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日清食品グループ|CEOの一言から22日で社内AIを全社公開し、営業部門の利用率を68%まで引き上げた

公開 2026-08-26 / 約8

CEOが入社式でAIに触れてから、社内AIを全社公開するまでの日数(2023年4月3日→4月25日)

22日

出典:決算・年次報告2024-03-14時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
食品
AI化した領域
社内対話型AI/営業の商談準備/プロンプトの共通化/社内問い合わせ対応
出典の種別
決算・年次報告/自社発表

日本の最先端では、社内AIの立ち上げがここまで速くなっています。CEOが入社式でChatGPTに触れた22日後には、社内AIがグループ約3,600人の手元で動いていました。しかも配って終わりではなく、営業部門の利用率を月別で68%まで引き上げ、年間32,591時間の削減見込みを算出するところまで来ています。その過程を、CIO自身がIRの場で公開しています。

この事例の要点

  • 2023年4月3日の入社式でCEOがChatGPTで生成したメッセージを披露。その22日後の4月25日に社内AI「NISSIN-GPT」を国内事業会社(一部を除く)の社員約3,600人へ公開
  • 営業部門の月別の利用率は5月28% → 11月68%(2023年。途中は6月37%、7月36%、8月49%、9月65%、10月64%)
  • 年間作業工数32,591時間の削減見込み。うち日清食品セールスの営業(BS部)が25,120時間、マーケティング部が4,631時間
  • 社内問い合わせ業務では、適切な回答のヒット率が55%→70%、作業工数の削減率が24%→32%(2023年10月→2024年3月)
  • 部門ごとに1か月の型を回した。①対象業務の洗い出し ②研修2時間 ③プロンプトテンプレート作成 ④効果算出と経営層への報告
  • 今後の方針は2軸。「社内の情報を把握しているAIの構築」と、「AIを利用するかどうかの判断を個々に委ねない」業務プロセスの確立
  • 2024年3月時点の名称は「NISSIN AI-chat powered by GPT-4 Turbo」。グループ会社への展開と海外展開を進める方針

どんな会社か

即席麺を中心とした食品メーカーのグループです。IT企業ではありません。営業・マーケティング・生産・品質保証といった、多くの会社と同じ職種構成を持っています。だからこそ参考にしやすい事例です。

何をAI化したのか

営業領域では、対象業務を32件洗い出して4つに分類しています。

分類業務の例
商談準備得意先の経営課題の要約、小売の経営課題調査、ターゲット設定、インサイト調査
作業プレゼン資料の骨子作成、トークスクリプト作成、資料の要約、商品コメントの文字数調整
会議議事録作成、商談内容の要約と打ち手提案、目標進捗の報告
能力開発商談ロールプレイング、プレゼンのアジェンダ評価

営業以外にも、マーケティング部門(リリースのたたき台作成、コピー案検討、疑似グループディスカッション)、内部監査部門(監査計画のリスク評価)、法務部門など、部門ごとに具体的なプロンプトを作らせています

なぜ22日で公開でき、68%まで伸ばせたのか

日清食品グループの公表値。CEOの一言から22日で社内AIを公開、営業部門の利用率は5月28%から11月68%へ、年間32,591時間の削減見込み
日清食品グループの公表値。CEOの一言から22日で社内AIを公開、営業部門の利用率は5月28%から11月68%へ、年間32,591時間の削減見込み

ここまで来られた理由は、大きく2つに整理できます。

① 22日で公開した

4月3日の入社式から4月25日の公開まで、社内では方針検討・専用環境構築・経営会議承認・周知啓蒙を並行して進めています。周知だけでも、社内報3回、ユーザー説明会3回、社内ポータル告知、デジタルサイネージ告知を打っています。

リスク対応も先に決めています。同社はリスクを2点に集約しました。入力内容の情報漏洩と、回答の不適切な二次利用。対策は「自社専用環境を構築し、業務利用をその環境のみに限定する」ことでした。

議論を尽くしてから始めたのではなく、リスクの整理と環境構築を同時に走らせているのが速さの理由です。

② 「使うかどうか」を個人に任せない

利用率は自然には上がりませんでした。営業部門は5月28%、6月37%、7月36%と一度停滞し、そこから8月49%、9月65%、10月64%、11月68%と伸びています。

伸びた時期に何をしたかというと、部門ごとに1か月のプロジェクトを回して、その部門の業務に合ったプロンプトテンプレートを自分たちで作らせたのです。研修は2時間。あとは週1回1時間の定例で作り方を解説し、Teamsで随時質問を受ける形でした。

そしてCIOは、今後の方針としてこう述べています。AIを利用するかどうかの判断を個々に委ねるのではなく、AIの利用を予め前提とした業務プロセスを確立していく。

これは「現場が使ってくれない」という問題への、実務的な答えです。使うかどうかを選べる状態にしている限り、使わない人は使わない。

中小企業が真似できる3点

同じ方向に踏み出すための、最初の3歩です。約3,600人からの話ですが、規模に依存しない部分があります。

① リスクの整理と環境構築を同時に走らせる

「まずリスクを検討してから」と順番にすると、半年経ちます。同社はリスクを2点に絞り、対策を「専用環境に限定する」の一手に置きました。論点を絞れば、検討と構築は並行できます

② 業務を書き出してから、プロンプトを作る

同社は営業の32業務を先に洗い出しました。ツールを配ってから「何に使えるか考えて」と言うと使われません。「この業務で使う」という単位まで降りてから、その業務用の指示文を作る。順番が逆だと定着しません。

③ 利用率を月次で出す

28%→37%→36%と停滞した月があったことまで公開されています。月次で出していれば、停滞に気づいて手を打てます。年に1回しか見ないと、翌年に「効果がなかった」と結論が出ます。

こうした「業務を書き出して、その業務用のAIを実装し、使われる状態まで持っていく」工程は、その業務を分かっている人が伴走しないと形になりません。営業・マーケの領域で社内に担い手がいない場合は外部に任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。

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注意して読むべき点

  • 年間32,591時間は「削減見込み」です。資料にも見込みと明記されており、実績として測定された数字ではありません
  • 32,591時間のうち25,120時間(約77%)が日清食品セールスの営業(BS部)という1部署の見込みです。18部署の合計値であり、全社に均等に効いた数字ではありません
  • 営業部門の利用率68%は2023年11月の値です。10月は64%で、単調に上がり続けたわけではありません。2023年12月以降の推移は同資料では追えません
  • 社内問い合わせのヒット率70%は、残り30%は適切な回答が出ていないという意味でもあります
  • 「22日」はCEOの入社式(4月3日)から公開(4月25日)までの期間です。その前に検討がなかったことを示す資料はありません
  • 利用率の定義は公表されていません。資料の表記は「営業部門における月別利用率」のみで、その月に1回でも使えば数えられている可能性があります。深く使い込んでいる人の割合とは限りません

よくある質問

Q. 22日で社内AIを公開したというのは本当ですか?

CIOのIR資料に載っている公開スケジュールでは、2023年4月3日の入社式から4月25日の公開まで、方針検討・関係部署調整・経営会議承認・専用環境構築・周知啓蒙が並行して進んでいます。日数としては22日です。ただしこの資料は4月3日より前に検討がなかったことまでは示していないので、「入社式をきっかけに22日で公開まで漕ぎつけた」と読むのが正確です。

Q. 中小企業がこの事例から最初に真似すべきことは何ですか?

業務の洗い出しです。同社は営業領域で活用が見込まれる業務を32件書き出し、商談準備・作業・会議・能力開発の4つに分けてから、その業務用のプロンプトを作らせています。ツールを配って「何かに使ってみて」と言う順番では定着しません。自分の部署の業務を20〜30件書き出すだけなら、規模に関係なく今日できます。

Q. なぜ利用率が上がったのですか。研修を増やしたからですか?

研修そのものは2時間です。効いたのは、部門ごとに1か月のプロジェクトを立て、その部門の業務に合ったプロンプトテンプレートを自分たちで作らせた点だと資料からは読めます。営業では全国8ブロックの拠点からメンバーを選抜し、週1回1時間の定例で作り方を解説し、Teamsで随時質問を受ける形をとっています。

Q. 32,591時間という削減効果は実績ですか?

実績ではありません。資料に「年間作業工数 32,591時間削減見込み」と明記された見込み値です。しかも18部署の合計のうち25,120時間(約77%)は日清食品セールスの営業(BS部)1部署の見込みが占めています。自社で参考にするときは、全社平均の効果としてではなく「特定の部署で大きく効いた例」として読むのが安全です。

Q. 「使うかどうかを個人に任せない」とは、使用を強制するということですか?

資料の表現は「AIを利用するかどうかの判断を個々に委ねるのではなく、AIの利用を予め前提とした業務プロセスを確立していく」です。個人の意思を問うのではなく、業務の手順そのものにAIを組み込む方向を指しています。同社はもう1つの軸として、社内ドキュメントや業務システムの情報を参照して回答するAIの構築も挙げています。

出典

出典と、その読み方

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