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生成AIで年227万時間超を削減、商談中に最適製品を即提示|伊藤忠商事の事例

公開 2026-10-22 / 約9分

生成AIで削減した年間の業務時間(集計できた分のみ・約1,263人年相当)。投資家向け説明会資料・2025年10月17日

227万時間超

出典:決算・年次報告(2025-10-17時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
総合商社
AI化した領域
営業/社内AI基盤/業務効率化/コンタクトセンター
出典の種別
決算・年次報告/自社発表

総合商社の伊藤忠商事は、生成AIによって集計できた分だけで年間227万時間超(約1,263人年相当)の業務時間を削減したと、2025年10月17日の投資家向け説明会で公表しました。生成AIが出る前に、RPAなどの自動化で毎年削っていたのは約37万時間(約205人年)です。利用者は国内外のグループで約2万6,000人(2025年9月時点)。さらに同社は、生成AIを「削る」だけでなく「稼ぐ」にも使うとして、商談中に最適な製品をその場で提示する営業の仕組みを紹介しています。

この事例の要点

  • 生成AIによる業務時間の削減は、集計できた分だけで年227万時間超(約1,263人年相当)。生成AI以前のRPA等による削減は年約37万時間(約205人年)(説明会資料・2025年10月17日)
  • 同社が提供する生成AIサービスの利用者は、国内外のグループで約2万6,000人(2025年9月時点)
  • 営業では、大量のスペック表・サプライヤー倉庫の在庫・輸出国の情報を社内AI「I-Colleague」で参照し、商談中に「最短納期の最適製品」を即時提示できるようにした。これを「商社の営業パーソン」のひな形として他の事業へ広げている
  • 2025年9月を「生成AI強化月間」とし、目的を利用者数の拡大ではなく、営業などで稼ぐための使い方の発掘に置いた
  • グループのコールセンター大手ベルシステム24では、AIが自動応答する「AIオペレーター」の構築に着手。営業電話(アウトバウンド)では、成績の高いオペレーターの応対を分析して標準化し、実証段階で3割程度のコンバージョン改善効果があるとの話が質疑で紹介された(質疑応答議事録・2025年10月17日)

どんな会社か

伊藤忠商事は、繊維・機械・金属・エネルギー・化学品・食料・住生活・情報金融などの事業を持つ総合商社です。説明会では、収益の約8割をグループ会社が担っていると説明しています。グループにはファミリーマート、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)、ベルシステム24などがあります。

今回の説明会は、本社のIT・デジタル戦略部が進める社内とグループのデジタル化がテーマでした。情報・金融カンパニーが手がける外向けのデジタル事業の話ではない、と冒頭で断っています。

何が課題だったのか

公表資料から読み取れる課題は2つです。

1つ目は、削減の対象を広げることです。同社はもともと「稼ぐ・削る・防ぐ」の商いの三原則のうち「削る」を意識して、RPAやOCR、データ分析などで業務を減らしてきました。ただ、これらは特定の業務プロセスの改善が中心でした。

2つ目は、営業の提案が個人の経験に頼っていたことです。エネルギー・化学品カンパニーの素材の輸入販売では、製品のスペックが細かく、製品の数も多く、サプライヤーごとにスペック表の形式も違います。お客様のニーズに合う製品を選ぶのは高度な作業で、営業担当者個人の経験に依存していたと説明されています。

何をAI化したのか

領域内容出典
全社の生成AI2023年に「生成AIラボ」を立ち上げ、伊藤忠専用の安全な生成AI環境を導入。社内AI「I-Colleague」を中心に、国内グループ会社・海外拠点向けの基盤も整え、利用者は約2万6,000人(2025年9月時点)説明会資料
営業の提案(プラスチック素材)大量のスペック表をAIに学習させ、サプライヤー倉庫の在庫をリアルタイムに参照。輸出国情報から納期と関税込みのコストまで算出し、商談中に「最短納期の最適製品」を提示説明会資料・自社サイト
事業投資「対象企業の発掘」「深掘り調査」「社内申請」の各段階でAIを使う。社内申請では、過去の稟議と「失敗の教訓」を学習したAIが申請書のチェックと壁打ちを支援(最終判断は経営)説明会資料・自社サイト
マーケティング(ファミリーマート)個人情報ではない属性情報を認識するAIカメラで、来店客に合った広告をデジタルサイネージに配信説明会資料
コールセンター(ベルシステム24)通話データの学習とナレッジ整備で、AIが自動応答する「AIオペレーター」の構築に着手。人手の大幅な削減を見込む説明会資料・質疑応答議事録

なぜここまでできたのか|「削る」の次に「稼ぐ」を据え、営業の型をひな形にした

伊藤忠商事の公表値。生成AIによる年間の削減時間 227万時間超(集計できた分のみ・約1,263人年相当)/生成AI以前のRPA等による年間の削減時間 約37万時間(約205人年)/生成AIサービスの利用者 約2万6,000人(2025年9月時点)。いずれも投資家向け説明会資料・2025年10月17日
伊藤忠商事の公表値。生成AIによる年間の削減時間 227万時間超(集計できた分のみ・約1,263人年相当)/生成AI以前のRPA等による年間の削減時間 約37万時間(約205人年)/生成AIサービスの利用者 約2万6,000人(2025年9月時点)。いずれも投資家向け説明会資料・2025年10月17日

この事例の特徴は、全社の時間削減を数字で積み上げたうえで、次の主題を「稼ぐ」に移していることです。2025年9月の「生成AI強化月間」について、同社は「すでに全社員の利用が当たり前になった」ので、目的は使い方の周知や利用者数の拡大ではなく、より深い使い方と、営業など稼ぐ場面での活用の発掘だと説明しています。

もう1つは、1つの営業の使い方を「ひな形」にして横に広げていることです。プラスチック素材の提案は、製品情報・在庫・納期・コストという、商社の営業ならどの事業でも扱う情報の組み合わせです。同社はこれを「商社の営業パーソン」のひな形として、他のカンパニーやグループ会社の取引業務へ展開するとしています。

土台として、同社は2018年に全社統合のデータ基盤を作り、会計・取引・外部データをためてきたと説明しています。質疑では、生成AI関連で大規模な投資はせず、社外の優れたツールも使いながら「出来ることを着実に積み上げる」方針も示されました。

日本の中小企業が真似できる3点

① 削減時間は「集計できた分だけ」でよいので、毎年同じ形で数える。 伊藤忠は、生成AI以前の約37万時間と、生成AIによる227万時間超を並べて示しています。小さな会社でも、業務ごとに「1回何分×月何回」を数えておけば、前と後を比べられます。

② 営業でいちばん時間がかかる「製品選び」をAIに任せる。 スペック表や価格表、在庫、納期は、多くの会社がすでに持っている情報です。これを1か所から引けるようにするだけで、商談中にその場で答えられる場面が増えます。

③ うまくいった使い方を1つ選び、「ひな形」にして別の担当や部署に広げる。 全員に一から考えてもらうより、1つの成功例を型にして配るほうが早く広がります。

営業の製品選びや提案準備のように、時間のかかる仕事を1つ選んでAIに置き換え、効果を数えながら社内へ広げる進め方を、一緒に設計する選択肢として、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもあります。

ai-remote-worker.com AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援 営業・マーケティングのAI化を、月額定額または成果確認後払いで。実装まで踏み込む伴走型の支援です。

注意して読むべき点

  • 227万時間超は「集計できた分」の数字です。集計の方法や、どの業務を何件数えたかの内訳は示されていません。「約1,263人年」も同社による換算です。第三者が検証した数字ではありません
  • 227万時間超は、RPA等による約37万時間とは別に、生成AIで上乗せされた分と説明されています(「従来の削減に加え」)。2つを合計した数字ではありません
  • 約2万6,000人は「当社が提供する生成AIサービスの利用ユーザー」で、国内外のグループ会社を含みます。毎日使っている人数かどうかは示されていません
  • プラスチック素材の提案事例には、効果の数字がありません。資料には「提案内容の標準化・提案力強化」「取引件数の向上」「顧客対応リードタイム短縮」と書かれていますが、どれだけ改善したかは示されていません。事業投資の支援も「狙い」として紹介されています
  • ベルシステム24の数字は、質疑での伝聞です。「人員を半減させる」は日経新聞の記事の記載として、「2〜3割程度の削減が可能」は情報・金融カンパニーからの報告として、「3割程度のコンバージョン改善」は実証段階で「聞いている」話として紹介されました。いずれも見込みや実証段階の話で、実績ではありません。同社は持分法の上場会社で、詳細の説明は控えると回答しています
  • 自社サイトの「生成AI活用」ページには日付の表示がありません。当記事では2026年10月22日に内容を確認しました

よくある質問

Q. 伊藤忠商事は生成AIでどれだけ業務時間を減らしたのですか?

2025年10月17日の投資家向け説明会で、集計できた分だけで年227万時間超(約1,263人年相当)の業務時間を削減したと公表しています。生成AI以前のRPA等による削減(年約37万時間)とは別の数字です。いずれも同社の公表値で、集計方法の内訳は示されていません。

Q. 営業ではどのように生成AIを使っていますか?

エネルギー・化学品カンパニーの素材の輸入販売で、大量のスペック表、サプライヤー倉庫の在庫、輸出国の情報を社内AI「I-Colleague」で参照し、納期と関税込みのコストまで算出して、商談中に「最短納期の最適製品」を提示できるようにしました。同社はこれを「商社の営業パーソン」のひな形として横展開しています。効果の数字は公表されていません。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

営業で時間のかかる「製品選び」に絞ることです。スペック表・価格表・在庫・納期など、すでに社内にある情報を1か所から引けるようにすると、商談中に答えられる場面が増えます。うまくいったら、その使い方を型にして他の担当者へ広げます。

Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?

数字は同社の投資家向け説明会資料(2025年10月17日)に基づく自社の公表値で、第三者の検証はありません。227万時間超は「集計可能な分だけ」と説明されており、内訳は示されていません。グループ会社ベルシステム24の数字は質疑での伝聞で、見込みや実証段階の話です。

出典

出典と、その読み方

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