AIの価値は2025年に約5,000万ポンド、2026年は1億ポンド超を見込む|ロイズ銀行グループ(Lloyds Banking Group)の事例
公開 2026-10-07 / 約12分
2025年に生成AIが生み出したと同社が公表した価値の額(同社算出・内訳は非公開。2026年は1億ポンド超を見込む。2026年1月29日の決算発表)
約5,000万ポンド
出典:決算・年次報告(2026-07-30時点)
- 地域
- 🌐 英国(海外)
- 業種
- 銀行・保険
- AI化した領域
- カスタマーサポート/ナレッジ検索/社内問い合わせ対応/対話型AIアシスタント/不正対応
- 出典の種別
- 決算・年次報告/自社発表/報道
顧客対応のAI化は、「何件導入したか」ではなく「いくらの価値を生んだか」を決算の場で語る段階に入っています。英国最大の金融グループであるロイズ銀行グループは2026年1月29日、生成AIが2025年に約5,000万ポンドの価値を生んだと公表しました。2026年は1億ポンド超を見込んでいます。2025年だけで導入した生成AIの仕組みは50以上。顧客に電話で答える担当者の検索AI、人事の問い合わせに答えるAI、そしてアプリ内で顧客自身と対話するAIまで、どこまで任せたのかを出典と発表日つきで整理します。
この事例の要点
- 生成AIが2025年に生んだ価値は約5,000万ポンド、2026年は1億ポンド超を見込む。2025年に導入した生成AIの仕組みは50以上(2026年1月29日の決算発表。価値の額は同社算出で、内訳は非公開)
- 顧客対応の担当者向けナレッジ検索AI「Athena(アテナ)」は、約2万人が使い、顧客の問い合わせに答えるための検索時間を平均66%短縮した(2026年1月29日の発表)。2025年7月の報道では、1回の検索が59秒から約20秒になっている
- 人事の問い合わせに答えるAIアシスタントは、約90%を初回の対応で正しく解決している(2026年1月29日の発表)
- 顧客向けのAI金融アシスタントは、2025年11月時点で、アプリを使う2,100万人超へ2026年初めから提供する予定とされていた。2026年7月30日の中間決算では、対話型の家計管理機能「Explore Your Spending」の展開開始を報告した
- 2030年までの新戦略「Accelerate 2030」で約20億ポンドの総コスト削減を見込み、デジタルとAIによる「生産性の大幅な引き上げ(productivity step-change)」を柱の1つに置き、顧客対応の自動化(agentic servicing)の拡大を掲げた(2026年7月30日の中間決算。目標値)
どんな会社か
ロイズ銀行グループは、個人向け銀行、法人向け銀行、保険・年金・資産運用(スコティッシュ・ウィドウズなど)を手がける、英国最大の金融サービス会社です(2026年7月30日の中間決算)。顧客は2,800万人(2026年1月・同年7月の発表)。約2,200万人がグループのモバイルアプリを使い、国内最大のデジタルバンクだとしています(2026年7月30日の中間決算)。
AI体制は、技術・データの専門人材を約1万1,000人採用して整え、外部機関のAI指数(Evident AI Index)の英国国内銀行で首位だと説明しています(2026年7月30日の中間決算)。
何が課題だったのか
公表資料から読み取れる課題は、顧客対応の窓口に答えがバラバラに存在することです。Athenaが検索する社内の知識記事は約1万3,000本あり(2025年7月の報道)、電話や店頭で顧客を待たせずに正しい答えへたどり着くには、担当者が記事を探し当てる時間が壁になります。同社は月に約200万人の顧客を電話・オンラインで支援しているとされ(同報道)、1回あたりの数十秒の差が積み重なる規模です。
もう1つは、顧客自身が汎用のAIにお金の相談をし始めたことです。同社の調査では、英国の成人の56%が過去1年にお金の管理でAIを使った一方、80%が情報の不正確さや古さを心配し、69%が個人に合った助言の不足を懸念していました(2025年11月・同社の消費者デジタル指数の報道)。自社アプリの中に、銀行のデータに基づく安全なAIを置く動機になっていると読めます(推測)。
何をAI化したのか
AIに任せた範囲は、担当者の調べもの、社内の問い合わせ、顧客との対話、不正対応の支援の4つです。
- 担当者向けナレッジ検索(Athena) — 顧客の問い合わせに答えるための社内記事を、AIが横断して探す。2025年初めから7月までに約2万1,000人が使い、検索は210万回、年末の目標は4,000万回だった(2025年7月の報道。目標値)。電話窓口の担当者の検索時間を約4,000時間節約できる見込みとされた(同報道。見込み値・期間の明示なし)。その後、約2万人が使い、検索時間は平均66%短縮されたと発表された(2026年1月29日)
- 人事の問い合わせAI — 社員からの人事に関する質問へ答え、初回で約90%を正しく解決している(2026年1月29日)
- 顧客向けのAI金融アシスタント — アプリ内で「今月の支出は」と聞くと答える対話型の支出分析と、貯蓄・投資の判断を助ける機能から始め、住宅ローン、自動車ローン、保険へ広げる計画(2025年11月・2026年1月)。会話の履歴を覚え、必要なときは人の担当者へつなぐ設計とされた(2025年11月の報道)。2026年7月30日の中間決算では、「Explore Your Spending」を英国の銀行で初めての大規模な対話型の家計管理体験として展開を始めたと報告している
- 不正対応の支援 — 顧客とのやり取りの最中に、担当者へリアルタイムで判断材料を示すAIの仕組みを新たに作った(2026年7月30日の中間決算)
- 今後の方向 — 常時稼働・音声対応のAIによる顧客対応と運用の再設計を掲げている(同決算)
なぜここまでできたのか|AIを「担当者の道具」から入れ、価値の額で語った

この事例の特徴は、AIを最初から顧客の前に出さず、まず顧客に答える担当者の道具として入れたことです。Athenaは担当者が使い、検索時間という測りやすい指標で効果を示せます。人事の問い合わせAIも社内向けです。Athenaは顧客対応の担当者自身が開発と精度の確認に加わり、知識記事の品質を直すフィードバックの流れも作られました(2025年7月の報道)。担当者側で精度と使い勝手を確かめてから、顧客向けのアシスタントへ進む順番です。
もう1つは、価値の額を年次の数字として約束している点です。2025年に約5,000万ポンド、2026年に1億ポンド超という形で、導入件数ではなく価値で目標を置いています。2025年7月の時点で、同社はAIが2025年に「少なくとも5,000万ポンドの売上増加と生産性向上」をもたらすと見込んでおり(同月の報道)、その見込みが半年後の決算で約5,000万ポンドの実績として報告されました。見込みを先に言い、決算で答え合わせをする運用が、AIの施策を経営の数字に結びつけています。
日本の中小企業が真似できる3点
① 顧客対応は、顧客の前に出す前に「担当者の道具」から入れる。 ロイズはまず担当者の検索と社内問い合わせから始めました。中小企業でも、過去の回答や商品資料をAIに検索させ、営業や問い合わせ対応の担当者が答えを探す時間を減らすことから始められます。
② 効果は「1回あたりの時間」のような小さな単位で測る。 59秒が20秒になる、という単位の指標なら、少人数の会社でも数週間で確かめられます。月間の件数をかければ、年間の削減時間も見積もれます。
③ 見込みを先に言葉にし、次の期に実績で答え合わせをする。 見込みと実績を同じ指標で並べると、続ける施策とやめる施策の判断がぶれません。
担当者の調べもの時間から減らし、効果を小さな単位で測り、実績と見込みを並べて広げることが、AI化を「導入した」で終わらせない分かれ目です。どこから手を付け、何で測るかの整理に迷ったときは、外部の知見を借りる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つです。
ai-remote-worker.com AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援 営業・マーケティングのAI化を、月額定額または成果確認後払いで。実装まで踏み込む伴走型の支援です。注意して読むべき点
- 約5,000万ポンドは同社が算出した数字で、内訳は公表されていません。生成AIの価値としか示されておらず、売上の増加と生産性の向上の割合、AIがなかった場合との比較の置き方、第三者による検証は確認できませんでした
- 2026年の1億ポンド超は見込みです。2026年7月30日の中間決算でも「2026年に1億ポンド超の効果を見込む」と再掲されており、2026年の実績はまだ開示されていません
- 66%短縮や約90%は同社の発表値です。Athenaの66%は「顧客の問い合わせに答えるための検索時間の平均」、人事AIの約90%は「初回で正しく解決した割合」とされていますが、測定期間や対象人数、正しさの判定方法は公表資料からは確認できませんでした。利用者数は2025年7月の報道で約2万1,000人、2026年1月の発表で約2万人と表記が異なります。時点の違いによる表記の差です
- Athenaの4,000万回と4,000時間は目標・見込みです。2025年7月の報道に出る年末目標と電話窓口の節約見込みで、最終の実績は確認できていません
- 顧客向けアシスタントの効果の数字はまだありません。2026年7月の中間決算は「Explore Your Spending」の展開を始めたと報告していますが、利用率や顧客満足度、コストへの効果は示していません。1月に予告した「AI金融アシスタント」の全顧客への展開との関係は、資料上は明示されていません
- この記事はロイズ銀行グループの自社発表と決算開示に、報道を組み合わせています。自社の発表ページは自動取得ができない状態だったため、同じ内容を報じた報道と検索結果で存在を確認しました。Athenaの詳しい数字は2025年7月の報道が中心で、一次資料での再確認はできていません。ロイズのソフトウェア開発向けAI(GitHub Copilotなど)の数字は、この記事の主題から外して扱っていません
よくある質問
Q. ロイズ銀行グループは生成AIでどのくらいの価値を出しているのですか?
2026年1月29日の決算発表で、生成AIが2025年に約5,000万ポンドの価値を生み、2026年は1億ポンド超を見込むと公表しました。いずれも同社が算出した数字で、内訳や算出方法の詳細は公表されていません。2026年7月30日の中間決算でも、2026年に1億ポンド超の効果を見込むと再掲しています。
Q. 顧客対応のどこにAIを使っているのですか?
担当者向けのナレッジ検索AI「Athena」が中心です。顧客の問い合わせに答えるための社内記事(約1万3,000本)を探す時間を、平均66%短縮したと発表されました。顧客向けには、アプリ内の対話型AIアシスタントを展開し始めており、2026年7月の中間決算で「Explore Your Spending」の展開開始を報告しています。
Q. 66%という短縮は、どのくらいの時間の差ですか?
2025年7月の報道では、1回の検索が59秒から約20秒になったとされています。電話窓口の担当者では、約4,000時間の節約になる見込みと伝えられました(期間は明示されていません)。いずれも同社の発表値で、見込みを含みます。
Q. 中小企業でもこの事例を真似できますか?
規模は違いますが、考え方は流用できます。過去の回答や資料をAIに検索させて担当者の調べもの時間を減らすこと、効果を1回あたりの時間で測ること、見込みを先に決めて次の期に実績と比べること、の3点は少人数の会社でも取り組めます。
Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?
決算発表と自社発表で公表された数字ですが、価値の額は同社算出で内訳は非公開、検索時間や正答率は測定条件の詳細が確認できません。方向感を示す数字として読み、そのまま自社の効果の見込みに当てはめないのが安全です。
出典
- 2026 Half-Year Results(Lloyds Banking Group・FCA提出の決算開示・2026年7月30日)
- Lloyds Banking Group expects over £100 million in value from next-generation AI in 2026(ロイズ銀行グループ・2026年1月29日)
- Lloyds Banking Group targets £100m AI value in 2026 after £50m gain(FStech・2026年1月29日)
- Lloyds Bank accelerates digital transformation with AI knowledge hub(FStech・2025年7月15日)
- Lloyds unveils UK's first AI financial assistant(Fintech Global・2025年11月6日)
出典と、その読み方
- 決算・年次報告2026-07-302026 Half-Year Results(Lloyds Banking Group・FCA提出の決算開示)
決算・IRの開示資料(監査済みの数値とは限らない)
- 自社発表2026-01-29Lloyds Banking Group expects over £100 million in value from next-generation AI in 2026(ロイズ銀行グループ)
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 報道2026-01-29Lloyds Banking Group targets £100m AI value in 2026 after £50m gain(FStech)
第三者による取材
- 報道2025-07-15Lloyds Bank accelerates digital transformation with AI knowledge hub(FStech)
第三者による取材
- 報道2025-11-06Lloyds unveils UK's first AI financial assistant(Fintech Global)
第三者による取材