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グループのAI利用率は70%超、本社では業務の1割超をAIが代替|キリンホールディングスの事例

公開 2026-11-03 / 約10分

2025年のキリングループ全体の個人レベルのAI利用率(キリンホールディングスの発表・2026年4月13日。同じ発表で、本社は利用率100%に近い水準、AIによる業務代替率は10%超と説明)

70%超

出典:自社発表(2026-04-13時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
食品・飲料・医薬(酒類、飲料、ヘルスサイエンス)
AI化した領域
社内AI基盤/マーケティング/人材育成/経営会議
出典の種別
自社発表

キリンホールディングスは、2026年4月13日の発表で、2025年のキリングループ全体の個人レベルのAI利用率が70%を超えたと述べています。同じ発表で、本社では利用率が100%に近い水準に達し、AIによる業務代替率が10%を超えたとも説明しています。始まりは2024年11月、マーケティング部門の約400人に絞って入れた生成AI「BuddyAI」でした。そこから国内従業員約1万5,000人への展開、社員研修、経営会議の「AI役員」まで、段階を踏んで広げてきた流れを、出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • 2024年11月、マーケティング部門の従業員約400人に「BuddyAI for Marketing」を先行導入。年約2万9,000時間の時間創出を想定していたが、機能改良や社員教育が進み約3万9,000時間の効果が得られる見込みとした(キリンホールディングスの発表・2025年5月12日。見込みであり実績ではない)
  • マーケティング部門では導入初月から利用率60%超。プロンプトのテンプレートは約15種類から100種類以上に増えた(同発表)
  • 2025年5月から、BuddyAIを国内従業員約1万5,000人に展開。全体の時間創出は年約31万時間を見込む(同発表。見込み)
  • 2025年は、グループ全体の個人レベルのAI利用率が70%超。本社は利用率100%に近い水準で、AIによる業務代替率は10%超(同社の発表・2026年4月13日)
  • 2025年7月からは、グループの経営戦略会議にAI役員「CoreMate」を導入。新しい観点を加える発言の割合が導入前の約1.2倍、中長期の視点で議論した割合が約1.4倍になったと発表(同社の英文発表・2026年5月28日)

どんな会社か

キリンホールディングスは、ビール・飲料、ヘルスサイエンス、医薬の事業を持つ持株会社です。キリンビールやキリンビバレッジなどの事業会社を傘下に置いています。

同社は2025年9月に、デジタル活用の長期方針「KIRIN Digital Vision 2035」を公表しました。デジタルの役割を「人がやらなくてよい仕事をゼロにする(生産性向上)」と「人とともに価値を生み出す仕事を加速させる(価値創造)」の2つと定めています(同社の英文発表・2025年9月5日)。

何が課題だったのか

公表資料に「課題」としてまとめた記述はありません。読み取れる範囲では、課題は2つあったと考えられます(以下は推測です)。

1つは、人がやらなくてよい仕事に時間を取られていることです。2025年5月の発表は、BuddyAIの狙いを「人がやらなくてよい仕事」をAIに置き換え、価値を生む仕事の時間をつくることだと説明しています。もう1つは、数万人規模の会社で、ツールを入れても使われるとは限らないことです。同社が利用率を経営の数字として公表し、研修の受講者数まで示しているのは、この点を重く見ているからだと読めます。

何をAI化したのか

取り組み内容公表時期
BuddyAI for Marketingマーケティング部門の約400人に先行導入。プロンプトのテンプレートを約15種類から100種類以上に拡充し、Web検索機能のセキュリティも強化2024年11月導入(2025年5月12日発表)
BuddyAIの全社展開国内従業員約1万5,000人に展開。使いやすい画面の開発、テンプレートの改良、全利用者向けのEラーニングを用意2025年5月から
部門別の機能マーケティング・営業・研究開発などの部門ごとに必要な機能を選んで追加する「Select & Fit」構想。将来はタスクを分解して実行し、報告まで行うAIを目指す2025年5月12日発表(構想)
社員研修「DX道場」2021年からの社員向けデジタル研修。生成AIの講座を拡充し、短時間でAI活用を学ぶ実践講座も新設2025年9月5日・2026年4月13日発表
AI役員「CoreMate」それぞれの専門の立場を持つ12の人格が、グループ経営戦略会議の議題に論点を示す。2025年9月には提案者が会議の前に論点を確かめる機能も追加2025年7月導入。2026年4月から事業会社の会議にも展開

なぜここまでできたのか|小さく先に入れ、研修と数字で全社に広げた

キリンホールディングスの公表値。グループ全体の個人レベルのAI利用率 70%超(2025年)/マーケティング部門の先行導入 約400人・初月の利用率60%超(2024年11月導入)/DX道場のメイン講座 累計5,100人以上(2025年まで)
キリンホールディングスの公表値。グループ全体の個人レベルのAI利用率 70%超(2025年)/マーケティング部門の先行導入 約400人・初月の利用率60%超(2024年11月導入)/DX道場のメイン講座 累計5,100人以上(2025年まで)

この事例の特徴は、いきなり全社に配らず、1つの部門で使い込んでから広げたことです。最初に選んだのはマーケティング部門の約400人でした。2025年5月の発表までに、テンプレートを約15種類から100種類以上に増やし、社員の声をもとに機能を直しています。全社に広げるときには、その経験をもとに画面やテンプレートを改良しました(2025年5月12日の発表)。

もう1つは、研修を利用の後押しとしてセットで進めたことです。社員向けの「DX道場」は、2025年9月の発表時点で累計約3,800人が受講していました。2026年4月の発表では、メイン講座の受講者が2025年までに累計5,100人以上、短時間の実践講座は3,500回以上受講されたとしています。ツールを配る数ではなく、使える人を増やす数を追いかけている点が、利用率70%超という結果につながったと読めます。

さらに、経営層自身もAIを使う側に回っています。AI役員「CoreMate」は、経営会議で新しい観点を出す役を担い、事業会社の会議にも広げられました。上の人が使っていることが見える状態は、現場の利用を後押しします(この効果は出典が述べたものではなく、筆者の読みです)。

日本の中小企業が真似できる3点

① 最初は1つの部署・数十人に絞る。 キリンも全社1万5,000人の前に、マーケティングの約400人から始めました。中小企業なら、たとえば営業チームだけで始め、うまくいった使い方を集めてから広げると、失敗のコストが小さく済みます。

② よく使う指示文をテンプレートにして、増やし続ける。 約15種類から100種類以上への拡充は、社員が「何を頼めばいいか」で迷わないための工夫です。提案書の下書き、議事録の要約、メールの返信案など、自社でよく使う頼み方を5本だけでも共有ファイルにまとめると、使い始める人が増えます。

③ 「利用率」を数字で追う。 同社は個人レベルの利用率を経営の発表に載せています。月に1回、誰がどれくらい使ったかを見るだけでも、使われていない部署に早く気づけます。

どの部署から始めるか、どんなテンプレートを最初に用意するかは、会社の業務によって変わります。私たちAIリモートワーカーのようなサービスで一緒に整理する選択肢もあります。

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注意して読むべき点

  • 「業務代替率10%超」は、本社について述べた文の中の数字です。 発表では、本社の利用率に続けて「生産性向上においては、AIによる業務代替率が10%を超えました」と書かれています。グループ全体の値かどうかは文面から確定できません。また注記で、デジタル・AI活用による業務効率化の効果を、全従業員の総労働時間に対する相当量として評価したものと定義されています。AIだけの効果ではなく、算出方法の詳細も示されていません
  • 「利用率70%超」の定義は示されていません。 「個人レベルのAI利用率」とありますが、何回使えば利用者と数えるのか、分母に誰を含めるのかは発表から読み取れません
  • 約3万9,000時間と年約31万時間は、どちらも見込みです。 3万9,000時間は2025年5月時点で「得られる見込み」とされた数字で、年約31万時間は全社展開による見込みです。その後の実績値は、確認できた範囲では公表されていません
  • CoreMateの「1.2倍」「1.4倍」は、会議の発言の割合の変化です。 導入前(2024年8月〜2025年3月)と導入後(2025年8月〜2026年3月)の会議データを比べたもので、意思決定の結果や業績への効果を示す数字ではありません。会議時間が短くなったとも説明されていますが、短縮の幅は示されていません
  • 出典はすべて同社の自社発表です。 第三者が検証した数字ではありません。CoreMateとKIRIN Digital Vision 2035の内容は英文の発表で確認しています

よくある質問

Q. キリンの生成AI「BuddyAI」とは何ですか?

キリングループが社員向けに用意した生成AIツールです。2024年11月にマーケティング部門の約400人へ先行導入し、2025年5月から国内従業員約1万5,000人に展開を広げました。今後は営業や研究開発など部門ごとに必要な機能を追加していく方針です(キリンホールディングスの発表・2025年5月12日)。

Q. キリンでは生成AIはどのくらい使われていますか?

同社の発表(2026年4月13日)によると、2025年はグループ全体の個人レベルのAI利用率が70%を超え、本社では100%に近い水準でした。ただし、利用率の定義(何回使えば利用者とするか)は示されていません。

Q. マーケティング部門ではどんな効果が出ましたか?

年約2万9,000時間の時間創出を想定していましたが、機能改良や社員教育が進んだ結果、約3万9,000時間の効果が得られる見込みだと発表しています(2025年5月12日)。導入初月から利用率は60%を超えました。いずれも同社の自社発表で、3万9,000時間は見込みの数字です。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

全社に一度に配らず、1つの部署から始めることです。キリンもマーケティング部門の約400人から始め、よく使う指示文をテンプレートとして約15種類から100種類以上に増やしてから全社に広げました。少人数で使い方を固めてから広げると、失敗のコストを小さくできます。

Q. AI役員「CoreMate」は何をしているのですか?

グループの経営戦略会議で、12の人格がそれぞれの専門の立場から議題の論点を示します。2025年7月に導入され、新しい観点を加える発言の割合が導入前の約1.2倍、中長期の視点で議論した割合が約1.4倍になったと発表されています。2026年4月からは事業会社の会議にも広げています(同社の英文発表・2026年5月28日)。

出典

出典と、その読み方

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