コモンウェルス銀行|AIに「判断」ではなく「ルールづくり」をさせた。不正検知ルールの4分の3に関与
公開 2026-08-14 / 約5分
カード不正検知ルールのうち、AIエージェントが作成・更新に関与した割合
3/4
出典:自社発表(2026-04-24時点)
- 地域
- 🇦🇺 オーストラリア(海外)
- 業種
- 金融(銀行)
- AI化した領域
- 不正・詐欺検知/検知ルールの自動生成/AIエージェント/顧客への事前アラート
- 出典の種別
- 自社発表
AIエージェントの事例はたいてい「AIが判断する」話です。この事例は違います。AIが作っているのは、人が使う検知ルールそのものです。役割の置き方が参考になります。
この事例の要点
- 新しい不正・詐欺のパターンを見つけ、それを止めるための検知ルールを生成するAIエージェントを開発
- 社内のデータサイエンス・エンジニアリングチームが3か月で開発
- すでにカード不正検知ルールの4分の3の作成または更新に関与
- 生成された新しい検知ルールは、実装前に同行の不正分析チームがレビューし承認する(同行はこれを human-in-the-loop の監督と説明)
- 同行の不正防止システム全体で、1日あたり8,000万件を超えるシグナルを監視(取引、カード・オンライン決済、デジタルバンキングの操作)
- 1日あたり平均2,000万件超の決済を処理し、平均40,000件超の事前警告アラートを顧客に送信
- 不正被害額は2026年度上期に前年同期比20%超の減少。同行は検知技術がこれに「寄与した」と説明
- 顧客の詐欺被害額は76%減少(2025年度下期と2023年度上期の比較)
どんな会社か
オーストラリア最大手の銀行です。不正・詐欺・サイバー対策に年間10億豪ドル規模の投資を掲げ、2025年度は9億豪ドル超を投資したと公表しています。予算規模も人員も日本の中小企業とは比較になりませんが、後述する「AIに何をさせたか」の考え方は規模に依存しません。
何をAI化したのか
| 領域 | 内容 |
|---|---|
| 検知ルールの作成 | 新しい不正パターンを見つけ、それを止めるルールをAIが生成 |
| ルールの承認 | 生成されたルールは実装前に不正分析チームがレビュー・承認(人が残る工程) |
| 常時監視 | 同行の不正防止システム全体で1日8,000万件超のシグナルを24時間監視 |
| 顧客への警告 | 1日平均40,000件超の事前アラートを送信 |
| 基盤 | Snowflakeのデータクラウドと、クラウド基盤のコアバンキングの上に構築 |
注目すべきは「AIにルールづくりをさせた」こと

多くの会社がAIに期待するのは「その場の判断」です。この取引は不正か、この問い合わせはどう答えるか。
同行がAIに任せたのは、その手前にある運用ルールの整備です。新しい詐欺の型が出てきたとき、従来は人が分析してルールを書き、テストして反映していました。この「ルールを書く」工程をAIに寄せたわけです。
これが効くのは、ルールづくりが「量が多くて、正誤が確かめやすい」仕事だからです。生成されたルールは過去データで検証できます。合っているかどうかを人が目で判断するしかない仕事より、AIを載せやすい。
3か月で作れているのも、この性質と無関係ではありません。
そしてもう1つ見落とせないのが、AIが書いたルールをそのまま本番に流していないことです。同行は、新しい検知ルールは実装前に不正分析チームがレビューし承認すると明記しています。AIが担うのは案を大量に出すところまでで、採否を決めるのは人のままという設計です。
中小企業が真似できる3点
10億ドルの予算は関係ありません。持ち帰れるのは仕事の選び方です。
① 「判断」より「その手前の下ごしらえ」を渡す
AIに最終判断をさせようとすると、責任の所在が問題になって止まります。判断材料を作る工程・ルールや型を書く工程を渡すと、決めるのは人のままで進みます。営業なら「商談メモから次回の確認事項リストを作る」あたりが該当します。
② 正誤が確かめられる仕事から入れる
生成された検知ルールは過去データで検証できます。同じように、答え合わせができる業務を最初に選ぶ。見積の転記、議事録から決定事項の抽出、リストの重複判定などです。逆に「良い提案かどうか」は答え合わせができないので後回しが妥当です。
③ 効果を「単独の寄与」と言い切らない
同行の説明も「検知技術が減少に寄与した」という書き方で、AIだけの効果とは書いていません。自社で報告するときも同じ慎重さを持つほうが、後から数字を疑われずに済みます。
こうした「どの工程を渡すか」の切り分けは、その業務の中身が分かっていないと決められません。営業・マーケの領域で社内に担い手がいない場合は外部に任せる選択肢もあり、私たちAIリモートワーカーのようなサービスもその1つとして検討する余地があります。
ai-remote-worker.com AIリモートワーカー|営業・マーケのAI導入支援 営業・マーケティングのAI化を、月額定額または成果確認後払いで。実装まで踏み込む伴走型の支援です。注意して読むべき点
- 数字はいずれも同行のニュースルームでの公表値です。決算資料で監査された数値ではありません
- 不正被害の20%超減少について、同行は「検知技術が寄与した」という表現を使っています。AIエージェント単独の効果を切り分けた数字ではありません
- 「4分の3」は作成または更新に関与した割合です。AIが単独でルールを完成させている割合ではありません
- 詐欺被害76%減は2025年度下期と2023年度上期の比較で、AI導入だけでなく制度・啓発・業界全体の対策を含んだ結果です
- 年間10億豪ドル規模の投資が前提です。投資額を無視して結果だけを比較することはできません
出典
出典と、その読み方
- 自社発表2026-04-24CommBank develops AI agent that spots new fraud and helps build defences
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
- 自社発表2025-08-11CBA sees customer scam losses fall by 76% and adds two new forms of armour to help keep customers safe
プレスリリース・自社ブログ等の公表値。前提条件は要確認
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