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最長600ページの引受ガイドを「数秒」で検索、削減は135営業日分|アリアンツ(Allianz)の事例

公開 2026-09-22 / 約9

引受ガイダンス検索にかかっていた時間をAIツール「BRIAN」で削減した累計規模(2025年1月ロールアウト後・自社発表2025年9月11日)

135営業日分

出典:自社発表2025-09-11時点)

地域
🌐 英国(海外)
業種
金融(損害保険・企業向け引受)
AI化した領域
保険引受業務の情報検索/社内ガイドライン検索の自動化/バックオフィスの判断支援
出典の種別
自社発表

保険の引受業務は、専門知識と経験がものを言う仕事です。だからこそ、アリアンツ(Allianz)の英国法人がここまで進めているのが目を引きます。企業保険の引受担当者が参照する最長で600ページに達するガイドライン文書を検索する手間を減らすため、生成AIツール「BRIAN」を開発。2025年1月のロールアウト以降、13,000件超の質問に対応し、推定65,000分・135営業日分の時間を削減したと公表しました。担当者は「週2時間かかっていた検索が数秒になった」とコメントしています。出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • アリアンツ英国法人は、企業向け保険(Property and Casualty・Specialty分野)の引受担当者向けに、生成AIツール「BRIAN」(Underwriter Guidance Tool)を開発
  • 背景にあるのは、規制環境の複雑化やサイバーリスク・気候変動といった新興リスクの増加。引受担当者は最長で600ページに達する指導文書を参照する必要があり、回答が遅れる原因になっていた
  • パイロット段階では190人のユーザーから約3,000件の質問でテストを実施
  • 2025年1月にロールアウト以降、13,000件超の質問に対応し、推定65,000分(135営業日分)の時間削減になったと公表(自社発表・2025年9月11日)
  • Transformation Business Owner(変革担当責任者)のBenjamin Blackie氏は「引受担当者は通常、社内文書から情報を探すのに週2時間ほど費やしている。BRIANならわずか数秒」とコメント
  • 現在はアリアンツUKの各commercial officeにいるすべてのProperty・Liability担当引受者が利用。年末までに全引受担当者への拡大を計画(目標値)

どんな会社か

Allianz Insurance plcは、ドイツのアリアンツ・グループの英国法人です。発表文によれば、アリアンツ・グループ全体では約70カ国で約1億2,500万人の個人・法人顧客を抱える大手保険・資産運用グループの一角を占めています。

この事例が扱っているのは、個人向けの保険商品ではなく、企業向け(Property and Casualty・Specialty分野)の引受業務です。引受とは、保険契約を引き受けるかどうか、どんな条件で引き受けるかを判断する専門業務で、規定・ガイドラインへの正確な準拠が求められます。

何が課題だったのか

発表文が挙げている課題は、情報量の増加に対する検索の遅さです。「Technical excellence is a key part of the Allianz UK strategy(技術的な正確性はアリアンツ英国の戦略の要)」としたうえで、規制環境の複雑化、サイバーリスク、気候変動といった新興リスクへの対応が引受業務を難しくしていると説明しています。

その結果、引受担当者は判断のたびに最長で600ページに達する指導文書を参照する必要があり、これが回答の遅れにつながっていました。Benjamin Blackie氏のコメントによれば、情報を探すだけで週あたり約2時間が費やされていたといいます。

何をAI化したのか

対象は、引受判断の根拠になる社内ガイドライン文書の検索です。

  • BRIANは、アップロードされた指導文書だけを根拠に、引受担当者からの具体的な質問に簡潔で正確な回答を返す設計
  • 回答には、根拠となったガイドライン文書の該当箇所への直接リンクが付与され、担当者が必要に応じて原文を確認できる(検証可能性を確保する設計)
  • 名前の「BRIAN」は、Benjamin Blackie氏がアリアンツでのキャリア初期に指導を受けた博識な同僚にちなんで名付けられた
  • 導入は段階的で、パイロット(190人・約3,000件の質問)→ 全国のcommercial officesにおけるProperty・Liability担当への展開 → 年末までに全引受担当者への拡大、という順序

なぜここまでできたのか

アリアンツ英国の公表値。最長600ページの引受ガイドライン文書検索にAIツール「BRIAN」を導入。パイロットは190人・約3,000件の質問、2025年1月ロールアウト後は13,000件超の質問に対応し、推定65,000分(135営業日分)を削減。引受担当者の検索時間は週2時間から数秒へ
アリアンツ英国の公表値。最長600ページの引受ガイドライン文書検索にAIツール「BRIAN」を導入。パイロットは190人・約3,000件の質問、2025年1月ロールアウト後は13,000件超の質問に対応し、推定65,000分(135営業日分)を削減。引受担当者の検索時間は週2時間から数秒へ

この事例で押さえておきたいのは、AIに「判断」ではなく「検索」をさせたという設計です。引受の可否そのものはBRIANが決めるのではなく、あくまで担当者が判断するための根拠資料を素早く提示する役割に限定されています。だからこそ、回答の根拠となった文書箇所へのリンクを必ず表示する仕組みが組み込まれています。生成AIが答えを作って終わりではなく、担当者が原文で裏取りできる状態を保つことが、専門判断が必要な業務でAIを使う際の条件になっている、と読めます。

もう1つの特徴は、パイロットの規模を明示していることです。190人・約3,000件の質問というパイロット規模から、13,000件超という本番の利用規模へ、段階を追って拡大したプロセスが公表されています。これは、東京海上日動が「1件あたり◯分×◯件」で検算可能にしたのと同じ発想で、検証の過程そのものを開示するという型です。

日本の中小企業が真似できる3点

① AIに「判断」ではなく「検索」を任せる。 引受のような専門判断が必要な業務でも、「規定文書のどこに書いてあるか」を探す部分ならAIに任せやすくなります。判断は人に残し、検索だけを高速化する切り分けが、専門業務でのAI活用の入り口になります。

② 回答の根拠にリンクを付ける。 BRIANが必ず参照元の文書箇所を示す設計は、AIの回答を鵜呑みにしない仕組みそのものです。社内マニュアルや規定をAI検索の対象にするときは、原文へすぐ戻れる導線を最初から組み込むと安心して使えます。

③ 小さく試して、規模を公開しながら広げる。 190人・約3,000件というパイロットから始め、13,000件超まで拡大した経過をそのまま公表しています。「まず一部門で試し、規模を明示しながら広げる」進め方は、社内の理解を得るうえでも有効です。

規定・マニュアルが多い業務ほど、検索の自動化から着手すると成果が見えやすくなります。営業・マーケの現場でも同じ発想(判断は人に残し、検索・下調べをAIに任せる)が使えるので、設計に迷ったときは外部の知見を借りる選択肢も検討いただけます。

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注意して読むべき点

  • 「135営業日分」「65,000分」は同社の推定値(estimated)です。発表文の原文は「an estimated 65,000 minutes or 135 working days saved」であり、監査された数値ではありません
  • 「週2時間」という検索時間は、Benjamin Blackie氏のコメントで示された目安です。発表文の原文は「Typically, our underwriters spend around two hours a week(通常、当社の引受担当者は週に約2時間を費やす)」であり、統計的に測定された平均値かどうかは確認できません
  • 「600ページ」は文書の分量の上限的な目安です。発表文の原文は「which can be as lengthy as 600 pages(600ページに達することもある)」であり、すべてのガイドライン文書が常に600ページあるという意味ではありません
  • 対象は現時点で「アリアンツUKの各commercial officeにいるすべてのProperty・Liability担当引受者」です。発表文は「年末までに全引受担当者へ拡大予定」としており、本記事執筆時点(2026年9月)でその後の拡大状況を確認できる続報は見つかっていません
  • コスト削減額や人員への影響は公表されていません。発表文が述べているのは検索時間の削減のみで、金額換算や人員配置の変化への言及はありません
  • 本記事の出典は自社発表(Allianz Insurance plc公式サイト)1本のみです。第三者による報道・検証記事は確認できていないため、他の事例記事と比べて出典の種別に厚みがない点に留意してください
  • BRIANの回答は「アップロードされた文書のみを根拠にする」設計とされていますが、その精度(誤回答率など)についての定量的な数字は公表されていません

よくある質問

Q. BRIANは保険の引受判断そのものをAIが行っているのですか?

いいえ。発表文で説明されているのは、引受担当者からの質問に対してガイドライン文書にもとづく回答案と参照元を示す役割です。最終的な引受判断は、これまで通り担当者が行います。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

社内マニュアルや規定文書の検索から始めることです。BRIANは「判断」ではなく「検索」にAIを絞って使っています。専門知識が求められる業務でも、規定を探す作業だけをAIに任せる切り分けなら、中小企業でも導入のハードルが下がります。

Q. 「135営業日分」という数字はどこまで信用できますか?

自社発表かつ「推定(estimated)」と明記されている数字です。監査された財務指標ではなく、質問対応にかかっていたであろう時間の見積もりです。ただし、パイロット規模(190人・約3,000件)から本番規模(13,000件超)までの実際の利用件数は開示されており、検証の土台となる情報は比較的厚めに公開されています。

Q. なぜAIの回答に「参照元へのリンク」を必ず付けているのですか?

発表文によれば、BRIANは根拠となったガイドライン文書の該当箇所へのリンクを表示し、担当者が「必要に応じて深掘りできる」設計になっています。保険の引受のように誤りが許されない判断業務では、AIの回答をそのまま信じるのではなく、原文まで確認できる状態を保つことが導入の前提条件になっていると読めます。

Q. 全社的な展開はすでに完了しているのですか?

いいえ。発表時点(2025年9月)では、対象はアリアンツUKの各commercial officeにいるすべてのProperty・Liability担当引受者にとどまっており、「年末までに全引受担当者へ拡大予定」という計画段階の記述です。全引受担当者への展開が完了したかどうかを確認できる続報は、本記事執筆時点では見つかっていません。

出典

出典と、その読み方

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