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アドバイザーチームの98%が使う社内AI、顧客面談のメモと返信文まで任せる|モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)の事例

公開 2026-10-05 / 約12分

社内AIチャット「AI @ Morgan Stanley Assistant」を日常的に使うアドバイザーチームの割合(OpenAIの導入事例記事・2024年12月4日。同社の分析責任者は2025年10月に「アドバイザーの98%が積極的に使っている」と説明)

98%

出典:ベンダー事例(2024-12-04時点)

地域
🇺🇸 アメリカ(海外)
業種
金融(証券・ウェルスマネジメント)
AI化した領域
営業支援/社内ナレッジ検索/議事録・面談メモ/顧客フォロー/CRM入力
出典の種別
自社発表/報道/ベンダー事例

顧客と向き合う営業職の仕事のうち、「調べる」と「記録する」はAIが担う時代に入っています。米モルガン・スタンレーのウェルスマネジメント部門は、OpenAIのGPT-4を使った社内AIチャット「AI @ Morgan Stanley Assistant」を、アドバイザー(顧客を担当する営業職)のチームの98%超が日常的に使う状態まで定着させました(OpenAIの導入事例記事・2024年12月4日)。社内の知識で答えられる質問は約7,000問から10万件の文書全体へ広がり、顧客との面談は「Debrief(デブリーフ)」というAIが議事メモとフォローの返信文の下書きまで作ります。Debriefは約15,000人のアドバイザーへ展開する計画が報じられています(CNBC・2024年6月26日)。出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • 社内AIチャット「AI @ Morgan Stanley Assistant」を使うアドバイザーチームは98%超。OpenAIの導入事例記事(2024年12月4日)が「日常的に使っている」と紹介し、同社のウェルスマネジメント部門の分析責任者も2025年10月に「アドバイザーの98%が積極的に使っており、生産性が上がった」と説明している(CDO Magazineの報道・2025年10月10日)
  • 答えられる質問は約7,000問から、10万件の文書全体を対象にした質問へ広がった。文書へのアクセスは20%から80%に上がった(OpenAIの導入事例記事・2024年12月4日。いずれも同社側の説明で、20%と80%の分母は説明されていない)
  • 顧客との面談をAIが記録する「Debrief」は、顧客の同意を得た面談の議事メモ、行動項目、フォローの返信文の下書きを自動で作り、メモはCRM(顧客管理システム)に保存される(OpenAIの導入事例記事・2024年12月4日)。同社は約15,000人のアドバイザーへ展開する計画を示し、同部門は年間約100万回のZoom面談を行っている(CNBC・2024年6月26日)
  • 試験導入に参加したアドバイザー1人は、Debriefで面談1回あたり30分の作業が省けると話した(CNBC・2024年6月26日。1人の発言で、全体の平均ではない)
  • 同社のウェルスマネジメント部門長は、個々のツールと機能の数が3,500超に達したと説明している(WealthManagement.comの報道・2026年2月10日)

どんな会社か

モルガン・スタンレーは、ニューヨークに本社を置く米国の大手金融グループです。そのウェルスマネジメント部門は、富裕層の顧客に資産運用や相続の相談を担当アドバイザーが提案する、いわば「高額商材の対面営業」の組織で、顧客の預かり資産は5.5兆ドル(2024年3月時点・CNBCが同社の説明として報道)。目標は10兆ドルとしています。アドバイザーは約15,000人規模です(CNBC・2024年6月26日)。

提案する商材(運用商品やレポート)が膨大で、顧客ごとに状況が違うという点は、商談前の準備や商談後の記録に手間がかかる営業部門の悩みと同じです。

何が課題だったのか

公表資料から読み取れる課題は2つです。1つは、社内の知識を営業の現場が引き出せないこと。同社はもともと、運用戦略や市場分析などの膨大な社内調査資料を持っていますが、アドバイザーが顧客に必要な情報を探すのに時間がかかっていました。2023年3月の発表で、同社は目的を「知見を数秒でアドバイザーの手に届け、効率と規模を高めること」と説明しています。

もう1つは、面談後の記録と連絡に時間を取られることです。CNBCによれば、アドバイザーは面談後にメモとアクションプランを作るのが通例で、同社は「アドバイザーが最も力を発揮するのは顧客と向き合っているとき」という認識でした。OpenAIの記事は、取り組みの当初の目標として「文書を探す時間の短縮」「調査レポートの要約といった繰り返し作業の自動化」「顧客に合わせた示唆の提供」の3つを挙げています。

何をAI化したのか

AIに任せたのは、「社内の知識を引く」「面談を記録する」「フォローの下書きを作る」という営業の周辺作業です。

領域内容公表時期
社内AIチャット社内の調査資料だけを根拠に質問へ答える。回答には元の文書へのリンクが付く設計2023年3月に発表。以降、全アドバイザーに展開(同社の2024年10月の発表は「過去1年で展開」と説明)
面談の記録(Debrief)顧客の同意を得てZoom面談を録音し、議事メモ、行動項目、フォローの返信文の下書きを作る。メモはCRMに自動で保存される。アドバイザーが確認・修正してから送る2024年6〜7月に展開予定と報道
調査資料の検索(AskResearchGPT)投資銀行、セールス&トレーディング、リサーチ部門の担当者が、年間7万件超の自社レポートから、データ検索や要約を行う2024年10月23日に発表
定型業務の自動化事務担当者の定型作業をAIエージェントで自動化し、顧客対応に回す2026年2月の報道(部門長の発言)

営業に近いところでは、顧客への連絡の質とスピードに効果が出ているとされます。OpenAIの記事で、同社のAI責任者の一人は「以前は数日かかっていたフォローが数時間で出せるようになった」というアドバイザーの声を紹介しています。

なぜここまでできたのか|導入前に「正しく答えるか」を何度も試験した

モルガン・スタンレーの公表値。AI @ Morgan Stanley Assistantを日常的に使うアドバイザーチーム 98%超(OpenAI導入事例・2024年12月4日)/答えられる質問 約7,000問から10万件の文書全体へ(同)/Debriefによる面談1回あたりの省力化 30分(試験導入のアドバイザー1人の発言・CNBC・2024年6月26日)
モルガン・スタンレーの公表値。AI @ Morgan Stanley Assistantを日常的に使うアドバイザーチーム 98%超(OpenAI導入事例・2024年12月4日)/答えられる質問 約7,000問から10万件の文書全体へ(同)/Debriefによる面談1回あたりの省力化 30分(試験導入のアドバイザー1人の発言・CNBC・2024年6月26日)

この事例で目立つのは、AIを「配って終わり」にせず、導入前に評価(eval)を作って品質を試験した運用の型です。OpenAIの記事によれば、同社はAIの要約をアドバイザーとプロンプトエンジニアが採点する試験や、多言語の顧客に向けた翻訳の試験を重ね、本番に出す前に1つずつ精度を確かめていました。Debriefでも、会議の種類ごとの試験データを用意し、重要な行動項目を漏らさず、誤りを混ぜないかを確かめたとされています。さらに、毎日、サンプル質問を流して弱点を探す回帰テストを走らせていました。

もう1つは、AIを人の判断の前に置いた点です。Debriefの出力はアドバイザーが確認して直してから送ります。顧客の同意も面談ごとに取ります。「間違えたら現場が困る」という営業の不安を、運用の側で先に解消していたことが、98%という利用率につながったと読めます(ここは推測)。

日本の中小企業が真似できる3点

① 「調べる」と「記録する」から任せる。 モルガン・スタンレーが最初にAIへ渡したのは、社内資料の検索と面談メモでした。売り込み文面の自動作成より先に、営業が毎日使っている時間の長い作業から外しています。自社でも、過去提案書の検索と、商談メモの下書きから始めると、現場の抵抗が少なく成果が見えます。

② 本番前に「よくある質問と正解」を作って試す。 同社は、現場の質問と正解例で出力を試験してから展開しました。中小企業でも、過去の問い合わせ20〜30件と正しい回答を用意し、AIの回答と並べて採点するだけで、導入後の「使えない」を減らせます。

③ 下書きまでをAIに、送るのは人に。 Debriefは返信文の下書きまでで、送信の前に人が確認します。この線引きは、少人数の会社でも守りやすく、顧客の信頼を守りながら速さだけを取れる方法です。

何から任せ、どこまで人が確認するかの線引きに迷ったときは、外部の知見を借りる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つです。

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注意して読むべき点

  • 98%の読み方に注意が必要です。OpenAIの記事の表現は「アドバイザーチームの98%超が日常的に使う」で、個人の利用率とは限りません。「日常的に使う」の頻度の定義も示されていません。2025年10月の同社分析責任者の発言(「アドバイザーの98%が積極的に使う」)も、同じ98%を別の言い方で述べたもので、独立した計測ではありません
  • 出典の多くは、同社またはパートナー(OpenAI)が発表したものです。第三者が利用率や効果を検証した資料は確認できませんでした。OpenAIの記事はベンダーによる導入事例にあたります
  • 「20%から80%」は、何の割合かの説明がありません。OpenAIの記事は「文書へのアクセス」と書くだけで、測定期間や母数は示していません。また、「7,000問から10万件の文書」は、答えられる範囲が広がったという同社側の説明で、回答の正答率を示す数字ではありません
  • Debriefの「30分」は、試験導入に参加したアドバイザー1人の発言です。CNBCも「見積もりは分かれる」と書いており、全社の平均削減時間は公表されていません。また、15,000人への展開は、記事の時点では「予定」でした(2024年6月)
  • 効果の全体像は未公表です。同社の責任者は2024年6月の取材で、AIが生産性を高めたかを確かめるには少なくとも1年かかると話しており、その後の売上や預かり資産の増加へのAIの寄与を示す数字は、確認した出典には見当たりませんでした。「3,500超のツール」(2026年2月)も数の紹介であり、効果の数字ではありません
  • 顧客の同意と人の確認が前提です。Debriefは顧客が毎回の録音に同意した面談に限られ、出力はアドバイザーが確認します。日本で同じ運用をする場合は、個人情報や録音の同意の扱いを別途確認してください

よくある質問

Q. モルガン・スタンレーはAIで営業のどんな作業を置き換えたのですか?

社内資料を検索して質問に答える作業と、顧客面談の記録、フォローの返信文の下書きです。社内AIチャット「AI @ Morgan Stanley Assistant」は2023年3月に発表され、Debriefは2024年6月の報道時点で約15,000人のアドバイザーへの展開予定でした。顧客への提案や判断はアドバイザーが担います。

Q. 利用率98%は、どのくらい信頼できる数字ですか?

OpenAIの導入事例記事(2024年12月4日)と、同社分析責任者の発言(2025年10月10日の報道)で一致していますが、どちらも同社側の説明です。「チーム単位」か「個人単位」か、「日常的に」の頻度は明示されていないため、方向感を示す数字として読むのが安全です。

Q. Debriefで、どれだけ時間が減ったのですか?

試験導入に参加したアドバイザー1人は、面談1回あたり30分の作業が省けると話しました(CNBC・2024年6月26日)。全体の平均削減時間は、確認した出典には載っていません。

Q. 中小企業でも同じことはできますか?

規模は違いますが、順番は真似できます。社内資料の検索と商談メモの下書きから始め、導入前に過去の問い合わせと正解例で出力を試験し、顧客に送る文面は必ず人が確認する、という3点は少人数の会社でも取り組めます。

Q. 顧客との面談をAIで記録して問題はありませんか?

モルガン・スタンレーは、顧客が面談ごとに録音へ同意することを条件にしていると報道されています(CNBC・2024年6月26日)。日本では個人情報保護や録音の同意の扱いを自社の規程と照らして確認する必要があります。

出典

出典と、その読み方

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