問い合わせの97%をAIが解決、1日約4万件|エア・インディア(Air India)の事例
公開 2026-09-29 / 約10分
AIエージェント「AI.g」が開始以来1,300万件超の会話で示した解決の成功率。人間のオペレーターへの引き継ぎは3%(Microsoft事例・2026年2月公表)
97%
出典:ベンダー事例(2026-02-11時点)
- 地域
- 🇮🇳 インド(海外)
- 業種
- 航空
- AI化した領域
- カスタマーサポート/問い合わせ自動化/有人対応との切り分け
- 出典の種別
- 自社発表/報道/ベンダー事例
航空会社のカスタマーサポートの最先端は、ここまで進んでいます。エア・インディアは2023年11月、Azure OpenAI Serviceを使った生成AIの仮想エージェント「Maharaja」を航空会社として世界で初めて導入したと発表しました。当時は1日6,000件超の質問のうち80%超に数秒で回答。2026年2月に公開されたMicrosoftの事例では、同社のAIエージェント「AI.g」が1日約40,000件の問い合わせに対応し、開始以来1,300万件超の会話を成功率97%で解決、人間のオペレーターに引き継がれるのは3%だとしています。出典と発表日つきで整理します。
この事例の要点
- 2023年3月に試験導入を始め、同年11月に生成AIの仮想エージェント「Maharaja」の導入を発表。航空会社として世界初としている(自社発表・2023年11月10日。Business Todayの報道で内容を確認)
- 発表時点では、フライト状況・手荷物許容量・チェックイン・マイレージ特典・空港ラウンジ・フライト変更・払い戻しなど1,300の領域の質問に対応。1日6,000件超の質問のうち80%超に数秒で回答し、ヒンディー語・英語・フランス語・ドイツ語の4言語に対応していた
- 2026年2月公表のMicrosoftの事例では、AIエージェント「AI.g」が1日約40,000件・1,300種類超の質問に対応。開始以来1,300万件超の会話を成功率97%で解決し、人間への引き継ぎは3%
- 同社の最高デジタル・技術責任者は「数百万(通貨・内訳は示されず)を節約した」と発言
- 顧客の約半数がAI.gを最初の問い合わせ手段に選ぶ一方、残り半数は人のオペレーターを選んでおり、最初から顧客が選べる設計にしている
どんな会社か
エア・インディアは、タタ・グループ傘下のインドの大手航空会社です。国内線・国際線を運航し、Microsoftの事例では従業員規模を「10,000人以上」としています。手荷物・チェックイン・払い戻しといった定型的だが件数の多い問い合わせが大量に届き、多言語での対応も求められる業種であることが、自社と比べるときの前提になります。
何が課題だったのか
Microsoftの事例で、同社の最高デジタル・技術責任者(Chief Digital and Technology Officer)のサティヤ・ラマスワミー氏は、数百万件の問い合わせがサポート窓口にあふれ、コストの上昇、応答の遅れ、顧客とスタッフ双方の不満につながっていたと語っています。
2022年11月にMicrosoftがAzure OpenAIを提供し始めると、同社は社内の開発チームで取り組みを始め、実際のやり取りを分析しながら改善していく前提で、早い段階から動く形にしたと説明されています。
何をAI化したのか
対象は、顧客からの問い合わせの一次対応です。
- 定型的な問い合わせへの自動回答 — 2023年時点でフライト状況・手荷物許容量・持ち込み制限・チェックイン手続き・マイレージ特典・空港ラウンジ・フライト変更・払い戻しなど1,300の領域。2026年時点では予約変更から払い戻し依頼まで1,300種類超の質問
- 多言語対応 — 2023年時点でヒンディー語・英語・フランス語・ドイツ語の4言語
- 有人対応への切り分け — 追加の対応が必要な問い合わせはエージェント自身が判断し、コンタクトセンターの担当者へ引き継ぐ(2023年の発表)。2026年時点で引き継ぎは3%
- 人と話す選択肢を残す — 顧客が人のオペレーターを選べる設計を最初から組み込んでいる(Microsoftの事例)
なぜここまでできたのか|「件数の多い定型質問」から始め、人との役割分担を残した

公表値を並べると、1日の対応件数は2023年の6,000件超から2026年の約40,000件へ広がっています。出発点は、手荷物やチェックインのような定型的で件数の多い質問領域でした。そこに絞って始め、やり取りを分析しながら改善を重ねてきたと説明されています。
もう1つの特徴は、すべてをAIで完結させようとしていないことです。顧客の約半数はAI.gを最初の窓口に選びますが、残り半数は人のオペレーターを選んでおり、同社はそれを「問題ではない」としています。コンタクトセンターの担当者は繰り返しの質問に追われなくなった分、判断が必要な複雑な案件に時間を使えるようになったと語られています。
日本の中小企業が真似できる3点
① 「件数が多く、答えが決まっている質問」から始める。 エア・インディアの出発点は、フライト状況や手荷物規定のような定型の質問領域でした。自社でも、届いている問い合わせを分類し、件数が多く答えが決まっているものから自動化の対象にするのが同じ発想です。
② 最初から完成させず、やり取りを見ながら直す。 同社は、実際のやり取りを分析しながら改善していく前提で早く動かし始めています。小さく始めて、回答の中身と引き継ぎの基準を運用しながら調整する進め方は、人手の限られる会社でも取り入れやすい手順です。
③ 人に引き継ぐ道と、人を選べる道を残す。 AIが答えられないときに人へつなぐ仕組みと、顧客が最初から人を選べる選択肢の両方を用意しています。「AIで完結させる」のではなく「AIと人の役割分担を決める」という考え方が、顧客対応の自動化では欠かせません。
定型部分をAIに任せ、判断が必要な部分を人が担うという役割分担は、営業・マーケの現場でもそのまま使えます。どこから手を付けるかの設計に迷ったときは、外部の知見を借りる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つです。
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- 「97%」「1日約40,000件」「1,300万件超」はMicrosoftの事例記事(2026年2月11日公開)に基づく数字です。エア・インディアが直接発表した数値ではなく、AI基盤の提供元(ベンダー)が公開した事例である点に留意してください。同じ記事内の発言では「400万件超の問い合わせの97%」とも語られており、分母となる件数の表現が一致していません
- 2023年の「80%超」と2026年の「97%」は、同じ定義の数字とは限りません。前者は1日の質問のうち数秒で回答できた割合、後者は開始以来の会話の解決の成功率で、単純に比べて「精度が何ポイント上がった」とは言えません。なお2023年の発表は「残り15%」を人へ引き継ぐとしており、80%超と合わせて100%にならない点も原文のままです
- 「Maharaja」と「AI.g」の関係は、出典では説明されていません。どちらも「生成AIによる顧客対応を最初に導入した航空会社」の取り組みとして紹介されていますが、名称が変わった経緯は確認できていません
- 節約額は「数百万(millions)」という発言のみです。通貨・期間・算出方法は示されていません
- 払い戻し処理を複数システムにまたがって進めるAIエージェントは、Microsoftの事例時点で試行中です。「数週間から数時間に短縮できる可能性がある」という表現で、実績ではありません
- 2023年の自社発表ページは機械的な取得ができなかったため、同日のBusiness Todayの報道で数字を確認しました。
よくある質問
Q. エア・インディアは問い合わせを全部AIに任せたのですか?
いいえ。Microsoftの事例によれば、顧客の約半数がAI.gを最初の窓口に選ぶ一方、残り半数は人のオペレーターを選んでおり、同社は顧客が選べる設計を最初から組み込んだとしています。AIが解決できない問い合わせ(公表では3%)は人のオペレーターへ引き継がれます。
Q. 「97%」はどういう意味の数字ですか?
Microsoftの事例記事(2026年2月11日)によれば、AI.gが開始以来対応した1,300万件超の会話における解決の成功率で、人間のオペレーターに引き継がれるのは3%だとしています。ベンダー側が公開した事例の数字であり、同じ記事内の発言では「400万件超の問い合わせの97%」という表現もあるため、分母は幅をもって読むのが安全です。
Q. 中小企業でも同じような自動応答は実現できますか?
規模は違いますが、考え方は流用できます。まず自社の問い合わせを分類し、件数が多く答えが決まっているものから自動化の対象にする。人に引き継ぐ道と、顧客が人を選べる道を残したうえで、やり取りを見ながら回答と引き継ぎの基準を直していく、という進め方は中小企業でも現実的です。
Q. コスト削減効果はどれくらいですか?
同社の最高デジタル・技術責任者は「数百万を節約した」と発言していますが、通貨・期間・算出方法は示されていません。削減額を正確に語ることはできず、公表されている効果は、コンタクトセンターの担当者が繰り返しの質問から離れ、複雑な案件に時間を使えるようになったという定性的な説明が中心です。
出典
- How Azure AI helped Air India reinvent customer service by answering 40,000 daily queries instantly(Microsoft Customer Stories・2026年2月11日)
- Air India successfully deploys airline industry's first generative AI virtual agent, powered by Microsoft Azure OpenAI service(Air India・2023年11月10日)
- AI gets AI: Air India becomes world's first airline to launch virtual AI agent called 'Maharaja'(Business Today・2023年11月10日)
出典と、その読み方
- 自社発表2023-11-10Air India successfully deploys airline industry's first generative AI virtual agent, powered by Microsoft Azure OpenAI service
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 報道2023-11-10AI gets AI: Air India becomes world's first airline to launch virtual AI agent called 'Maharaja'(Business Today)
第三者による取材
- ベンダー事例2026-02-11How Azure AI helped Air India reinvent customer service by answering 40,000 daily queries instantly(Microsoft Customer Stories)
販売側の資料。数字は最も慎重に読む