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取引企業の8割にAI導入、総合的な生産性は約11倍|サイバーエージェントの事例

公開 2026-08-15 / 約9

「極予測AI」を導入した広告事業の取引企業の割合(同社発表・2024年12月時点)

8割

出典:自社発表2024-12-12時点)

地域
🇯🇵 日本
業種
インターネット広告・メディア・ゲーム
AI化した領域
広告クリエイティブ制作/AI成熟度の測定/全社のAI活用/AI研究開発組織
出典の種別
決算・年次報告/自社発表

日本の最先端では、AIは実験ではなく事業そのものになっています。広告クリエイティブをAIで制作する「極予測AI」は同社の広告事業において8割の取引企業に導入され、総合的な生産性は約11倍。2016年から10年運営してきたAI研究開発組織を土台に、サイバーエージェントはここまで来ています。

この事例の要点

  • 広告クリエイティブをAIで制作する「極予測AI」は、2020年5月の提供以来同社の広告事業において8割の取引企業に導入(2024年12月発表)
  • 同社の説明では、AIクリエイターの制作効率が5.6倍、制作したクリエイティブの効果が高い確率が2倍で、総合的な生産性は約11倍
  • 広告主数は約1,400社(2025年実績)
  • エンジニア1人あたりの生産性が約1.5倍に向上(同社公表)
  • AI研究開発組織「AI Lab」を2016年に新設。研究員約100名(2026年3月時点)、2025年の論文採択数は87本、社会実装は年間約165件
  • AI成熟度を5段階で定義し、68項目の質問で全社70チームを評価。「上位25%とそれ以下のギャップが大きい」ことが分かった
  • それでも投資を続ける判断をしている。FY2025のインターネット広告事業の営業利益は176億円・前期比14.0%減で、理由の1つに「AIを活用した新規事業への投資等」を挙げている

どんな会社か

インターネット広告、メディア(ABEMA)、ゲームを手がける企業です。グループのエンジニアは約1,800名で、うち8割程度がソフトウェアエンジニア。AI研究組織を2016年から10年運営している会社という点は、自社と比べるときの前提として大きく効きます。

何をAI化したのか

広告事業では、AIプロダクトを長期にわたって積み上げています。

提供時期プロダクト内容
2020年5月極予測AI/極予測TD効果の高いクリエイティブ・検索連動型広告文をAIが制作
2021年1月極予測LEDリアルタイムに効果予測しながら撮影する
2021年6月極予測LP/極予測トリミングLP制作、検索キーワード毎の画像の一括制作
2024年3月極予測やりとりAIクリエイティブ確認のサポート
2024年9月審査AI広告クリエイティブの審査を自動化
2025年7月極多様性プロット広告表現の偏りを可視化
2026年4月効果おまかせAI入札・配信設定を自動最適化するAIエージェント

組織も併せて作っています。AIクリエイティブBPO事業部(2024年12月新設)、生成AI検索を研究する「GEO Lab.」(2025年7月新設)、成果報酬型の広告代理店サイバーグリップ(2025年11月設立)。

社内の開発では2023年4月下旬にGitHub Copilotを導入し、同年10月から生成AI研修を開始しています。

なぜここまでできたのか|6年の積み上げと、全社を同じ物差しで測る運用

サイバーエージェントの公表値。極予測AIは広告事業の取引企業の8割に導入され総合的な生産性は約11倍、一方でFY2025のインターネット広告事業の営業利益は14.0%減
サイバーエージェントの公表値。極予測AIは広告事業の取引企業の8割に導入され総合的な生産性は約11倍、一方でFY2025のインターネット広告事業の営業利益は14.0%減

この到達点の裏側には、3つの型があります。

1つ目は、同じ領域に長く積み上げる進め方です。2020年5月の極予測AI/極予測TDから2026年4月の効果おまかせAIまで、広告クリエイティブという1つの領域に6年にわたって手を入れ続けています。組織も併走させ、AIクリエイティブBPO事業部(2024年12月新設)、生成AI検索を研究する「GEO Lab.」(2025年7月新設)、成果報酬型の広告代理店サイバーグリップ(2025年11月設立)を作りました。土台にはAI研究開発組織「AI Lab」があり、研究員約100名(2026年3月時点)、2025年の論文採択数は87本、社会実装は年間約165件という規模です。

2つ目は、全社を同じ物差しで測っていることです。同社はAI成熟度を5段階で定義し、68項目の質問で全社70チームを評価しました。約半年かけた調査です。そこで出てきたのが「上位25%とそれ以下のギャップが大きい」という結果でした。全社の導入率や平均だけを見ていると、一部の得意な人が全体の数字を持ち上げている状態に気づけません。同じ物差しで全チームを測ったから、次にどこへ手を入れるべきかが特定できています。

3つ目は、投資している期間だと言い切っていることです。FY2025のインターネット広告事業の営業利益は176億円・前期比14.0%減で、同社は理由の1つに「AIを活用した新規事業への投資等」を挙げています。これは失敗ではなく、先行投資をしている期間だと説明している開示です。この説明を先に置いているからこそ、短期の数字が下がっても投資を続ける判断ができます。

中小企業が真似できる3点

同じ方向に踏み出すための、最初の3歩です。1,800人のエンジニアもAI Labもありませんが、考え方は使えます。

① 平均ではなく「ばらつき」を見る

AI利用率が全社60%だったとして、それが「全員が6割の業務で使っている」のか「4割の人が全く使っていない」のかで、打つ手は正反対です。人別・チーム別に分けて見るだけで、やることが決まります。

② 「投資している期間」だと社内に言い切る

同社は減益の理由に投資を挙げています。社内で「今は仕込みの時期」と明示しておくと、短期で成果が出ないときに現場が責められません。逆にこれを言っていないと、3か月で「効果がない」と判断されて止まります。

③ 効果が確かめやすい制作物から入れる

同社が最初に伸ばしたのは広告クリエイティブです。成果(クリック率・効果)が数字で返ってくる制作物は、AIの効果が早く見えます。資料の下書き、メール文面、記事の初稿も同じ性質です。

こうした「測る物差しを作って、業務にAIを実装する」部分は、その業務を分かっている人が手を動かさないと形になりません。営業・マーケの領域で社内に担い手がいない場合は外部に任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。

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注意して読むべき点

  • 「8割」は同社の広告事業における取引企業のうちの割合で、2024年12月12日発表の数字です。全広告主の8割ではなく、また対象は「極予測AI」であってAIプロダクト全般ではありません
  • 「5.6倍」「2倍」「約11倍」「約1.5倍」はいずれも同社の発表値で、監査された数値ではありません。「約1.5倍」はエンジニアの生産性であり、全社や売上の話ではありません
  • 営業利益14.0%減はインターネット広告事業のFY2025の数字で、要因は「AIを活用した新規事業への投資等」と説明されています。AI投資だけが原因と読むことはできません
  • 公表されている成熟度の到達像はレベル4と2028年の目標(「2028年には全プロダクトが最低でもLevel4に到達することを目指す」)で、これは目標であって実績ではありません
  • AI研究組織を2016年から運営し、研究員約100名を抱える会社です。同じやり方がそのまま機能する前提ではありません

よくある質問

Q. AIで生産性が上がったのに、なぜ広告事業は減益だったのですか?

同社が減益の理由の一つにAI投資を挙げているためです。AI研究開発組織「AI Lab」は研究員約100名を抱え、社会実装は年間約165件という規模で、成果が出るまでの投資が先行します。生産性の向上と当期の利益が同時に立つとは限らない、という構造を数字で開示したうえで、それでも投資を続ける判断を示している珍しい事例です。

Q. 「生産性11倍」はどう計算された数字ですか?

同社の説明では、AIクリエイターの制作効率が5.6倍、制作したクリエイティブの効果が高い確率が2倍で、これらを掛け合わせた総合的な生産性が約11倍という整理です。単一の作業時間が11分の1になったという意味ではないので、引用する際は内訳まで添えるのが正確です。

Q. 中小企業が参考にできる点はどこですか?

AI成熟度を5段階で定義し、68項目の質問で全社70チームを評価した点です。同社はこの評価で「上位25%とそれ以下のギャップが大きい」ことを把握しています。全社に配って終わりにせず、どのチームが使えていないかを可視化する発想は、数人〜数十人の会社でも同じ形で使えます。

Q. 導入率が高ければ成果は出ますか?

取引企業の8割という導入率は、AIプロダクトとしては突出した到達点です。そのうえでこの事例は、事業側の利益は別問題だと示しています。導入率は途中の指標であり、最終的に見るべきは受注や利益への接続です。社内でAI活用を語るときも、利用率の報告で止めないことをおすすめします。

出典

出典と、その読み方

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