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社内AIの正答率を44%→80%→90%へ。約1か月で壁を突破した|DeNAの事例

公開 2026-09-02 / 約12

社内AIヘルプデスクの回答正答率(2026年4月時点・導入初期は44%)

90%

出典:自社発表2026-04-23時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
インターネット・ゲーム・ライブコミュニティ
AI化した領域
社内問い合わせ対応/社内ナレッジの整備/会議・議事録/調査・資料作成/全社のAI浸透/AIスキルの評価
出典の種別
自社発表/報道

日本の最先端では、社内AIが「だいたい答えてくれる」水準を越えています。社内問い合わせに答えるAIの正答率は44%→80%→90%。さらに全社員のAI活用度を独自指標で測り、現場の活用事例100件をスライドごと社外へ公開するところまで来ています。しかも、どうやって90%まで届いたのかの過程が技術記事として全部公開されています。

この事例の要点

  • 社内問い合わせに答えるAI「Findout」の正答率は、導入初期44%から80%へ(2025年10月時点)
  • そこで停滞。誤答の原因を分析すると70%が「ドキュメント(=ナレッジ)不足」で、RAGのチューニングだけでは解決できないと結論づけている
  • ナレッジ管理ツール「Ledge」を開発。約1か月で80%→90%、ナレッジ作成の工数は約半分以下に短縮(2026年4月時点)
  • 精度の評価は約100件のテストケースで行い、AIによる採点(正確性を0〜4点、3点以上を合格)と人による採点を併用している
  • 社内のAI活用事例を100件、全101ページのスライドでそのまま公開(2025年12月23日)。社内の事例シートには200件ほどが集まり、重複を除いて発信。後半は勉強会へのヒアリングで掘り起こして100本を完走した
  • 全社員のAI活用度を測る指標「DARS」を2025年8月に発表・同月末から運用。個人・組織それぞれレベル1〜5で、半期ごとに目標設定。個人の人事評価には直結させない
  • 公開された100件を当サイトで数えたところ、成果欄に数字が入っていたのは13件Geminiが登場するのは63件だった

どんな会社か

1999年設立、連結従業員数2,483名(2026年3月末時点)。ゲーム、ライブコミュニティ、スポーツ・スマートシティ、ヘルスケア・メディカルを手がけています。

参考にするうえで前提が2つあります。ITの会社であること、そして2025年2月に創業者の南場智子氏(当時は会長、現・代表取締役社長兼CEO)がAI活用を全社方針として宣言していることです。現場が動いた背景に経営の号令があった事例だという点は、そのまま真似できない部分です。

何をAI化したのか

① 社内の問い合わせ対応(IT領域)

社内からのIT関連の質問に答えるAI「Findout」を運用しています。目標は「IT領域の質問に対する回答精度100%」。改善の過程は2本の技術記事で公開されています。

時点正答率そのとき何をしたか
導入初期44%
2025年10月80%評価基準と約100件のテストケースを整備し、AIの学習対象ナレッジを絞り込み、「良い書き方」のテンプレートで質を整えた
2026年4月90%誤答の原因分析から、ナレッジ管理ツール「Ledge」を開発(約1か月)

注目すべきは測り方を先に作っている点です。約100件のテストケースを用意し、AIが「正確性」を0〜4点で採点して3点以上を合格とする基準と、人が採点する基準を併用しています。精度を語れる状態にしてから、精度を上げにいっています。

② 現場のAI活用を100件そのまま公開

2025年12月23日、社内のAI活用事例100件を全101ページのスライドで公開しました。1事例1ページで「課題/解決策/成果/利用者の声」に整理された形式です。

きっかけは全社員に展開した「AI活用事例シート」で、社内から200件ほどがあっという間に集まったと説明されています。序盤はこの200件から重複や類似を除いて発信し、ネタが出尽くした後半は各事業部や職種別の勉強会に直接ヒアリングして掘り起こし、100本を完走したとのことです。当初は2〜3日に1本の発信予定でしたが、「100本紹介する頃には情報が陳腐化してしまう」という議論から毎日発信に切り替えたとのことです。

③ AI活用度を測る指標「DARS」

2025年8月6日に発表し、同月末から、全社のAI活用スキルを評価する独自指標「DeNA AI Readiness Score(DARS)」の運用を始めました。個人レベル1〜5(基礎的な知識・利用習慣があるレベルから、AIを軸に事業変革ができるレベルまで)と、組織レベル1〜5を定義し、半期ごとに目標設定をします。

設計で目を引くのは、個人の人事評価には直結させず、グレード(等級)における推奨要素として位置づけていることです。

なぜ90%まで届いたのか

DeNAの公表値。社内AIヘルプデスクの正答率は初期44%から80%へ、80%で停滞した誤答の原因の70%はドキュメント不足で、ナレッジ管理ツール開発後は約1か月で90%に到達
DeNAの公表値。社内AIヘルプデスクの正答率は初期44%から80%へ、80%で停滞した誤答の原因の70%はドキュメント不足で、ナレッジ管理ツール開発後は約1か月で90%に到達

80%で止まったとき、選択肢は2つありました。モデルや検索の設定をさらに調整するか、止まっている理由を調べるか。

同社は後者を選び、誤答を原因別に分類しました。結果は、原因の70%が「ドキュメント(=ナレッジ)不足」。つまり答えが社内のどこにも書かれていない、あるいは古いという状態です。

ここから先が実務的です。ドキュメント不足はRAGの調整では解けないと判断し、ナレッジ側を直す道具を作りました。「Ledge」の機能は、AIによる更新提案、リンク切れの検知、古い記述の鮮度チェックです。書く作業そのものを軽くして、書かれる量を増やすという設計です。結果として約1か月で90%、ナレッジ作成の工数は約半分以下になったと報告されています。

「AIの精度が出ない」と言われる現場のかなりの部分は、この構造だと考えられます。AIは社内に無い答えを出せません。

100件を全部読んで数えてみた

公開されたPDFは誰でも読めるので、当サイトで全101ページ(表紙1ページ+事例100件)を読み、機械的に数えました。以下は同社の公表値ではなく、当サイトの集計です。

数えたこと件数
成果欄に数字(時間・割合・件数・「ゼロ」等)が書かれていた事例13件
本文に「Gemini」が出てくる事例63件
本文に「NotebookLM」が出てくる事例13件
本文に「Cursor」が出てくる事例11件
本文に「非エンジニア」「ビジネス職」「未経験」「初心者」のいずれかが入る事例7件

数字が入っていた13件の中身は、たとえばこうです。

  • 口コミをAIで分析してレポート作成が最大4時間→30分程度(GeminiのDeep Research活用)
  • 社内問い合わせの自動回答で、人が対応するチケット件数が20%減、解決時間が40%短縮
  • 朝会の議事録を再要約してSlackへ自動共有し、毎朝5分程度の作業を削減
  • 請求書発行スクリプトをAIでリファクタリングして処理手順を3割削減

つまり87件は数字のない事例でした。これは資料の欠点ではありません。1件あたり1ページで「課題・解決策・成果・利用者の声」を書く形式であり、成果の測定ではなく使い方の共有を目的にした資料だからです。

ここから読み取れることが2つあります。ひとつは、「使い方」なら100件を出せる状態まで現場が動いているということ。もうひとつは、AIに全社で振り切った会社でも、個々の業務改善を数字にするのは簡単ではないということです。順番として、まず使い方が広がり、測定は別の仕組み(DARSやテストケース)で担保しにいっています。

なお登場するツールはGeminiが63件で突出し、以下NotebookLM 13件、Cursor 11件、GAS(Google Apps Script)11件と続きます。多くは特別なAI基盤ではなく、日常の業務ツールの延長でした。

中小企業が真似できる3点

同じ方向に踏み出すための、最初の3歩です。2,483名の会社の話ですが、規模に依存しない部分があります。

① 精度を上げる前に、誤答を分類する

「AIが使えない」で止まる前に、外れた回答を20件でも並べて原因を分ける。答えが社内文書に無いのか、書いてあるのに探せていないのか、書き方が古いのか。同社の結果では7割が「そもそも書かれていない」でした。ここを見ずにツールを変えても改善しません。

② 測り方を先に作る

同社は約100件のテストケースと採点基準を用意してから改善に入っています。正解セットが無いと、良くなったのか悪くなったのかが分かりません。10問でも構いません。先に作るかどうかの差です。

③ 事例を集める箱を1つ置く

事例シートを配ったら200件集まっています。社内には既に使っている人がいて、共有される場が無いだけという状態はよくあります。集める箱と、出す場(同社は毎日1本の発信)をセットで用意する。

こうした「誤答を分類する」「テストケースを作る」「業務ごとにAIを実装して使われる状態まで持っていく」工程は、その業務を分かっている人が伴走しないと形になりません。営業・マーケの領域で社内に担い手がいない場合は外部に任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。

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注意して読むべき点

  • 正答率44%・80%・90%は、いずれも同社の技術ブログで公開された自社計測値です。決算資料の開示ではなく、第三者の検証も入っていません
  • 導入初期の数字は記事間で表記が異なります。2026年4月の記事は「44%」、2025年10月の記事は「50%前後」と書かれています。当サイトは最新記事の44%を採用しましたが、どちらも同社の記述です
  • 正答率は約100件のテストケースに対する採点結果です。実際に社員から来る質問全体の正答率とは限りません
  • 対象はIT領域の社内問い合わせです。顧客対応や営業の数字ではありません
  • 90%は2026年4月時点の値で、その後の推移は公開資料では追えません
  • 「成果欄に数字があったのは13件」は当サイトの集計です。PDF全100事例の成果欄を対象に、時間・割合・件数のほか「ゼロ」のような表現も定量として数えています。ツール名の件数も、本文にその語が出てくる事例を機械的に数えたものです(同じ事例で複数のツールが登場する場合は重複して数えています)。なお37・38本目はPDFのテキスト層で見出し部分が8本目と重複していたため、当該ページを画像として目視で確認しました
  • 南場氏が示した「約3,000人で手がける既存事業を半数の人員で運営できる体制にする」という方針は構想・計画であり、達成された実績ではありません(出典:日経クロステック Active)
  • DARSの「組織レベル2」は、報道によればメンバーの5割以上が個人レベル2以上という定義です。同社は2025年度末までに全組織での到達を目標に掲げていますが、到達状況の実績値は公開されていません

よくある質問

Q. 社内AIの精度が上がらないとき、まず何を見ればいいですか

DeNAは80%で止まっていた正答率を、約1か月で90%まで動かしています。効いたのは誤答を集めて原因別に分けたことでした。同社の例では、停滞した誤答の原因の70%が「社内ドキュメントの不足」でした。答えが社内のどこにも書かれていなければ、AI側をいくら調整しても回答は出ません。ツールの入れ替えより先に、外れた回答の内訳を確認してください。

Q. RAGを入れれば社内の質問に答えられるようになりますか

DeNAは評価基準とテストケースを整え、学習対象のナレッジを絞り込み、「良い書き方」のテンプレートで質を上げることで、44%から80%まで到達しています。そこから先はナレッジ管理ツール「Ledge」を別に開発して90%に届いており、条件は「答えが社内文書に書かれていること」です。検索の精度と、社内文書の充実度は別の問題として扱う必要があります。

Q. AI活用事例を社内から集めるにはどうすればいいですか

DeNAは全社員に「AI活用事例シート」を展開し、200件ほどをあっという間に集めています。そのうえで重複や類似を除いて社外へ毎日1本ずつ発信し、ネタが尽きた後半は勉強会に直接ヒアリングして掘り起こしました。集める箱と、出す場をセットで用意するのが要点です。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか

連結2,483名のIT企業の事例ですが、規模に依存しない部分が2つあります。ひとつは誤答を原因別に分けることで、DeNAの場合は停滞していた誤答の原因の70%が社内ドキュメントの不足でした。もうひとつは測り方を先に作ることで、同社は約100件のテストケースと採点基準を用意してから改善に入っています。10問の正解セットからでも順番は同じです。加えて、事例を集める箱を1つ置くだけでも、社内で既に使っている人のやり方が見えてきます。

出典

出典と、その読み方

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