AIアシスタントとの対話が年約7億回、電話応対も1件1分近く短縮|バンク・オブ・アメリカの事例
公開 2026-09-24 / 約12分
2025年の1年間に、2,060万人の利用者がAIアシスタント「Erica」と対話した回数(自社発表2026年3月10日)
約7億回
出典:自社発表(2026-03-10時点)
- 地域
- 🇺🇸 米国(海外)
- 業種
- 金融(銀行)
- AI化した領域
- カスタマーサポートの自動化/コンタクトセンターのオペレーター支援/社内問い合わせ対応/商談準備の資料作成
- 出典の種別
- 自社発表
銀行の顧客対応は、ここまでAIに任せられるようになっています。米バンク・オブ・アメリカのAIアシスタント「Erica」は、2025年の1年間に2,060万人の利用者と約7億回対話し、2018年の提供開始からの累計は32億回を超えました(自社発表・2026年3月10日)。同じ仕組みは社員向けにも広がり、1.8万人超の顧客応対担当者が通話中にAIの支援を受けて、1件あたりの通話時間を1分近く短縮しています(自社発表・2026年7月21日)。顧客・社員・電話応対の3方向に1つのAIを広げていった経緯を、出典と発表日つきで整理します。
この事例の要点
- 顧客向けAIアシスタント「Erica」は、2025年の1年間に2,060万人の利用者と約7億回対話。2018年の提供開始からの累計対話回数は32億回超(自社発表・2026年3月10日)
- 2025年8月の発表では、利用者の98%超が必要な情報にたどり着いているとし、それがコールセンターの問い合わせ量を大きく減らしたと説明(自社発表・2025年8月20日)
- 顧客応対担当者向けの「EricaAssist」は1.8万人超が利用。生成AIが通話の用件を要約し、次の対応を提案する。1件あたりの平均通話時間を1分近く短縮(自社発表・2026年7月21日)
- 社員向けの「Erica for Employees」は社員の90%超が利用し、ITサービスデスクへの電話を50%(2025年4月の発表では「50%超」)削減
- 法人営業では、商談準備の資料の下書きをAIで自動化。年に数万時間を顧客対応へ振り向けられる余地があると説明(見込み・自社発表・2025年4月8日)
どんな会社か
バンク・オブ・アメリカは、米国を代表する大手銀行の1つです。2026年3月の発表文によれば、米国で約7,000万人の顧客を抱え、約3,600の支店と約5,900万人のデジタル認証済み利用者を持っています。2025年4月の発表時点で社員数は約21万3,000人でした。
技術投資の規模も大きく、2026年7月の発表では年140億ドルを技術に使い、そのうち40億ドル超をAIを含む新しい取り組みに充てているとしています。中小企業とは桁が違いますが、この事例の見どころは金額よりも「1つのAIを、顧客向け→社員向け→電話応対の支援へと順に広げた」進め方にあります。
何が課題だったのか
発表文は課題を正面から書いてはいませんが、施策の説明から読み取れるのは「定型の問い合わせに人手が取られ、込み入った相談に時間を使えない」という、多くのコールセンターに共通する課題です(ここは当社の読み取りです)。
2025年8月の発表は、Ericaが必要な情報を返せていることでコールセンターの問い合わせ量が大きく減り、専門スタッフがより複雑な相談に時間を使えるようになったと説明しています。社内でも同じで、パスワード再設定や端末の設定、給与・税務書類の場所といった社員からの問い合わせがITサービスデスクに集中していたことが、Erica for Employees の対象領域から読み取れます。
何をAI化したのか
同行は Erica の仕組みを1か所に閉じず、用途ごとに広げています。発表文に出てくるものを整理すると次のとおりです。
| 対象 | 何をしているか | 公表された数字(発表日) |
|---|---|---|
| 顧客(個人) | 残高の見通し、キャッシュバック特典、優遇プログラムの案内、投資の約50テーマの質問対応、来店予約の受付 | 2025年に2,060万人・約7億回/累計32億回超(2026-03-10)、利用者の98%超が必要な情報にたどり着く(2025-08-20) |
| 顧客(法人) | 取引・口座情報の確認を受け付けるチャット「CashPro Chat」 | 法人顧客の65%が利用、対話の40%超をEricaが処理(2025-08-20) |
| 電話応対の担当者 | 「EricaAssist」が通話の用件を要約し、関連情報を集め、次の対応を提案 | 1.8万人超が利用、平均通話時間を1件あたり1分近く短縮、提示までの時間は3秒未満(2026-07-21) |
| 社員(社内問い合わせ) | 「Erica for Employees」がパスワード再設定・端末設定・福利厚生・給与書類などに回答 | 社員の90%超が利用、ITサービスデスクへの電話を50%削減(2025-08-20) |
| 富裕層向け担当者 | 「ask MERRILL」「ask PRIVATE BANK」で情報を集めて顧客提案に使う | 2024年に2,300万回超の利用(2025-04-08) |
| 法人営業 | 商談準備の資料の下書きを自動化・標準化 | 年に数万時間を顧客対応へ振り向けられる余地(見込み・2025-04-08) |
| 研修 | 会話シミュレーターで顧客対応を練習し、その場でフィードバック | 2024年に100万回超の練習(2025-04-08) |
Erica の回答は、データサイエンティストが700超の回答パターンを用意し、提供開始から7万5,000回超の更新を重ねてきたと説明されています(2025-08-20)。
なぜここまでできたのか

1つ目の理由は、7年かけて同じAIを育て続けてきたことです。Erica の提供開始は2018年で、2025年8月の発表で同行のCTIO(最高技術・情報責任者)は「Ericaは長年、顧客から学び続けてきた。だからこそ今、AIを大規模に活用できる」と述べています。7万5,000回超の更新という数字は、一度作って終わりではなく、使われ方を見て直し続けた回数そのものです。
2つ目は、顧客向けで作った仕組みを社員向けに使い回したことです。2020年に社員向けの Erica for Employees、その後に富裕層向け担当者の ask MERRILL、電話応対の EricaAssist と、同じ基盤を横に展開しています。発表文も「AIの機能は、別の領域でも拡張・再利用できるように設計している」と明言しています。
3つ目は、人を置き換えるのではなく、人の横に置く設計です。EricaAssist は「人が判断し、AIはリアルタイムで情報を出す」位置づけで、発表文のFAQでも「AIは社員の判断と応対を支える。社員が顧客に丁寧な案内を届ける」と説明しています。顧客向けの Erica も、込み入った相談は来店予約へつなぎ、人の対応へ渡す導線を持っています。
日本の中小企業が真似できる3点
① まず「よく来る問い合わせ」だけをAIに答えさせる。 Erica は700超の決まった回答パターンから始まり、それを7年かけて磨いてきました。最初から何でも答えるAIを目指すのではなく、問い合わせの上位を占める定型の質問に絞ると、小さな会社でも始めやすくなります。
② 社内の問い合わせ窓口を先にAI化する。 ITサービスデスクへの電話が50%減った Erica for Employees は、顧客向けよりも失敗の影響が小さい社内から効果を出した例です。「パスワードの再設定はどうする?」「経費の書類はどこ?」といった社内の質問は、中小企業でも担当者の時間を確実に削っています。
③ 電話応対は「AIが答える」前に「担当者を助ける」から始める。 EricaAssist は顧客と直接話すのではなく、担当者の画面に用件の要約と次の対応を出す役割です。通話の要約や過去のやり取りの呼び出しから始めれば、応対品質を落とさずに1件あたりの時間を縮められます。
問い合わせ対応や商談準備のように「毎回同じ下調べをしている仕事」は、AIに任せる範囲を決めるところから始めると成果が見えやすくなります。自社のどの業務から手をつけるかを整理したいときは、外部の知見を借りる選択肢もあります。
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- 本記事の数字はすべて同行の自社発表(ニュースルーム)によるものです。第三者の監査を受けた数値ではなく、報道による独自の検証も今回は確認できていません
- 「約7億回」「32億回超」は対話の回数で、解決した件数ではありません。1人の利用者が同じ用件で何度もやり取りした場合も、それぞれ1回と数えている可能性があります(発表文に数え方の定義はありません)
- 「利用者の98%超が必要な情報にたどり着く」は、発表文に測定方法の説明がありません。また「コールセンターの問い合わせ量が大きく減った」という記述に、削減の件数や割合は示されていません
- ITサービスデスクへの電話の削減は、2025年4月の発表では「50%超」、同年8月の発表では「50%」と表記が異なります。本記事では新しい方の「50%」を基準にしています
- 「1件あたり1分近く短縮」は、元の通話時間や計測期間が示されていません。短縮率として何%にあたるかは、発表文からは計算できません
- 商談準備の「年に数万時間」は、実績ではなく見込み(振り向けられる余地)です。原文も「the opportunity for employees to reallocate tens of thousands of hours per year」という書き方です
- AI化による人員数やコストへの影響は、これらの発表では数字で示されていません。
- 同行の技術投資は年140億ドル規模で、中小企業とは前提が大きく異なります。規模ではなく進め方を参考にするのが適切です
よくある質問
Q. バンク・オブ・アメリカのAIアシスタント「Erica」はどれくらい使われていますか?
同行の発表(2026年3月10日)によれば、2025年の1年間に2,060万人の利用者が約7億回Ericaと対話し、2018年の提供開始からの累計は32億回超です。いずれも自社発表の数字で、回数は対話の回数(解決件数ではない)です。
Q. AIで電話応対の時間はどれくらい短くなったのですか?
顧客応対担当者向けの「EricaAssist」について、同行は1件あたりの平均通話時間を1分近く短縮したと発表しています(2026年7月21日・自社発表)。利用者は1.8万人超です。ただし元の通話時間や計測期間は示されていないため、短縮率は分かりません。
Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?
社内の問い合わせ窓口をAIで受けることです。同行の社員向けAI「Erica for Employees」は、社員の90%超が使い、ITサービスデスクへの電話を50%減らしました。パスワードの再設定や書類の場所など、毎回同じ質問に答えている業務は中小企業にもあり、顧客向けより失敗の影響が小さいため最初の一歩に向いています。
Q. AIが担当者の仕事を奪ったのですか?
発表文は、EricaAssist を「人の判断を支えるAI」と位置づけ、社員が顧客に案内を届ける設計だと説明しています。一方で、AI化による人員数やコストへの影響は、今回の発表では数字で示されていません。
Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?
すべて同行の自社発表で、第三者の監査を受けた数値ではありません。複数の発表で同じ指標(対話回数・利用者数)を継続して公表している点は追いやすい材料ですが、「98%超が必要な情報にたどり着く」のように測定方法の説明がない数字もあります。実績と見込み(商談準備の「年に数万時間」など)を分けて読むことが大切です。
出典
- BofA AI and Digital Innovations Fuel 30 Billion Client Interactions(Bank of America Newsroom・2026年3月10日)
- A Decade of AI Innovation: BofA's Virtual Assistant Erica Surpasses 3 Billion Client Interactions(Bank of America Newsroom・2025年8月20日)
- Bank of America Enhances EricaAssist with Generative AI to Help Employees Resolve Client Needs Faster(Bank of America Newsroom・2026年7月21日)
- AI Adoption by BofA's Global Workforce Improves Productivity, Client Service(Bank of America Newsroom・2025年4月8日)
出典と、その読み方
- 自社発表2026-03-10BofA AI and Digital Innovations Fuel 30 Billion Client Interactions(Bank of America Newsroom)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2025-08-20A Decade of AI Innovation: BofA's Virtual Assistant Erica Surpasses 3 Billion Client Interactions(Bank of America Newsroom)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2026-07-21Bank of America Enhances EricaAssist with Generative AI to Help Employees Resolve Client Needs Faster(Bank of America Newsroom)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2025-04-08AI Adoption by BofA's Global Workforce Improves Productivity, Client Service(Bank of America Newsroom)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
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