行サービスを提供する大手銀行グループです(同社サイト)。傘下にナットウエスト、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、プライベートバンクのクーツなどのブランドを持ちます。

2025年3月の発表では、リテールの顧客の約80%がすべての取引をデジタルで済ませていると説明しています(自社発表・2025年3月20日)。窓口より画面の上で顧客と会うことが多い会社なので、その画面の上でどこまで用件を片づけられるかが、顧客体験とコストの両方を左右します。

何が課題だったのか

公表資料から読み取れる課題は、顧客の用件をデジタルで最後まで片づけ、人にしかできない対応に人の時間を回すことです。2025年3月の発表では、詐欺の被害を報告したい顧客の多くがいまも電話を選んでいると述べ、Coraで報告の手続きを簡単にして、電話の担当者がほかの用件に対応できるようにする方針を示しています(自社発表・2025年3月20日)。

もう1つは、オペレーターや営業担当が対応のあとに書く記録の負担です。同社は通話の要約や苦情への回答文を、AIを最初に入れる領域に選びました。会話の記録づくりに時間を取られ、顧客と話す時間が削られていた状況が背景にあると読めます(ここは推測)。

何をAI化したのか

領域内容公表時期
顧客向けアシスタント「Cora」生成AIを組み込み、解決できる問い合わせが約20ポイント増加。2025年の会話は約1,300万件2026年2月13日(2025年度決算資料)
Coraの完結率2026年上半期の会話710万件のうち380万件が完全にデジタルで完結(前年同期比23%増)2026年7月31日(中間決算発表)
通話の要約70万件超の通話をAIが要約し、年7万時間超を節約。富裕層部門のクーツでは要約にかかる時間が70%超短縮2026年2月13日(2025年度決算資料)
苦情への対応法人部門の苦情の通話は100%をAIで文字起こし・要約。リテール部門では回答文もAIが作成2026年2月13日(2025年度決算資料・決算発表)
営業担当の支援顧客を受け持つ担当者(リレーションシップ・マネージャー)向けに、顧客の概要をワンクリックでまとめる機能と、面談の自動要約2026年2月13日(2025年度決算資料)
法人向けネットバンキング生成AIのCoraと問い合わせの振り分けで、問い合わせの28%がデジタルで完結。法人部門では5つのAIエージェントが担当者の業務を支援2026年7月31日(中間決算発表・説明資料)

さらに同社は、2026年末までにすべての顧客向けの手続きを生成AIで強化する目標を掲げています(2025年度決算資料)。これは実績ではなく目標です。

なぜここまでできたのか|顧客の入口と、担当者の記録を同時にAIへ渡した

ナットウエストの公表値。Coraとの会話 約1,300万件(2025年)、生成AI導入後の解決率 約20ポイント増(いずれも2025年度決算資料・2026年2月13日)/2026年上半期にデジタルで完結した会話 380万件・前年同期比23%増(中間決算発表・2026年7月31日)
ナットウエストの公表値。Coraとの会話 約1,300万件(2025年)、生成AI導入後の解決率 約20ポイント増(いずれも2025年度決算資料・2026年2月13日)/2026年上半期にデジタルで完結した会話 380万件・前年同期比23%増(中間決算発表・2026年7月31日)

この事例で目立つのは、顧客側と担当者側の両方から同時にAIを入れていることです。顧客側ではCoraが会話の入口になり、用件をできるだけ画面の上で完結させる。担当者側では、通話の要約や苦情への回答文の下書きをAIが受け持つ。人が対応する会話の件数を減らしつつ、残った会話の後処理も軽くする、という二段構えです。

もう1つは、10年近く育ててきた入口に生成AIを足したことです。Coraは生成AIが話題になる前から使われてきたアシスタントで、同社サイトは「9年前に開始した」と紹介しています。新しいチャットボットを一から立てたのではなく、すでに顧客が使っている入口の解決力を上げたので、効果が会話の件数と完結率にそのまま出ています(解釈は推測)。

そして、成果を決算で毎期報告していることも特徴です。会話の件数、完結した件数、節約した時間を、決算発表という投資家向けの場で継続して出しているため、取り組みが掛け声で終わらず、毎期の数字で進み具合を確かめられる形になっています。

日本の中小企業が真似できる3点

① 問い合わせの入口を1つに決めて、そこを育てる。 ナットウエストは新しい窓口を増やすのではなく、Coraという1つの入口の解決力を上げました。中小企業でも、問い合わせフォームやチャットなど入口を1つ決め、よくある質問から順に、AIが最後まで答えられる範囲を広げていくのが近道です。

② 電話やオンライン商談のあとの「記録」からAIに任せる。 通話の要約、議事録、苦情への回答文の下書きは、件数が多く、AIの出力を人が確認しやすい作業です。顧客に直接届く前に人の目を通せるので、最初の一歩として失敗しにくい領域です。

③ 「件数」と「完結率」を毎月数える。 同社は会話の件数と、デジタルで完結した件数を分けて報告しています。AIが受けた件数だけでなく、人に引き継がずに済んだ件数を数えると、どこまで任せられているかが見えます。

問い合わせ対応や商談後の記録づくりのどこからAIに任せるかを決め、定着するまで一緒に進める相手として、私たちAIリモートワーカーのようなサービスを使う方法もあります。

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注意して読むべき点

  • 節約時間の数字は資料によって表現が異なります。2025年度決算資料は「通話の要約で年7万時間超(70万件超の通話)」、同日の決算発表はリテール部門について「要約と苦情への回答文のAI生成で年約9万時間」と書いています。対象とする作業の範囲が異なると見られるため、同じ数字として並べないでください。いずれも同社の試算で、第三者の検証は確認できませんでした
  • 「約20ポイント増」は、生成AIの機能を組み込んだ前後の解決率の差です。比較した期間と解決率そのものの水準は、確認した資料には書かれていません
  • 「23%増」は、デジタルで完結した会話の件数の増加率です。2026年上半期の380万件と前年同期の比較で、完結率(割合)の伸びではありません
  • 「すべての顧客向けの手続きを2026年末までに生成AIで強化」は目標です。達成した実績ではありません
  • 2025年3月の「顧客満足度150%改善」は、条件が示されていません。同社の発表は生成AI版のCora(Cora+)について「顧客満足度が150%改善した」と書いていますが、何の指標をどの期間で比べたかの説明がないため、本記事では代表数値に使っていません
  • 同社サイトの数字(2025年の会話1,290万件、生成AIを使う手続きが4件から21件へ等)には掲載日の記載がありません。本記事では、日付のある決算資料の数字を優先しました

よくある質問

Q. ナットウエストは顧客対応にAIをどう使っていますか?

顧客の問い合わせの入口として、デジタルアシスタント「Cora」を使っています。2025年の会話は約1,300万件で、生成AIを組み込んだ後は解決できた問い合わせが約20ポイント増えました(2025年度決算資料・2026年2月13日)。オペレーターの側では、通話の要約と苦情への回答文づくりにAIを使っています。

Q. AIで人の対応はどれくらい減ったのですか?

2026年上半期は、Coraとの会話710万件のうち380万件が人を介さずにデジタルで完結し、その件数は前年同期より23%増えました(中間決算発表・2026年7月31日)。人員がどれだけ減ったかの数字は、確認した資料では公表されていません。

Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?

ほとんどが同社の決算発表と決算説明資料に載った数字で、投資家向けに公表されたものです。ただし節約時間は同社の試算で、資料によって「年7万時間超」と「年約9万時間」と表現が異なります。対象範囲の違いと見られるため、方向感を示す数字として読むのが安全です。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

電話や商談のあとの記録づくりをAIに任せることです。通話の要約や回答文の下書きは件数が多く、人が確認してから使えるので失敗しにくい領域です。そのうえで、問い合わせの入口を1つに決め、AIが最後まで答えられる範囲を少しずつ広げていきます。

出典

出典と、その読み方

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