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AIの利益貢献255億円、広告とECの接客まで決算で開示|楽天グループの事例

公開 2026-10-02 / 約12分

2025年にAI活用で生み出した利益の額(楽天の各サービスにおけるAIプロジェクトを通じたコスト削減と売上成長による利益・同社算出。前年2024年は105億円。2025年度決算説明会資料・2026年2月12日)

255億円

出典:決算・年次報告(2026-02-12時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
インターネットサービス(EC・広告・フィンテック・通信)
AI化した領域
広告運用/マーケティング/EC接客/店舗支援/カスタマーサポート
出典の種別
決算・年次報告/報道

マーケティングと接客のAI化は、「何件導入したか」ではなく「いくら利益を生んだか」を決算で語る段階に入っています。楽天グループは2026年2月12日の決算説明会で、AI活用による利益創出額が2025年に255億円に達したと開示しました。前年2024年の105億円から2.4倍で、2025年の目標210億円も上回っています。中身は、楽天市場の検索・レコメンド・広告配信の最適化と、対話型AIによる接客です。広告はAIの自動最適化を全店舗に入れ、国内の広告売上は2026年4〜6月期に前年同期比15.6%増。出典と発表日つきで整理します。

この事例の要点

  • AI活用による利益創出額は2024年105億円→2025年255億円。2025年の目標(2024年の2倍=210億円)を上回り、2026年は2024年の3倍を目標に掲げた(2025年度決算説明会資料・2026年2月12日。いずれも同社算出)
  • 楽天市場の検索連動型広告(RPP)に、AIで配信量や入札の強弱を調整する自動最適化を2025年7月から順次導入し、同年11月に全店舗へ導入を完了。導入前後の比較でRPP経由の流通総額は13.8%増、同社のRPP広告収入は10.9%増(2026年度第1四半期決算資料・2026年5月14日)
  • 国内の広告売上は、2026年1〜3月期619億円(前年同期比13.0%増)、4〜6月期656億円(同15.6%増)と伸びが加速。同社は広告審査・入札・クリエイティブ作成などへのAI活用が貢献したと説明している(第1・第2四半期決算資料)
  • 対話型の「楽天市場 AIコンシェルジュ」経由の購入は、従来の検索経由と比べて購入までの時間が約41%短く、平均注文単価は17%高い(2026年5月1〜25日の比較・第2四半期決算資料・2026年8月10日)
  • AIエージェントを載せたサービスは2026年5月時点の11から8月時点の17に増え、50以上のサービスへの導入を見込む(第1・第2四半期決算資料)

どんな会社か

楽天グループは、EC「楽天市場」を中心に、トラベル、カード・銀行・証券などのフィンテック、携帯電話の楽天モバイルまでを1つの会員IDでつなぐ「楽天エコシステム」を運営しています。2025年の国内EC流通総額は6兆3,452億円(前年比3.9%増)、楽天市場には5万を超える店舗と5億を超える商品が並びます(決算資料・Business Insider Japanの報道)。

AI活用は社内で「AI-nization(エーアイナイゼーション)」と呼ぶ全社方針で、2026年度の重点領域の1つに「AI活用加速」を掲げ、全事業・部門にAI推進責任者を任命するとしています(2025年度決算説明会資料)。

何が課題だったのか

公表資料から読み取れる課題は、商品点数の多さです。5億を超える商品の中から、利用者が欲しいものにたどり着くまでの検索と比較に時間がかかり、店舗にとっては数ある広告枠のどこに・いつ・いくら出すかの判断が負担になります。

同社は決算資料で、ECの検索やレコメンド、広告配信をAIで高度化し、各タッチポイントでの体験を「よりパーソナライズかつ高付加価値化」することを成長の柱に据えています。一方で、2026年5月の決算資料では「楽天エコシステムにとってAIは脅威ではなく、さらなる価値創出の機会」とわざわざ1枚を割いており、外部の汎用AIエージェントに買い物の入り口を奪われることへの備えも課題になっていると読めます(推測)。

何をAI化したのか

AIに任せた範囲は、広告の運用、商品の見つけ方、接客、店舗の作業の4つです。

  • 広告配信の自動最適化 — 検索連動型広告(RPP)で、配信面ごとの配信量や入札の強弱をAIが調整する。2025年7月から順次導入し、11月に全店舗へ導入を完了(第1四半期決算資料)。ターゲティングディスプレイ広告(TDA)でも、キャンペーン設計・クリエイティブ作成・広告審査・広告入札・パフォーマンス評価にAIを使う。RPPとTDAで楽天市場の広告売上の60%以上を占める(第2四半期決算資料)
  • 検索とレコメンドの最適化 — 利用者の好みやトレンドに応じて検索結果を並べ替えるパーソナライズ検索、商品やコンテンツを出し分ける「ディスカバリーレコメンデーション」(2025年11月開始)。同社は、パーソナライズ検索で年間255億円の流通総額を生む(楽天市場でのテスト結果に基づく試算)、ディスカバリーレコメンデーションで利用時間が41%増える(PoCの結果)としている(2025年度決算説明会資料)
  • 対話型の接客 — 2025年12月に楽天市場でRakuten AIを本格展開し、「AIコンシェルジュ」が会話の中で商品を探し、最大4つの商品を並べて比較できる(Business Insider Japanの報道)。各店舗の専門知識を持ち24時間接客する「AI店長」も開発中としている(第2四半期決算資料)
  • 店舗の作業支援 — 出店店舗向けの店舗運営システム(RMS)にAIアシスタントを組み込み(2025年度決算説明会資料)、問い合わせ対応やデータ分析を支援する。2026年7月7日の説明会では、約半数の店舗がAI機能を活用し、2026年4月30日に始めたデータ分析エージェントの利用店舗の72.9%が深掘り分析に使っていると説明された(AI Watchの報道)
  • カスタマーサービス — 顧客サービス向けAI「Raptor」を10以上の事業に入れ、2026年通期で43億円のコスト削減を見込む(2025年度決算説明会資料。見込み値)

なぜここまでできたのか|AIの成果を「利益の額」で毎期追いかけた

楽天グループの公表値。AI活用による利益創出額 105億円(2024年)→255億円(2025年)・2026年は2024年の3倍が目標(2025年度決算資料)/国内の広告売上 656億円(2026年4〜6月期・前年同期比15.6%増)/AIコンシェルジュ経由の購入時間 約41%短縮(2026年5月1〜25日・従来の検索経由との比較)
楽天グループの公表値。AI活用による利益創出額 105億円(2024年)→255億円(2025年)・2026年は2024年の3倍が目標(2025年度決算資料)/国内の広告売上 656億円(2026年4〜6月期・前年同期比15.6%増)/AIコンシェルジュ経由の購入時間 約41%短縮(2026年5月1〜25日・従来の検索経由との比較)

この事例の特徴は、AI活用を全社の利益額という1つの数字で目標化し、決算のたびに進捗を開示している点です。2025年は「2024年の2倍(210億円)」を目標に掲げて255億円で着地し、2026年は「2024年の3倍」へ目標を引き上げました。経営が金額で約束しているため、各事業のAI施策も「使われたか」ではなく「売上や費用にどう効いたか」で評価される構造になっています。

もう1つは、AIを入れた場所が、売上に直結する接点に集中していることです。広告の自動最適化は、店舗の広告効果と同社の広告収入が同時に増える仕組みで、同社は「出店店舗と楽天のWin-Winモデル」と表現しています。対話型の接客も、購入までの時間と注文単価という売上に近い指標で効果を示しています。社内の文書作成や議事録といった効率化より先に、お金が動く場面からAIを入れた順番が、利益額での開示を可能にしています。

日本の中小企業が真似できる3点

① AIの成果を「金額」で1つ決めて追いかける。 楽天はAI活用の成果を利益の額で目標化し、毎期その進捗を示しています。中小企業でも、「AIで浮いた時間×時給」や「AIで増えた受注額」のように、自社で測れる金額の指標を1つ決めておくと、どの施策を続けてどれをやめるかの判断がぶれません。

② 売上に近い場所から入れる。 楽天が最初に成果を出したのは、広告の配信と検索・接客でした。自社でも、広告文の作り分けや問い合わせへの一次返信、提案書の下書きといった、受注に近い作業から試すと効果が見えやすくなります。

③ 取引先の手間を減らす使い方も考える。 楽天は店舗向けに、問い合わせ対応や分析を手伝うAIを提供しています。説明会で紹介された店舗では、月の問い合わせ対応が約67時間から約20時間に減りました。自社の顧客や代理店の手間をAIで減らすことは、取引を続けてもらう理由になります。

AIの成果を金額で測り、売上に近い業務から順に広げていくことが、AI化を「導入した」で終わらせない分かれ目です。どの業務から手を付け、何で測るかの整理に迷ったときは、外部の知見を借りる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つです。

ai-remote-worker.com AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援 営業・マーケティングのAI化を、月額定額または成果確認後払いで。実装まで踏み込む伴走型の支援です。

注意して読むべき点

  • 255億円は同社が算出した数字で、算出方法の詳細は公表されていません。定義は「楽天の各サービスにおけるAIプロジェクトを通じたコスト削減と売上成長による利益」とだけ示されており、第三者による検証は確認できませんでした。「AIがなかった場合」との比較の置き方も開示されていません
  • 「255億円」はもう1つ別の意味でも登場します。利益創出額の255億円(2025年実績)とは別に、パーソナライズ検索が生む流通総額を「年間255億円」としていますが、こちらは楽天市場でのテスト結果に基づく試算で、利益ではなく流通総額です
  • 広告の数字は導入前後の比較で、すべてがAIの効果とは言えません。RPP経由の流通総額13.8%増・広告収入10.9%増は、2024年7月〜2025年3月と2025年7月〜2026年3月の比較で、同じ期間の市場全体の伸びや販促の影響を取り除いた数字ではありません。国内の広告売上の伸び(13.0%・15.6%)も同様です
  • AIコンシェルジュの41%・17%は、使った人と使わなかった人の比較です。2026年5月1〜25日に、従来の検索経由とAIコンシェルジュ経由の購入を比べたもので、もともと購買意欲の高い人がAIを使っている可能性は除かれていません。Rakuten AIを体験した利用者は未体験者より7倍頻繁に再来訪した(2025年11月26日〜2026年1月26日)という数字も同じ注意が必要です
  • 2026年の目標とRaptorの43億円は見込みです。2026年の利益創出額は「2024年の3倍」という目標で、実績はまだ開示されていません
  • 店舗の事例は1社の発言です。月67時間→約20時間は、説明会に登壇した1店舗(プチギフト店)が問い合わせ対応時間について報告したもので、全店舗の平均ではありません。この記事の店舗関連の数字は説明会の報道で確認したもので、楽天のプレスリリースでは確認できていません

よくある質問

Q. 楽天グループはAIでどのくらいの利益を出しているのですか?

同社の決算説明会資料(2026年2月12日)によれば、AI活用による利益創出額は2024年に105億円、2025年に255億円です。2025年は目標の210億円を上回り、2026年は2024年の3倍を目標にしています。いずれも同社が算出した数字で、算出方法の詳細や第三者の検証は公表されていません。

Q. 楽天市場の広告では、AIに何を任せているのですか?

検索連動型広告(RPP)では、配信面ごとの配信量や入札の強弱をAIが調整する自動最適化を2025年7月から順次入れ、11月に全店舗へ導入を完了しました。ターゲティングディスプレイ広告では、キャンペーン設計、クリエイティブ作成、広告審査、入札、効果の評価にAIを使っていると説明しています(第1・第2四半期決算資料)。

Q. AIコンシェルジュを使うと、買い物はどう変わったのですか?

2026年5月1〜25日の比較で、AIコンシェルジュ経由の購入は従来の検索経由より購入までの時間が約41%短く、平均注文単価は17%高かったとされています(第2四半期決算資料・2026年8月10日)。ただし使った人と使わなかった人の比較なので、利用者の購買意欲の違いが含まれている可能性があります。

Q. 中小企業でもこの事例を真似できますか?

規模は大きく違いますが、考え方は流用できます。AIの成果を金額で測る指標を1つ決めること、広告文や問い合わせへの返信など売上に近い作業から入れること、顧客や取引先の手間を減らす使い方を考えること、の3点は少人数の会社でも取り組めます。

Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?

255億円や広告の伸び率は、上場企業の決算説明会資料で公表された数字です。ただし利益創出額は同社の算出で方法の詳細は非公開、広告や接客の数字は導入前後や利用者・非利用者の比較で、市場の伸びなど他の要因を取り除いたものではありません。方向感を示す数字として読み、そのまま自社の効果の見込みに当てはめないのが安全です。

出典

出典と、その読み方

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