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テルストラ|社内で380件のAIが稼働。消費者接点の86%がセルフサービスで完結し、開発効率は20%超改善

公開 2026-08-28 / 約10

社内で稼働しているAIのユースケース数(2026年2月19日の決算説明会での説明・「今日の時点で」)

380件

出典:決算・年次報告2026-02-19時点)

地域
🇦🇺 オーストラリア(海外)
業種
通信
AI化した領域
カスタマーサービスの自動化/ソフトウェア開発/全社研修/業務効率化
出典の種別
決算・年次報告/報道

海外の最先端では、AIはもう「試している」段階を越えています。オーストラリア最大手の通信会社では、社内で380件のAIが実際に稼働し、消費者向けサービス接点の86%が人を介さずに完結しています。ソフトウェア開発の効率は20%超改善。しかもAIツールを使える社員の75%超が週1回以上使っている状態です。決算説明会で経営陣が自ら語った到達点を、そのまま追っていきます。

この事例の要点

  • 社内で稼働しているAIのユースケースは380件(2026年2月19日時点の説明)。すでに複数手順の作業を担うエージェント型の展開に入っている
  • ソフトウェアパートナーを400社超から2社(コグニザントとインフォシス)に統合し、開発効率は20%超改善、市場投入とリリースサイクルは15〜20%高速化。APIフローは12%改善、不具合率は29%改善
  • 請求・注文追跡・プリペイドチャージなど、消費者向けサービス接点の86%がデジタルセルフサービスで完結
  • 2025年11月に投入した顧客向け生成AIアシスタントで、AIで問い合わせを自己解決できた顧客がほぼ3倍
  • AIツールを使える社員の75%超が週1回以上使用
  • 2026年度上期に約9,000人が社内の「Data & AI Academy」の講座を修了
  • 基礎的営業費用を1億7,900万豪ドル(2.4%)削減。同社はそのために「一部の職務を減らす、厳しいが必要な判断」が必要だったと説明
  • 記者に「失われた雇用のうちAIによるものはどれくらいか」と問われ、CEOは割合を示さず、「今日の時点で、AIに直接取って代わられたと言える職務はない」と述べた

どんな会社か

オーストラリア最大手の通信会社です。報道によれば、2025年(暦年)に2,356の職務を削減し、人員は7%超減って29,000人強になったとされています(この数字は決算説明会の書き起こしには出てきません)。

何をAI化したのか

領域内容
ソフトウェア開発大半のエンジニアがGitHub Copilotを使用。テスト・品質保証・アーキテクチャ保証・変更管理・移行にもAIを適用
カスタマーサービス2025年11月にtelstra.comで顧客向け生成AIアシスタントを提供開始(プラン確認・SIM有効化・パスワードの再設定など)。当四半期中にMyTelstraアプリへ拡大予定
顧客体験全般ネットワークの耐障害性強化、詐欺からの顧客保護、問題が起きる前の解消
人材Data & AI Academyで上期に約9,000人が受講

なぜ380件まで広げられたのか

テルストラの公表値。社内AIユースケース380件、開発効率20%超改善、消費者接点の86%がデジタルセルフサービスで完結、AIツール利用者の75%超が週1回以上使用
テルストラの公表値。社内AIユースケース380件、開発効率20%超改善、消費者接点の86%がデジタルセルフサービスで完結、AIツール利用者の75%超が週1回以上使用

380件は、一気に増やせる数字ではありません。同社の説明から読み取れる土台は3つです。

① 土台を1つに寄せた。ソフトウェアパートナーを400社超から2社に統合し、開発効率20%超の改善とリリースサイクル15〜20%の高速化につなげています。使う場所が散らばっていると、AIも散らばります。

同社の技術担当役員はこの点を、「土台を正しく作らなければ、AIの運用コストがAIの便益を上回ってしまう」という言い方で説明しています。ここまでスケールした会社が最初に投資したのは、AIそのものではなく足場のほうでした。

② 使える人を組織的に増やした。2026年度上期だけで約9,000人が社内の「Data & AI Academy」の講座を修了しています。

③ 使われているかを見ている。AIツールを使える社員の75%超が週1回以上使用、という形で継続の度合いを把握しています。

そして、この会社の説明が信頼できる理由がもう1つあります。AIの効果と人員削減を、同じ決算説明会で並べて語っていることです。基礎的営業費用を1億7,900万豪ドル(2.4%)削減し、そのために「一部の職務を減らす、厳しいが必要な判断」が必要だったと説明しています。

質疑では、記者がCEOにこう聞いています。過去12か月に失われた雇用のうち、AI導入に関係するものはどれくらいの割合か。

CEOの答えは、割合を示すものではありませんでした。要旨はこうです。

  • AIの変化の速さは予測できない。社内でも「自分の仕事はどうなるのか」という問いが出ている
  • だからこそ、いま注力しているのは社員のスキルを上げることと、ツールを使える状態にすること
  • 職務に影響を与える判断は難しいが、競争力を保つために必要な判断だった
  • 今日の時点で、AIに直接取って代わられたと言える職務はない
  • ただし、事業のデジタル化とAIへの投資が、より効率的な事業を生んでいるのは事実

ここまで進んだ会社のトップが、注力先として最初に挙げているのがスキルとツールの整備だという点は、規模に関係なく効く示唆です。効率化の投資の一部としてAIがあり、その効率化の結果として職務が減った、という構造で語られています。

中小企業が真似できる3点

同じ方向に踏み出すための、最初の3歩です。規模も業種も違いますが、持ち帰れることがあります。

① 「使える人を増やす」に予算を割く

上期だけで9,000人が社内講座を受けています。ツールの費用より研修に人と時間をかけている構造です。5人の会社でも、月1時間の勉強会を確保するかどうかで結果が変わります

② 週次の利用率を見る

同社は「アクセス権のある社員の75%超が週1回以上使う」と説明しています。導入率ではなく継続率で見ているのがポイントです。入れた数ではなく、使い続けている人の数を数えます。

③ 効果を人員削減で語らない

同社もAIと雇用の因果を断定していません。社内で説明するときも「AIで何人減らせる」ではなく「どの工程が何分短くなったか」で語るほうが、現場の協力を得られます。工程の話は検証できますが、人員の話は反発しか生みません。

こうした「どの工程を、どれだけ短くできるのか」の切り分けは、業務の中身が分かっていないと出せません。営業・マーケの領域で社内に担い手がいない場合は外部に任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。

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注意して読むべき点

  • 開発効率20%超・リリース15〜20%高速化は、AI単独の効果ではありません。ソフトウェアパートナーを400社超から2社に統合した効果と一体で語られています
  • 「86%がセルフサービスで完結」はAI導入前からのデジタル化の積み上げを含みます。生成AIアシスタントの提供開始は2025年11月です
  • 380件という数字は、決算説明会の質疑で経営陣が口頭で述べたものです。1件あたりの規模や効果は開示されていません
  • 人員削減の数字(2,356職務・7%超減・29,000人強)は報道ベースで、決算説明会の書き起こしには出てきません
  • CEOの「AIに直接取って代わられた職務はない」という発言は、上場企業のCEOが公の場で答えた内容です。開示の立場を踏まえて読む必要があります
  • CEOの回答は「AIが仕事を奪った」という単純な因果を示すものではなく、同時に「AIとは無関係だ」とも言っていません。効率化の投資の一部としてAIがある構造のため、AI単独で何人分の仕事が減ったかは会社自身も切り分けていません
  • AIと雇用の関係について、この事例から一般的な結論を引き出すことはできません。1社の説明として読むのが妥当です

よくある質問

Q. テルストラの人員削減はAIが原因なのですか?

会社自身が切り分けていません。決算説明会で記者に「過去12か月に失われた雇用のうちAI導入に関係する割合はどれくらいか」と問われたCEOは、割合を示さず「今日の時点で、AIに直接取って代わられたと言える職務はない」と答えています。同時に「デジタル化とAIへの投資が、より効率的な事業を生んでいるのは事実」とも述べており、AIは効率化投資の一部という位置づけです。なお2025年(暦年)に2,356職務を削減し人員が7%超減ったという数字は報道ベースで、決算説明会の書き起こしには出てきません。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

「使える人を増やす」ことへの投資です。同社は2026年度上期だけで約9,000人が社内講座を修了しており、ツールを配る以上に研修へ人と時間をかけています。5人の会社なら、月1時間の勉強会を確保できるかどうかが同じ意味を持ちます。そのうえで、導入率ではなく週1回以上使っている人の割合を数えると、同社と同じ見方ができます。

Q. 「開発効率20%超改善」はAIだけの成果ですか?

違います。同社はソフトウェアパートナーを400社超から2社に統合したうえで、この数字を語っています。APIフロー12%改善・不具合率29%改善も同じ文脈です。技術担当役員は「土台を正しく作らなければ、AIの運用コストがAIの便益を上回る」とも述べており、AI導入の前段に整理の工程があったと読むのが妥当です。

Q. 「消費者接点の86%がセルフサービスで完結」は生成AIの成果ですか?

一部です。86%は請求・注文追跡・プリペイドチャージなどを含む数字で、生成AI以前からのデジタル化の積み上げを含みます。生成AIアシスタントの提供開始は2025年11月で、こちらは「AIで問い合わせを自己解決できた顧客がほぼ3倍」という別の数字で説明されています。

Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?

効果の数字はすべて同社の決算説明会での説明で、第三者が検証したものではありません。一方、人員削減の規模は報道側から出ています。効果は自社発表・不都合な数字は外部から、という非対称は多くの事例に共通するので、両方を並べて読むのが安全です。

出典

出典と、その読み方

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