日常的にAIを使う社員が53%に。半年で9ポイント増|ドイツテレコム(Deutsche Telekom)の事例
公開 2026-09-04 / 約8分
日常的に業務でAIを使っていると答えた社員の割合(2025年11月・社内調査)
53%
出典:決算・年次報告(2026-02-26時点)
- 地域
- 🇩🇪 ドイツ(海外)
- 業種
- 通信
- AI化した領域
- 社内AI利用率の測定/社員研修/社内チャットボット/ネットワーク運用のエージェント
- 出典の種別
- 決算・年次報告
欧州最大手の通信会社では、社員の半分以上が日常的に業務でAIを使う状態になっています。2025年11月の社内調査で53%。半年前から9ポイント増えました。しかもこの会社は、その割合を年次報告に書いて公開しています。どうやって半分を越えたのかを追っていきます。
この事例の要点
- 社員の53%が「日常的に業務でAIを使っている」と回答(2025年11月の社内調査)
- 2025年5月の調査から9ポイント増。「日常的に使っていない」人は8ポイント減
- 目標は2段構え。2026年に社員の90%が日常的にAIツールを使う状態、2028年に社員の100%がAIを使いこなすスキルを持つ状態(いずれもT-Mobile US除く)
- 2024年に3万人へ「AIを効果的に使う(プロンプト)」研修を実施。2025年もプロンプトのスキルを標準的な能力として3万人が習得
- 2025年、社内の知識共有の取り組み「LEX」は6,500回超のセッション・参加5万2,000件超
- 2023年には6万6,000人がAIの研修に参加
- 社内チャットボット「AskT」は2024年に開始し、2025年第1四半期にギリシャ・ハンガリーへ展開
どんな会社か
ヨーロッパ最大手の通信会社です。売上規模も社員数も大きく、研修に投じられる予算は日本の中小企業とは比較になりません。ただしこの事例で見るべきは予算の大きさではなく、利用率を測って動かしにいく運用のほうです。そこは規模に関係なく真似できます。
何をAI化したのか
- 社内の問い合わせ — チャットボット「AskT」。社内データと外部知識の両方を参照する
- ネットワーク運用 — 移動通信の品質を改善する「RAN Guardian Agent」
- 顧客対応 — 生成AIを組み込んだ「Frag Magenta」
- 商品 — AI検索を備えた「Magenta AI」、Perplexityの技術を用いた端末
- 人材 — プロンプト研修を標準能力として全社に展開
なぜ半年で9ポイント動かせたのか

半年で9ポイントという「動いた量」を言えるのは、同じ質問を半年ごとに社員に聞いて、変化を追っているからです。
2025年5月の調査と11月の調査を比べて9ポイント増。定点で測っているので「動いた量」を言えます。測っているから、施策が効いたかどうかが分かる。ここが、この会社が数字を出せている理由です(5月時点の割合そのものは公表されていません)。
そして、その9ポイントを作ったのは単発の説明会ではありません。2023年に6万6,000人がAIの研修に参加し、2024年には3万人が「AIを効果的に使う(プロンプト)」研修を受けました。2025年も社内の知識共有の取り組み「LEX」で6,500回超のセッション・5万2,000件超の参加があり、同社は年次報告の要約で、この5万2,000件をAIをテーマにしたセッションでの参加と説明しています。毎年積み上げた結果として半分を越えているという構造です。
目標は2段構えになっています。2026年に90%が日常的にAIツールを使う状態、そして2028年に100%が「自信を持って、責任を持って、価値を生む形で」AIを使えるスキルを持つ状態(いずれもT-Mobile US除く)。つまり100%は使用率の目標ではなくスキル習得の目標で、53%と直接比べるべき目標は2026年の90%のほうです。配って終わりにせず、測って、研修を回し続ける。それがここまでの53%を作っています。
中小企業が真似できる3点
同じ方向に踏み出すための、最初の3歩です。規模は真似できませんが、この運用は5人の会社でもできます。
① 「使っているか」を本人に聞く。半年ごとに
利用ログを分析する必要はありません。「この半年、業務でAIを使いましたか」を全員に聞いて記録するだけです。2回聞けば増減が出ます。1回目の数字は低くて構いません。比較対象を作ることが目的です。
② 数字が低いことを失敗と扱わない
53%を「低い」と責めれば、次の調査では正直な回答が返ってきません。同社は増減を追う材料として扱っています。責めるための数字にすると測れなくなるというのは、営業のKPIと同じ構造です。
③ 研修は一度で終わらせない
2023年に6万6,000人、2024年に3万人、2025年もLEXで6,500回超のセッション。毎年やっています。一度の説明会で定着した組織は存在しないという前提で計画を組むほうが現実的です。
こうした「測って、使われる状態まで持っていく」工程は、業務そのものを分かっている人が伴走しないと形になりません。営業・マーケの領域で社内に担い手がいない場合は外部に任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。
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- 53%は社員の自己申告による社内調査です。実際の利用ログに基づく数字ではありません
- 「日常的に」の定義は公表されていません。社員ごとに解釈が違う可能性があります
- 年次報告のこの項目では、効率化やコスト削減の金額・率は開示されていません。利用率の話と効果の話は別です
- 研修の人数(6万6,000人・3万人)は受講者数で、身についた人数ではありません
- 2028年の100%は「使用率」ではなく「スキルを持っている状態」の目標です。使用率の目標は2026年の90%で、いずれもT-Mobile USを除いた範囲です
- LEXの数字は、同社の要約では「6,500回超のセッション/AIをテーマにしたセッションでの参加5万2,000件」、本文では「6,500回超のLEXセッション/参加5万2,000人超」と書かれており、5万2,000件がAI関連に限った数か全体の数かは読み取れません。ここでは低く見て「AI関連が中心の内訳は不明」と扱うのが安全です
- 90%・100%の目標はT-Mobile USを除く範囲ですが、53%の調査に同じ除外が適用されているかは明記されていません。両者の対象範囲が一致する保証はない点に注意が必要です
よくある質問
Q. 社員のAI利用率53%は高いのですか、低いのですか?
同社自身は達成点として扱っていません。2026年に90%という目標を別に置いているため、53%は道半ばの通過点という位置づけです。ただし注目すべきは水準よりも、半年で9ポイント動いたことを言えている点です。同じ質問を定点で聞いているからこの比較ができます。自社の水準を他社と比べるより、自社の前回と比べられる状態を作るほうが実用的です。
Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?
「この半年、業務でAIを使いましたか」を全員に聞いて記録することです。利用ログの分析基盤は要りません。2回聞けば増減が出ます。同社が9ポイントという数字を出せているのも、半年ごとに社員へ同じ質問をしているからです。1回目の数字が低くても構いません。比較対象を作ることが目的です。
Q. 公表された数字はどこまで信用できますか?
53%は社員の自己申告による社内調査で、実際の利用ログに基づく数字ではありません。「日常的に」の定義も公表されていないため、社員ごとに解釈が違う可能性があります。一方で、同社がこの数字を年次報告という監査の目が入る文書に載せている点は、社内資料や広報記事より確度が高いと考えてよい材料です。
Q. AIを導入すればコストはどれくらい下がりますか?
この事例からは分かりません。年次報告のこの項目で開示されているのは利用率と研修の規模で、効率化やコスト削減の金額・率は開示されていません。利用率が上がったことと、コストが下がったことは別の話です。効果を知りたい場合は、この事例ではなく金額を開示している事例を当たってください。
Q. 研修は何回やれば定着しますか?
回数の答えはありませんが、この事例が示しているのは毎年続けているという事実です。2023年に6万6,000人がAI研修に参加し、2024年に3万人がプロンプト研修を受け、2025年もLEXで6,500回超のセッションを実施しています。それでも利用率は53%です。一度の説明会で定着する前提を置かず、複数年の計画として組むほうが現実的だと言えます。
出典
出典と、その読み方
- 決算・年次報告2026-02-26Data & AI|Deutsche Telekom Annual Report 2025
決算・IRの開示資料(監査済みの数値とは限らない)
- 決算・年次報告2026-02-26Employee development|Deutsche Telekom CR Report 2025
決算・IRの開示資料(監査済みの数値とは限らない)
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