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AI導入支援が抜けた後も回る会社|3社に残った3つの形【2026年版】

佐々木 優希

佐々木 優希

上場企業 営業統括 & AI責任者

12分で読めます

目次
  1. この記事の要点
  2. 「抜けた後」は、契約の最後ではなく最初に決める
  3. 形① 人が動かさなくても回る仕組みを残す
  4. 形② 「何を狙うか」を決める工程ごと渡す
  5. 形③ 実装した仕組みを題材にした動画で、直し方を残す
  6. 3社とも、最初の進め方は外していた
  7. 「最初から内製したほうが安いのでは」への答え
  8. 契約前に決めておく「抜けた後」の5項目
  9. よくある質問

外部の支援会社に入ってもらってAI化を進めた。期間中は資料も自動で出てくるし、定例のたびに新しい仕組みが増えていく。ところが契約が終わって2ヶ月たつと、誰も触らなくなっている。止まった理由を聞いても「担当が異動した」「どこを直せばいいか分からない」という答えしか返ってこない。

AI導入支援を検討している会社がいちばん恐れているのは、高いお金を払うことよりも、払った後に何も残らないことではないでしょうか。

この記事では、当社が営業・マーケティングのAI化を支援した3社について、体制・数字が動き始めた時期・抜けた後どうなったか・ツール費を並べます。3社とも抜けた後に回っていますが、残ったものの形はそれぞれ違いました。そして3社とも、最初の進め方は外しています。そこまで含めて、契約前に決めておくべきことを整理します。

この記事の要点

  • 支援が終わった後に回るかどうかは、終わる直前ではなく契約の最初に「何を残すか」を決めたかでほぼ決まる
  • 3社に残った形は3つ。①人が動かさなくても回る仕組み/②「何を狙うか」を決める工程ごと渡した担当者/③実装した仕組みそのものを題材にした研修動画
  • 体制は週2回・1日5時間〜週5日・1日6時間。数字が動き始めたのは1ヶ月目が1社、3ヶ月目が2社。追加のツール費は3社とも大きくない
  • 3社とも最初の進め方は外していた。現場に要望を聞いて回る/研修から入る/正しい設計を先に持ち込むの3つで、どれも順番を変えて動き出した
  • 「完全に手離れする仕組み」はない。当社の自社運用でも改善記録の29%は壊れたものの修復だった。抜けた後に誰が直すかまで決めておく

「抜けた後」は、契約の最後ではなく最初に決める

結論から書くと、支援が終わった後も回る会社は、契約の最初の時点で「抜けた後に何を残すか」を1つ決めていました。終わる直前に引き継ぎ資料を作っても、その資料を読んで仕組みを直せる人は社内にいないことがほとんどです。

当社が支援した3社を並べると、次のようになります(社名は非公開。詳細は導入事例に掲載しています)。

支援先3社の比較表。上場BPO企業は週3日・1日8時間で3ヶ月目から数字が動き、抜けた後は人の操作なしで仕組みが稼働、追加ツール費はほぼなし。フィンテック企業は週5日・1日6時間で1ヶ月目から、マーケ担当者へ戦略設計ごと引き継ぎ、追加費用ほぼなし。医療DX企業は週2回・1日5時間で3ヶ月目から、専用の研修動画で営業のほとんどが自走、音声入力ツール年2万円程度/人とClaude Code1人分
支援先3社の比較表。上場BPO企業は週3日・1日8時間で3ヶ月目から数字が動き、抜けた後は人の操作なしで仕組みが稼働、追加ツール費はほぼなし。フィンテック企業は週5日・1日6時間で1ヶ月目から、マーケ担当者へ戦略設計ごと引き継ぎ、追加費用ほぼなし。医療DX企業は週2回・1日5時間で3ヶ月目から、専用の研修動画で営業のほとんどが自走、音声入力ツール年2万円程度/人とClaude Code1人分
上場BPO企業フィンテック企業医療DX企業
関与の体制週3日・1日8時間週5日・1日6時間週2回・1日5時間
数字が動き始めた時期3ヶ月目1ヶ月目3ヶ月目
主な数字チーム受注率 8%→45%新規提携 月10件→月20件受注率 約10%→約20%
抜けた後に残ったもの人の操作なしで進む仕組み戦略設計ごと引き継いだ担当者自社専用の研修動画と、自走する営業
追加のツール費ほぼなし(既存のGoogle Workspace付属AI中心)ほぼなし(既存のGoogle系AI中心)音声入力ツール 1人年2万円程度+Claude Code 1人分

注目してほしいのは「抜けた後に残ったもの」の行です。3社とも回っていますが、残したものがまったく違います。会社の状況によって、残せる形が変わるからです。以下、1つずつ見ていきます。

形① 人が動かさなくても回る仕組みを残す

1つ目は、誰かが動かし続けなければ止まる仕組みを、最初から作らない形です。上場BPO企業がこれにあたります。

この会社では、商談まわりが次の流れで、人の操作なしに進むようにしました。

  1. Googleカレンダーに商談の予定が入る
  2. その情報をもとに、顧客の公開情報を自動でリサーチする
  3. 仮説を立て、提案レポートを作る
  4. Slackに自動で通知が届く

営業は、届いた通知を見るところから仕事を始めます。AIとの対話画面を開いて指示を打つ必要がありません。だから「使う人が辞めたら止まる」「使い方を覚えている人がいなくなったら止まる」が起きにくい。抜けた後もそのまま稼働しています。

この形が向いているのは、業務の流れが毎回ほぼ同じで、きっかけ(予定が入る・問い合わせが来る)がはっきりしている仕事です。逆に、毎回判断が必要な仕事をこの形で残そうとすると、判断の部分だけが宙に浮きます。

形② 「何を狙うか」を決める工程ごと渡す

2つ目は、作業ではなく判断を渡す形です。フィンテック企業がこれにあたります。

この会社では、支援の終わりにマーケティング担当者へ引き継ぎました。渡したのは次の2つです。

  • SEO記事の自動生成から公開まで
  • 「どんなターゲットを狙って、どんなキーワードを取っていくか」という戦略設計そのものの自動化

ポイントは2つ目です。記事を書く作業だけを渡すと、受け取った人は「次に何を書けばいいのか」で止まります。作業は自動でも、何を狙うかを決める工程が支援側に残ったままだからです。そこまで含めて渡したので、担当者が入れ替わっても運用が続いています。

この形の前提は、受け取る担当者が1人は社内にいることです。兼務でも構いませんが、名前が決まっていないと渡す先がありません。担当者がいない会社の進め方は社内にAI担当者がいない会社の進め方で、役割を3つに分けて整理しています。

形③ 実装した仕組みを題材にした動画で、直し方を残す

3つ目は、仕組みと一緒に「直し方」を残す形です。医療DX企業がこれにあたります。

この会社では、営業プロセスのAI化を週1本のペースで進めながら、同時にその会社専用の研修動画を作りました。一般的なAI研修の動画は「AIの使い方」の講座になりますが、ここで作ったのは実際に実装した仕組みそのものを題材にした動画です。

その結果、支援先の担当者からはこう言われています。

社員がその動画を見るだけで、実行されたAI化の修正を行えるようになったり、自ら自分の営業プロセスでAI化したいと思った際にも動画を参考に進め方がわかるようになった。佐々木さんが抜けてからも自立してみんながAI化できる文化を作ることができた。

抜けた後、営業メンバーのほとんどが自走し、新しいAI化を自分たちで始められる状態になりました。

汎用の研修が「意味ない」と言われやすい理由は、見ても自分の業務のどこに当てはめるかが分からないからです(AI研修が「意味ない」と言われる理由)。自社で動いている仕組みが題材なら、その距離がありません。研修は単独で買うより、実装とセットで、実装の後に作るほうが効きます。

3社とも、最初の進め方は外していた

ここまで読むと3社ともうまくいったように見えますが、正直に書くと、3社とも最初の進め方は外しています。

3社の最初の進め方と、変えた後の進め方。上場BPO企業は現場にAI化したい業務を聞いて回り既存業務が少し効率化しただけ→KPIから逆算した設計を先に示す。フィンテック企業はAI研修から始めて何をAI化すればいいか分からない状態に→先に1本実装して見せてから研修。医療DX企業は海外のモデルを先に持ち込み定着しなかった→先にこだわりをヒアリングしてから形にする
3社の最初の進め方と、変えた後の進め方。上場BPO企業は現場にAI化したい業務を聞いて回り既存業務が少し効率化しただけ→KPIから逆算した設計を先に示す。フィンテック企業はAI研修から始めて何をAI化すればいいか分からない状態に→先に1本実装して見せてから研修。医療DX企業は海外のモデルを先に持ち込み定着しなかった→先にこだわりをヒアリングしてから形にする
最初の進め方何が起きたか変えた後
上場BPO企業現場に「AI化したい業務はありますか」と聞いて回った既存業務が少し効率化しただけで、商談数も受注数も動かなかったKPIから逆算した設計を先に示し、そこから実装した
フィンテック企業ご要望どおりAI研修から始めた「で、何をAI化すればいいのか分からない」状態になった先に1本実装して見せ、要領を掴んでもらってから研修した
医療DX企業海外のモデルを前提に、経営数字から逆算して組んだ自分のやり方にこだわりを持つ営業が多く、定着しなかった先にこだわりをヒアリングし、「どうAI化してほしいか」を形にした

3つの失敗は、方向がバラバラです。1社目は現場に寄りすぎ、3社目は現場から離れすぎていました。共通していたのは、相手の会社が「何を受け取れる状態か」を確かめる前に、進め方を決めていたことです。

これは「抜けた後」の話と直結します。最初の進め方を外したまま進めると、残るのは「支援会社が作った、社内の誰も意図を説明できない仕組み」です。抜けた後に回るかどうかは、最初の1〜2ヶ月で、相手が受け取れる形に進め方を合わせ直せたかでかなり決まります。

「最初から内製したほうが安いのでは」への答え

ここでよく返ってくる反論があります。「どうせ最後は社内に引き継ぐなら、最初から自社で内製したほうが安いのでは」というものです。

答えは、内製できる人が社内にいるなら、そのほうが安いです。外部に払う月額がなくなるので、当然そうなります。

ただ、内製で詰まるのは「作れる人がいない」よりも、「何を作れば数字が動くか」を決められる人がいないことのほうが多いのが実情です。上の表の1社目がまさにそうで、現場の要望からAI化を始めると、作業は楽になっても受注は動きませんでした。米国でも、外部のAI責任者を月8〜20時間だけ借りる形が中小企業向けに定着し、月2,000〜8,000ドルの水準で取引されています(AI Consulting Network 2026)。フルタイムで抱えるのではなく、判断の部分だけを期間を区切って借りるという考え方です。

もう1つ、引き継いだ後のことも書いておきます。一度作れば手離れする仕組みはありません。当社は自社の業務を自作の仕組みで回していますが、2026年8月25日〜9月20日の27日間に起票した改善記録284件のうち、83件(29%)は新しい機能ではなく、壊れたものの修復でした(詳しくはClaude Codeで自分専用ツールを内製する)。作る側の当社ですら、3割は直す仕事です。

だから引き継ぎで決めるべきなのは、「仕組みを渡す」ことより「壊れたときに誰が、何を見て直すか」です。形③の研修動画が効いたのは、まさにこの「直し方」を残したからでした。

契約前に決めておく「抜けた後」の5項目

ここまでを、発注する側が契約前に確認できる形にまとめます。見積の金額を比べる前に、次の5つを支援会社に聞いてください。

契約前に決める「抜けた後」の5項目。1 抜けた後に残す形を1つ決める(仕組み・判断・直し方)、2 受け取る人の名前を決める、3 何を狙うかを決める工程を誰が持つか、4 壊れたときに見るものを決める、5 最初の1ヶ月で進め方を見直す場を置く
契約前に決める「抜けた後」の5項目。1 抜けた後に残す形を1つ決める(仕組み・判断・直し方)、2 受け取る人の名前を決める、3 何を狙うかを決める工程を誰が持つか、4 壊れたときに見るものを決める、5 最初の1ヶ月で進め方を見直す場を置く
#決めること決めていないと起きること
1抜けた後に残す形を1つ(仕組み/判断/直し方)「全部残します」と言われ、どれも中途半端に残る
2受け取る人の名前(兼務でよい)終わる直前に担当探しが始まり、引き継ぎ資料だけが残る
3「何を狙うか」を決める工程を、最後に誰が持つか作業は自動で回るのに、次に何をするかで止まる
4壊れたときに見るもの(通知・手順・動画)壊れたことに誰も気づかないか、気づいても直せない
5最初の1ヶ月で進め方を見直す場外した進め方のまま契約期間が終わる

特に5は見落とされがちです。上で書いたとおり、当社も3社すべてで最初の進め方を外しています。外すこと自体より、外したまま進むことのほうが高くつきます。月次の定例や中間の振り返りなど、進め方そのものを見直す場が契約に入っているかを確認してください。

契約期間や支払い条件そのものの比べ方は、AI導入支援の支払い条件で整理しています。期間の長さは「抜けた後に何を残すか」から逆算すると決めやすくなります。

よくある質問

Q. AI導入支援は、どのくらいの期間で効果が出ますか?

当社の支援先3社では、数字が動き始めたのは1ヶ月目が1社、3ヶ月目が2社でした。1ヶ月目に動いたフィンテック企業も、先に動いたのは営業プロセス側の指標で、記事の検索順位は6〜8週間かかっています。業務の棚卸しと1本目の実装、使われるかどうかの確認を考えると、3ヶ月を最初の区切りとして見ておくのが現実的です。

Q. 支援が終わった後に、仕組みが止まってしまうのが心配です。

止まる原因の多くは、「誰かが動かし続けないと進まない仕組み」になっていることと、「壊れたときに直せる人がいない」ことの2つです。契約前に、抜けた後に残す形(仕組み・判断・直し方のどれか)と、受け取る人の名前を決めておくと、止まりにくくなります。

Q. 社内にAIに詳しい人がいなくても、引き継げますか?

引き継げます。当社の支援先でも、引き継いだ相手はAIの専門家ではなくマーケティング担当者や営業メンバーでした。必要なのはAIの知識より、「何を狙うか」を決める役割を誰が持つかがはっきりしていることです。直し方は、実装した仕組みを題材にした動画や手順で残せます。

Q. AI研修だけ先に受けて、実装は社内でやる形ではだめですか?

だめではありませんが、当社の支援先では研修から始めた会社が「何をAI化すればいいか分からない」状態になりました。順番を変えて、先に1本実装して見せてから研修にしたところで動き出しています。研修を先にするなら、研修の題材を自社の実際の業務にしてもらうことをおすすめします。

Q. 追加のツール費はどのくらいかかりますか?

当社の支援先3社では大きくありませんでした。2社はすでに契約していたGoogle Workspace付属のAIを中心に構成し、追加費用はほとんどかかっていません。もう1社は音声入力ツール(1人あたり年2万円程度)と、実装担当1人分のClaude Codeの有料プランを追加しています。すでに契約しているものの中に使える機能がないかを先に確認するのが、費用面ではいちばん効きます。

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執筆・監修:佐々木 優希(上場企業 営業統括 兼 AI責任者)

スタートアップでトップセールスとして営業組織の立ち上げに携わり、SFA・CRMのエンタープライズ営業マネージャーを経て、上場企業で営業統括とAI責任者を兼任。営業・マーケティング組織へのAI実装を現場側から手がけ、現在は中小企業向けにAI導入支援を提供しています。

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