研究情報の検索が30分の1以下に、定期利用は4割未満と公表|ライオンの生成AI活用の事例
公開 2026-10-19 / 約8分
研究情報の検索1件あたりの所要時間(従来5〜60分程度)。ライオン社員による発表・労働政策研究・研修機構フォーラム・2026年1月20日。測定条件は示されていない
30分の1以下
出典:公的機関(2026-01-20時点)
- 地域
- 🇯🇵 日本
- 業種
- 日用品・消費財
- AI化した領域
- 社内AI基盤/社内ナレッジ検索/人材育成/業務効率化
- 出典の種別
- 公的機関/自社発表
社内向けの生成AIを5,000人に配るところまでは、多くの会社が到達しています。ライオンはその先で、研究部門の検索をAIで変え、そのうえで「使っているのは一部」という数字まで自ら公表しました。研究開発部門では、散在していた研究情報をAIで引ける「LINK Chat」を作り、従来1件5〜60分程度かかっていた情報検索が30分の1以下に短縮されたと報告されています(ライオン社員による発表・2026年1月20日)。同じ発表で、2025年3月の労働組合アンケートでは「ほぼ毎日使う」が14%、「週1〜2回」が23%、定期的な利用者は4割に届かないとも述べています。出典と発表日つきで整理します。
この事例の要点
- 2023年5月22日に、社内向け生成AI「LION AI Chat」を内製して国内従業員約5,000人に公開(ライオンの発表・2023年6月1日)
- 研究開発部門向けの「LINK Chat」で、研究情報の検索が1件5〜60分程度から30分の1以下に(JILPTフォーラムでの発表・2026年1月20日)。回答の根拠になった文書も表示する仕組み
- 2023年12月の発表では、同種のツールの検証で文書の取得時間が従来の約5分の1と説明(ライオンの発表・2023年12月8日)
- 2025年3月の労働組合アンケートで、「ほぼ毎日」14%・「週1〜2回」23%。定期的な利用者は4割に満たない(JILPTフォーラムでの発表)
- 2025年6月から、AIエージェント開発の人材研修を開始。2期に分けて実施し、各期の定員は約40人、手挙げ制(同発表)
どんな会社か
ライオンは、歯みがき・洗剤・ハンドソープなどの日用品を手がける消費財メーカーです。研究開発の蓄積が長く、実験データや技術文書が社内に大量にあります。
発表では、2022年末のChatGPT公開のころから生成AIに取り組み、2023年初めから取締役に「すべての業務がAI前提で考えてもいいのではないか」と言われてきたと説明されています(JILPTフォーラムでの発表)。
何が課題だったのか
公表資料から読み取れる課題は2つです。1つは社内に散らばった研究情報を、必要な人が早く引き出せないこと。もう1つは、ツールを配っても、使い続ける人が全員にはならないことです。
前者について、2023年12月の発表は、ベテランの知見や実験データを次の世代に引き継ぐ「知識伝承」を狙いとしていました。後者については、2025年3月のアンケートで定期的な利用者が4割に届かなかった結果を、発表者自身が課題として整理しています。
何をAI化したのか
| 領域 | 内容 | 公表時期 |
|---|---|---|
| 全社の社内チャット | 「LION AI Chat」を内製。資料のたたき台、社内外向けの文章づくり、専門用語をわかりやすい言葉に置き換える用途。社内環境からのみアクセスできる | 2023年5月22日に公開(発表は2023年6月1日) |
| 研究情報の検索 | 生成AIと検索を組み合わせた「知識伝承のAI化」ツール。自然な文章で質問すると社内の文書を探し、要約して返す。研究領域で試験運用し、将来は社内全体へ広げる計画 | 2023年12月8日に発表 |
| 研究情報検索「LINK Chat」 | 検索拡張生成(RAG)で研究情報を検索。1件5〜60分程度かかっていた検索が30分の1以下に。要約の根拠文書も表示 | 2026年1月20日の発表 |
| ローコード開発基盤 | Difyを導入し、現場の人がAIアプリを自作できるようにした | 同上 |
| 人材育成 | AIエージェント開発の研修(Dify活用のPBL形式)。2期に分けて実施(第1期2か月・第2期2.5か月)、定員は各期約40人 | 同上(2025年6月開始) |
なぜここまでできたのか|「配る」と「使い続けてもらう」を別の仕事として扱った

この事例の特徴は、成果の出た部門の話と、全社の定着の話を並べて語っていることです。研究開発部門では、検索という「量が多く、答えの正誤を確かめやすい」仕事にAIを当て、根拠文書を表示して確かめられる形にしました。一方、全社への定着については、ガイドラインの整備、ユーザーコミュニティの運営、説明会・ハンズオン、ポータルでの事例公開といった使い続けてもらうための活動を、導入と同時に続けてきたと説明されています(JILPTフォーラムでの発表)。
アンケート結果の読み解きも具体的です。発表者は、利用の壁を「認知・感情・行動」の3段階で整理し、とくに「興味の壁」と「学習の壁」への対策が必要としています。研修についても、完成度の高いアプリを作れる人に共通するのは「業務の棚卸しと課題の特定ができていること」だったと述べています。AIの技術より先に、自分の仕事を分解できるかどうかが効いている、という示唆です。
日本の中小企業が真似できる3点
① 最初の成果は「探す時間が長い仕事」で出す。 社内文書や過去の資料を探すのに時間がかかっている部署から始めると、効果が見えやすくなります。回答の根拠になった文書を一緒に出す設計にすると、使う側が確かめられます。
② 利用率を測って、自分で言う。 ライオンは、定期的な利用者が4割に届かないという数字を隠さず、次の対策の出発点にしています。配ったあとに「週に何回使われているか」を測ることが、定着の最初の一歩です。
③ 「業務の棚卸し」を先に教える。 研修で伸びた人の共通点が、業務を分解できていることでした。ツールの操作より先に、自分の仕事のどの手順がAI向きかを書き出す時間を作ると、現場の自作が進みやすくなります。
配ったAIが一部の人にしか使われていない、という悩みは規模を問わず起きます。使われ方の測り方や、現場の仕事に合わせた入れ方を一緒に考える選択肢として、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもあります。
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- 「30分の1以下」の測定条件は示されていません。何件を何人が測ったのか、検索の難しさをそろえたのかは発表から読み取れません。従来の5〜60分は「1件取得に5分〜60分程度」という幅のある数字で、導入後の時間も具体的には示されていません
- 2023年12月の「約5分の1」とは別の数字です。2023年12月は検証段階のツール、2026年1月は運用中の「LINK Chat」についての説明で、同じ測定の続きかどうかは書かれていません
- アンケートの対象と回答数は示されていません。2025年3月に労働組合が実施した調査で、「ほぼ毎日14%・週1〜2回23%」が従業員全体の割合なのか、回答者の割合なのかは発表から読み取れません
- 削減時間やコストの全社合計は公表されていません。示されているのは検索時間の短縮率と利用頻度で、業務時間やコストへの換算は出典にありません
- 出典は自社の発表者による説明が中心です。JILPTは公的機関ですが、フォーラムでの報告者はライオン社員で、第三者が数字を検証したものではありません。2023年の2本は自社発表(うち1本は配信サイト掲載)です
よくある質問
Q. ライオンは生成AIをどう使っていますか?
社内向けチャット「LION AI Chat」を2023年5月に約5,000人へ公開し、研究開発部門では研究情報を引ける「LINK Chat」、現場がAIアプリを作るためのローコード基盤、AIエージェント開発の研修が公表されています(ライオンの発表・2023年6月1日、2023年12月8日、JILPTフォーラムでの発表・2026年1月20日)。
Q. 利用率はどのくらいですか?
2025年3月の労働組合アンケートで、「ほぼ毎日」が14%、「週1〜2回」が23%、定期的な利用者は4割に届かないと発表されています。調査対象の範囲は示されていません。
Q. 中小企業でも社内検索にAIを使えますか?
社内の文書や議事録がデータとして集まっていれば、小さな範囲から試せます。まず1つの部署の資料に絞り、回答に根拠の文書を添える形にすると、誤りに気づきやすくなります。
出典
出典と、その読み方
- 公的機関2026-01-20報告1 ライオンの生成AIの導入と人材育成について(労働政策研究・研修機構 労使関係フォーラム)
公的機関の公表資料
- 自社発表2023-12-08生成AIと検索サービスを活用した「知識伝承のAI化」ツールの開発(ライオン)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2023-06-01Azure OpenAI Serviceを活用した対話型生成AIを国内従業員約5,000人に公開(ライオン・配信サイト掲載)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認