問い合わせフォームをAIヒアリングにする|聞く項目は「提案の空欄」から決める【2026年版】
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問い合わせが1件届いた。開いてみると、書いてあるのは会社名と名前とメールアドレス、それに「サービスについて詳しく知りたい」の一行だけ。相談内容の欄は空いている。
仕方がないので、初回の商談は「いまどんな状況ですか」から始めます。30分のうち20分が現状を聞くことに使われ、こちらから出せたのは一般的な説明だけ。相手は「また連絡します」と言って、そのまま返事が来なくなる。
フォームを直そうとすると、「項目を減らす」か「増やしてちゃんと聞く」かの二択で悩みます。この記事では、その外にある3つめの形=フォームの見た目のまま、AIが1問ずつ聞き返す受付について、当社が自社の窓口を作り替えたときの設計と、作り替えた後に分かった限界をまとめます。
この記事の要点
- 問い合わせフォームの問題は項目の数ではなく、提案に必要な情報が1つも取れていないこと。当社は公開フォーム11本を調べ、提案ページに要る要件7項目と5つの数字を、どのフォームでも聞いていなかった
- 形式は「フォーム」でも「右下のチャット窓」でもなく、見た目はフォーム、中身は1問ずつの対話にする。会話型は回答の中身が濃くなる一方、始めてもらう段階で落ちやすい
- 聞く項目は、初回の提案で埋めたい空欄から逆算する。会社のことは聞かずにこちらで調べ、予算・決裁・電話番号は聞かないか最後に置く
- 聞いた分だけ、その場で何かを返す。見立て1枚と「24時間以内に御社専用のページを送る」という約束が、答える理由になる
- 作り替えても、問い合わせの件数は増えない。当社は10月の問い合わせが0件で、効果の判定ができていない。この施策が変えるのは「来た1件の中身」だけ
問い合わせフォームの問題は「項目数」ではなく、提案に要る情報が取れないこと
結論:フォームを長くするか短くするかの前に、「初回の提案を書くのに何が要るか」と「フォームで何を聞いているか」を突き合わせてください。 当社が突き合わせたとき、重なりはゼロでした。
当社は2026年9月、サイトにある問い合わせフォームをすべて書き出しました。公開フォームは11本。そのうち無料相談の申込フォームで聞いていたのは、会社名・名前・メールアドレス・課題(5択から1つ)・体制(5択から1つ)・自由記述(任意)だけでした。
一方、当社が問い合わせのあとに作る御社専用の提案ページ(デジタルセールスルームと呼ばれる形)には、次の情報が要ります。
| 提案ページに要る情報 | 中身 | 申込フォームで聞いていたか |
|---|---|---|
| 要件7項目 | 目的・解決したい課題/目指す数字/進め方の方針/導入時期/体制と使っているツール/予算/提案の骨子 | 0項目 |
| 5つの数字 | 月の問い合わせ数・商談になる率・受注率・受注単価・解約率 | 0項目 |
| 相手自身の言葉 | 本人が語った課題と、何で選ぶか | 任意欄のみ(空のことが多い) |
実際、2026年9月に届いた1件では、フォームから取れたのは「自社の商材」と「狙いたい相手」の2項目だけで、相談内容の欄は空でした。当社は同じ日のうちに提案ページを作って送りましたが、ページの冒頭で「公開情報からの推測が混ざっています」と断るしかありませんでした。ページは料金の節まで読まれていましたが、返信はありませんでした。
ここから引き出した教訓は、刺さらなかった原因は文面の出来ではなく、入口で取れた情報がゼロのまま提案に入ったことです。
「項目を減らせば送信が増える」は半分だけ正しい考え方です。WACULが国内BtoBの21フォームを調べた研究では、平均通過率は20.37%で、1項目減るごとに約2ポイント上がる傾向がありました。一方Unbounceの事例では、項目を減らして転換率が14%下がり、利用者が欲しがる項目を戻したら19.21%上がっています。数を減らす前に、どの項目が提案に効いているかを見るのが先です。
フォーム・チャット窓・「1問ずつの対話」を比べる
結論:問い合わせの受付は、見た目はフォームのまま、2問目から対話になる形が両方の弱点を消します。 右下に浮かぶチャット窓は選びませんでした。
会話型の受付は、回答の中身を濃くします。米国の研究では、AIのチャットで聞いた調査は、普通のアンケート画面より回答の具体性が高く、始めた人のうち最後まで答えた割合も54%対24.2%と約2.2倍でした(Xiaoら、2020年)。2026年に発表された2,243人の比較実験でも、AIが聞き返す形のほうが回答の語数が57〜70語多く、所要時間は約2倍になっても満足度は下がりませんでした。
ただし同じ研究で、チャット形式は「始めてもらう」段階で落ちやすいことも分かっています。会話の画面に慣れていない人は、そもそも入力を始めません。BtoBの問い合わせで、ボタンを押した直後に吹き出しの会話が始まると、それだけで閉じる人がいます。

| 観点 | 従来のフォーム | 右下のチャット窓 | 1問ずつの対話(採用) |
|---|---|---|---|
| 始めやすさ | 高い | 低い(会話の画面で入力を始めない人が出る) | 高い(最初はフォームに見える) |
| 取れる情報の中身 | 薄い(選択肢+任意欄) | 濃い | 濃い |
| 最後まで答えてもらえるか | BtoB平均の通過率は20.37%(WACUL) | 始めた人は最後まで答えやすい | 同左。途中で「ここで送る」も選べる |
| かかる時間 | 1〜2分 | 1.5〜2倍に伸びる | 上限7問。所要時間を先に伝える |
| 信頼 | 普通 | 答えない・逃げ道がないと不信を買う | AIだと明示し、要約を本人が直してから送る |
当社が選んだのは右端の形です。中身はAIが回答を読み、次に聞く1問と、必要なときだけ1回の聞き返しを選びます。
何を聞くか|「提案の空欄」から逆算した4層
結論:聞く項目は「初回の提案で埋めたい空欄」から決め、相手にしか分からないことだけを聞きます。 当社は15の項目を4つの層に分けました。
| 層 | 何を | どう取るか |
|---|---|---|
| 聞かない | 会社名・業種・規模・主な商材・営業の形(直販か代理店か)・採用やニュースなど公開情報で分かる動き | メールアドレスのドメインから当社が調べ、「こう理解しました。合っていますか?」と確認だけ取る |
| 必ず聞く(2〜3問) | ①きっかけ(なぜ今か) ②いちばん困っていることを本人の言葉で ③営業の流れのどこを良くしたいか | 選択肢+自由記述 |
| 聞けたら価値が高い(2〜3問) | ④営業の人数 ⑤月の問い合わせ数・商談になる率・受注率・単価(概算) ⑥使っているツール ⑦試して駄目だったこと | 幅のある選択肢と「分からない」 |
| 最後に・任意で | ⑧何ができたら成功か ⑨導入時期 ⑩予算感 ⑪誰と進めるか ⑫ご自身の立場 | 選択肢。理由を1行添える |
最後に、⑬希望する次の一歩、⑭連絡先(メールと名前。電話番号は聞かない)、⑮要約の確認、で送信になります。
選択肢は、用件10・きっかけ10・工程8の固定リストにして、全部見せています。「新規開拓の当て先が見つからない」「問い合わせは来るが商談にならない」「提案書・見積づくりに時間がかかる」のように、相手が普段使っている言葉で並べるのがコツです。分類のために選ばせるのではなく、書く負担を下げるために置きます。
予算と決裁を最初に聞かないのは、初回の会話でいきなり詰めると相手が身構えるからです。お金と決め方は、先にこちらから何かを返してからにします。
これは商談準備をAI化する順番と同じ考え方です。公開情報はこちらで読み、本人にしか答えられない質問だけに絞ります。
聞き方の7つのルール
結論:質問の中身より、「なぜ聞くか」「答えないで進めるか」「最後に直せるか」の3つが離脱を左右します。

- 1画面に1問。選択肢と自由記述を並べる
- 毎問に「なぜ聞くか・答えると何が良くなるか」を1行添える。Baymardの調査では、電話番号の入力を求められると14%の人が抵抗し、理由を説明していないサイトが39%ありました。理由を添えるか任意にすれば、この抵抗は消せます
- 「分からない」「あとで」をいつでも選べる。空欄は責めない。空いた項目は提案側で「未確認」として扱う
- AIの聞き返しは1回まで、「具体的な場面を1つ教えてください」型で。回答が「効率化したい」のように抽象的なときだけ聞き返します。2025年の研究では、具体例を求める聞き返しが最も回答の質を上げ、「なぜですか」を重ねる型は「同じことを繰り返し聞かれている」感覚が最も強く出ました
- 質問は最大7問。必ず聞く3問が埋まった時点で「ここで送れます」を出し、続けるかは相手が決める
- AIが聞いていることを最初に伝え、「担当者が必ず全文を読みます」「こちらから勝手に電話はしません」と約束する。EUのAI法は、人と直接やりとりするAIにその旨を知らせる義務を2026年8月から課しています。国内でも、資料をダウンロードした直後の電話を57.8%が「検討前で迷惑」と答えた調査があります(IDEATECH、2026年2月)
- 最後に要約を見せ、本人が直してから送る。初回打合せ前の情報集めをAIに任せる研究では、AIを挟むと伝わり方は明確になる一方、「この内容で大丈夫か」という信頼感が下がりました。要約を本人が直せるようにすると、その不安を減らせます
当社は7番目を入れる前に、モックで社内確認をしました。そこで出た指摘が「会社の調査は数分かかるのではないか。長いと離脱する」でした。その通りで、モックでは調査を盛りすぎていました。本番では、メールアドレスが入った瞬間に裏で調べ始め、きっかけと困りごとを聞いている間に終わらせる形に変えています。15秒以内に終わらなければ、確認のカードは出さずにそのまま先へ進みます。本番での実測は約8秒でした。
聞いた分だけ、その場で返す
結論:答える理由は「答えると、すぐに自分向けの何かが返ってくる」ことです。 当社は、受付の終わりに2つを返しています。
1つ目は、その場で出す見立て1枚です。選んだ工程と困りごとから「どこから効きそうか」を短く返します。ここで使うのは当社の実測だけで、相手の数字は断言しません。当社の実測とは、営業・マーケの定型19業務を合計14時間55分から54分にした記録です。
2つ目は、24時間以内に御社専用の提案ページを送るという約束です。ページは、受付で本人が書いた言葉をそのまま課題の見出しに使い、原因と打ち手、試算、事例を並べます。問い合わせの一次返信が一般論で終わらないようにするためです。
返す速さには根拠があります。Chili Piperが400万件のフォームを分析した報告では、送信直後にその場で日程を予約できると転換率が30%から66.7%に上がりました。HBRの調査でも、1時間以内に応答した会社は、それより遅い会社の約7倍、商談につながる見込み客を得ていました(どちらも相関で、因果は分かれていません)。
仕組みの流れは、送信→ヒアリングシートが案件の記録に自動で付く→それを材料に提案ページの下書きができる→人が読んで直して送るです。人がやるのは、届いた下書きの確認と、相手の言葉で書けているかの判断だけになります。当社はこの受付を、営業・マーケAI導入支援で顧客に提案するAIプロジェクトの1つにしています。
「項目を増やせば離脱が増えるだけでは?」への答え
結論:増えるのは質問の数ではなく、「答えてもいいし飛ばしてもいい質問」です。送るために最低限必要なのは3問のままです。
この形を説明すると、必ず2つの反論が返ってきます。
1つ目は「結局、項目を増やしているだけで、離脱が増えるのでは」。必ず聞くのは3問だけで、3問が埋まった時点でいつでも送れます。残りは「分からない」「飛ばす」を選べるので、従来のフォームより必須の入力はむしろ少なくなります。研究でも、会話型の離脱は「始めるかどうか」の段階で起きやすく、始めた後の脱落は増えないと報告されています(2019年の比較実験では、普通の画面8.6%に対しチャット10.2%で、有意な差はありませんでした)。
2つ目は「チャットボットを入れれば同じでは」。問い合わせ用のチャットボットは、決まった答えを返すか、項目をチャット風に聞くものが中心です。当社が国内外の製品を約200件調べた範囲では、初回の提案の精度を上げるために聞き返すことを目的にした受付は見当たりませんでした。
当社の結果|仕組みは入ったが、10月の問い合わせは0件だった
結論:受付を作り替えても、問い合わせの件数は増えません。 当社はこの1か月で、それを自分の数字で確かめることになりました。
当社は2026年9月28日に無料相談の申込を1問ずつの対話に置き換え、10月20日にはSEO記事作成代行など他のサービスの申込も含めた7つの窓口に広げました。判定の物差しも先に決めていました。

| 測るもの | 作り替える前 | 目標 |
|---|---|---|
| 1件あたり埋まった項目(15中) | 約2〜3(9月の1件は2) | 8以上 |
| 提案ページが「推測が混ざっています」と断る割合 | 100% | 30%以下 |
| 始めた人のうち最後まで送った割合 | 未計測 | 従来のフォームと同じかそれ以上 |
ところが、判定日に予定していた10月29日の時点で、10月に届いた問い合わせは0件でした。判定はできず、問い合わせが来た時点で見ることにしています。
ここから引き出した教訓は2つあります。
- 受付の改善は「来た1件の中身」を変える施策で、件数を増やす施策ではない。件数が詰まっているなら、原因は受付より手前(記事の出口や着地の画面)にあります。手前の見方はオウンドメディアから問い合わせが来ないときに見る4か所にまとめました
- 件数が少ない会社ほど、比較実験はできない。月に数件では、旧フォームと新しい受付を半々に出して比べても結論が出ません。当社は「1件あたり何項目埋まったか」「提案ページが推測と断らずに済んだか」を1件ずつ記録する形にしました
それでも作り替えた理由は、件数が少ない会社ほど1件を取りこぼす痛みが大きいからです。商談になる率と、その先の受注率を決めるのは、来た1件の初回をどう使えるかです。
自社で始めるなら、直近5件の問い合わせから
結論:いきなりAIを入れず、直近の問い合わせ5件で「初回の提案に何が足りなかったか」を書き出すところから始めてください。
- 直近5件で、初回の商談や提案に使った情報を書き出し、フォームから取れていたものに印を付ける
- 印の付かない情報のうち、相手にしか分からないもの(きっかけ・困りごと・どの工程か)を最初の3問にする。公開情報で分かるものは聞かずに調べる
- 3問それぞれに「なぜ聞くか」を1行書く。書けない質問は消す
ここまでは今のフォームの項目を入れ替えるだけでできます。AIの聞き返しや見立ては、この3問が固まってから足すほうが失敗しません。
よくある質問
Q. BtoBの問い合わせフォームの項目はいくつが適切ですか?
数より、初回の提案に必要な情報から決めるほうが確実です。項目を減らすと通過率は上がる傾向がありますが、削って成果が下がった事例もあります。当社は送るために必須の質問を3つ(きっかけ・困りごと・どの工程か)にし、残りは「分からない」「飛ばす」を選べる形にしています。
Q. 問い合わせの受付にチャットボットを置けば、同じ効果がありますか?
目的によります。よくある質問に答えるチャットボットは、初回の提案に要る情報を集める作りになっていないことが多く、右下に浮かぶチャット形式は入口で落ちやすいと報告されています。当社は見た目をフォームのままにし、2問目から対話になる形を選びました。
Q. 問い合わせの時点で予算や決裁者を聞いてもよいですか?
最初には聞かず、聞くとしても最後に任意で、理由を添えて聞くのが安全です。初回にお金と決め方を詰めると相手が身構えやすく、見立てなど何かを先に返してからのほうが答えてもらえます。当社は予算感と「誰と進めるか」を最後の任意の質問にし、電話番号は聞いていません。
Q. AIが聞いていることは、相手に伝える必要がありますか?
伝えてください。EUのAI法は2026年8月からその旨を知らせる義務を課しており、国内のAI事業者ガイドラインも、AIと対話していると相手が分かるようにすることを求めています。当社は冒頭でAIが聞いていることと、担当者が全文を読むこと、こちらから勝手に電話しないことを伝えています。
Q. 問い合わせフォームのAIヒアリングは自社で作れますか?
作れます。ただし最初から聞き返しまで作り込まず、直近5件の問い合わせで「初回の提案に何が足りなかったか」を書き出し、最初の3問を固めてから足すほうが失敗しません。当社も、モックの段階で会社の調査に時間をかけすぎていたのを社内確認で見つけ、本番では裏で調べて15秒以内に終わらなければ出さない形に直しました。
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執筆・監修:佐々木 優希(上場企業 営業統括 兼 AI責任者)
スタートアップでトップセールスとして営業組織の立ち上げに携わり、SFA・CRMのエンタープライズ営業マネージャーを経て、上場企業で営業統括とAI責任者を兼任。営業・マーケティング組織へのAI実装を現場側から手がけ、現在は中小企業向けにAI導入支援を提供しています。
参考
- WACUL「B2Bサイトのフォームにおけるベストプラクティス研究」 https://wacul.co.jp/lab/posts/b2b-form-best-practice
- Unbounce. Ask Me Anything: Michael Aagaard
- Xiao, Z. et al. (2020). Tell Me About Yourself: Using an AI-Powered Chatbot to Conduct Conversational Surveys
- Kim, S., Lee, J., & Gweon, G. (2019). Comparing Data from Chatbot and Web Surveys
- Public Opinion Quarterly (2026). AI interviewer randomized experiment
- Wei, J. et al. (2025). CHI 2025: probing strategies in conversational interviews
- Paludan, et al. (2025). Client brief collection tools
- Baymard Institute. Explain Why the Phone Number Is Required
- マナミナ(IDEATECH調査の紹介) https://manamina.valuesccg.com/articles/4845
- Chili Piper. Form Conversion Rate Benchmark Report
- Harvard Business Review (2011). The Short Life of Online Sales Leads
- EU AI Act. Article 50: Transparency Obligations
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf